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蝶譜(きょうちょうふ)(部分:楽歳堂旧蔵)
江戸時代 松浦史料博物館蔵
 
 この資料は、江戸浅草(堀田原)に居住していた十人組、中島数馬が描いたものを平戸藩家臣に見せられた松浦静山が、改めて模写させ楽歳堂に収蔵した資料です(一説には平戸藩家臣久間貞八が描いたとされています)。松浦静山が生きた時代は「博物学の世紀」ともいわれますが、さまざまな階層の人々が趣味と実益をかねる博物館研究にのめりこんでいました。当時は写真で記録することができませんでしたが、写真を超える美しさを備えた博物図譜が制作されました。また、大名をはじめ愛好家の間にはこれらを貸し借りし、情報交換をするサークル的存在がありました。
 
『外科全書(げかぜんしょ)』(楽歳堂旧蔵)
1627年 A・パレ 蘭訳版 松浦史料博物館蔵
 
 この図書は、フランス外科学の父といわれるパレが記した『外科全書』のオランダ語訳の本です。16、17世紀にヨーロッパ全土で翻訳されました。この解説図は江戸時代日本のいろんな本に取り入れられました。そして、この他の西洋の外科書の影響を受け、オランダ語訳の外科書最高峰の『解体新書』がうまれました。また、この『解体新書』で有名な杉田玄白(すぎたげんぱく)と松浦静山は交流があり、江戸の平戸藩邸に杉田玄白が訪れ、藩主夫人の診察をした記録もあります。
 
三勇像(さんゆうぞう)
江戸時代 
画:水戸藩士 内藤業昌(ないとうなりまさ)筆 
賛:佐藤一斎(さとういっさい)
松浦史料博物館蔵
 
 天保11年(1840)、水戸藩主徳川斉昭(とくがわなりあき)が、松浦静山(まつらせいざん)(右)・信州松代藩主 真田幸貫(さなだゆきつら)(中央)・下野黒羽藩主 大関増業(おおぜきますなり)(左)を屋敷に招き家臣内藤業昌に描かせたものです。真田幸貫は佐久間象山(さくましょうざん)(兵学者・洋学者、開国論者、勝海舟・坂本龍馬・吉田松陰らは門人)がつかえた藩主で、大関増業は科学者として有名です。賛(さん)を添えた佐藤一斎は幕府の儒学者ですが、佐久間象山の師でもありました。また、平戸藩とも大変関係が深く、佐藤一斎は静山が開設した藩校維新館で講義を行うなどしています。
 
子孫永宝印・子孫永宝印影(部分)
江戸時代 松浦史料博物館蔵
 
 松浦静山が貴重な図書の表紙に押した「子孫永宝」印と印影です。「子孫」には松浦家をはじめ後世のあらゆる人々の意味も含まれていたのではないかと思われます。


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