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カナダ運輸事故調査安全委員会法
(Canadian Transportation Accident Investigation and Safety Board Act)
1989年 c. 3
 
 カナダ運輸事故調査安全委員会の設立と、それに伴う一部法令の修正のための法律
 
[1989年6月29日承認]
 
 女王陛下は、カナダ上院・下院の助言と合意のもと、以下を制定する。
 
簡略名称(SHORT TITLE)
簡略名称
第1条
 本法は、カナダ運輸事故調査安全委員会法(Canadian Transportation Accident Investigation and Safety Board Act)とする。
 
解釈(INTERPRETATION)
 
定義
第2条
 本法においては、以下と定義する。
・・・
「委員会(Board)」(Bureau)
「委員会」とは、第4条により設立されたカナダ運輸事故調査安全委員会を指す。
「委員長(Chairperson)」(président)
「委員長」とは、委員会の委員長のことを指す。
・・・
「検死官(coroner)」(coroner)
「検死官」とは、以下を含む。
(a)監察医
(b)その他の者で検死官の義務と機能を遂行する者。
「省庁(department)」(ministère)
「省庁」とは、以下を指す。
(a)カナダ政府の各省庁。担当大臣、及びその省庁の官僚を含む
(b)別紙に記載されている機関
(c)当該省庁、大臣、官僚、機関によって設立、又は指名された、事実調査当局、機関、若しくは、個人。
「国防省(Department of National Defence)」(ministère de la Défense nationale)
「国防省」とは、以下を含む。
(a)国防省、及び、国防省の官僚
(b)国防大臣の代理を務める、国防省、国防大臣、国防省官僚によって設立、又は指名された、事実調査当局、機関、又は、個人。
 「動的支持力を有する船舶(dynamically supported craft)」(engin à portance dynamique)
 「動的支持力を有する船舶」とは、全面的又は部分的に航行のために設計、使用されるか、使用することのできる船舶で、以下のいずれかの特徴を有する船舶を指す。
(a)重量、又は重量の大部分が、静水圧以外の力によって、一定の運転モードに保たれている
(b)“v”が最大速度、“L”が水線長、“g”が重力加速度である場合、v/sqrt(gL)≧0.9が成立する速度で船舶を運航することができる(単位は一定)
「調査官(investigator)」(enquêteur)
「調査官」とは、第10条(1)条(a)又は(b)に示される者を指す。
「海難事故(marine occurrence)」(accident maritime)
「海難事故」とは以下を指す。
(a)船舶の航行に関連する事故又はインシデント
(b)そのまま放置されれば、上述(a)節の事故やインシデントを誘発すると委員会が信じるにたる適正な根拠がある状況、又は状態
「委員(member)」membre
「委員」とは、委員会のメンバーを指す。
「議長(Minister)」ministre
「議長」とは、カナダ枢密院議長(President of the Queen's Privy Council)を指す。
・・・
「船舶(ship)」(navire)
「船舶」とは、以下を含む。
(a)方法又は推進力不足に関係なく、全面的又は部分的に航行のために設計、使用されるか、使用することのできる船舶(vessel)、ボート、船(craft)
(b)動的支持力を有する船舶
「運輸事故(transportation occurrence)」(accident de transport)
「運輸事故」とは、航空事故、鉄道事故、海難事故、パイプライン事故を指す。
1989, c. 3, s. 2; 1998, c. 20, ss. 1, 24(F), 25(E)
 
適用(APPLICATION)
適用
第3条
・・・
同上
(2)本法は、以下の海難事故について適用される。
(a)カナダにおける事故、及び
(b)以下の場合は、第(3)項に記述される水域を含むカナダ以外の場所におけるもの
(i)カナダがしかるべき当局から海難事故の調査を依頼された場合
(ii)カナダで登録又は認可を受けた船舶が関与する海難事故の場合
(iii)海難事故に対して証言能力のある証人、あるいは、当該海難事故に関して有益だと思われる事柄について情報を有する者が、カナダ国内の場所に到着するか、又は発見される場合
適用
(3)本法は、大陸棚の調査又は利用に関連した活動に関する海難事故、あるいはパイプライン事故にも適用される。
・・・
(5)[撤廃1996, c. 31, s. 64]
国家安全保障に関する制限
(6)第18条(3)項に示される運輸事故に関する本法、あるいは条項の適用は、国家防衛法(National Defence Act)又は当該法律に基づく規制で定められているか、あるいはここに総督(Governer in Council)の令によって規定することが認められた国家安全保障ための制限を受ける。
女王を拘束する法律
(7)本法は、カナダ又は一地方の当然の権限として女王陛下を拘束する
1989, c. 3, s. 3; 1996, c. 31, s. 64; 1998, C. 20, ss. 2. 24, 25(E)
 
カナダ運輸事故調査安全委員会
(CANADIAN TRANSPORTATION ACCIDENT INVESTIGATION AND SAFETY BOARD)
 
委員会設立
第4条
(1)これをもって、少なくとも3名の常任委員を含む総督の任命する最大5名の委員から構成される、呼称名、カナダ運輸事故調査安全委員会を設立する。
委員資格(Qualifications of members)
(2)総督は、航空、海上、鉄道、パイプライン運輸について総合的な知識を有すると総督が判断した者を委員に指名する。
任期
(3)委員の任期は、罪過なき場合、期間7年を限度とするが、正当な理由があれば、総督は随時それを解任することができる。
再任
(4)委員は再任される資格を有する。
委員資格の継続
(5)任命又は再任の任期設定にあたり、総督は、委員会の委員の定期交代にかかわらず、そうすることが実質的である限り、委員経験者を常に何名か委員の構成メンバーに含めるよう努力しなければならない。
報酬及び謝礼
(6)常勤委員には総督の定めた報酬を、また、非常勤委員には同謝礼を支払わなければならない。
経費
(7)常勤委員の場合は通常の職場から離れ、あるいは、非常勤委員の場合は通常の居住場所から離れ、本法の定める義務を遂行した場合、その際に発生した相当の旅費及び生活費は委員に支払われる。
退職年金
(8)常勤委員は、公務員退職法(Public Service Superannuation Act)において、公職に就いているとみなされる。
補償
(9)委員は、国家公務員補償法(Government Employees Compensation Act)において、雇用者とみなされ、また、航空法(Aeronautics Act)第9条に準じた規制において、カナダの公職に就いているとみなされる。
1989, c. 3, s. 4; 1998, c. 20, ss3, 24,
 
委員長(Chairperson)
第5条
(1)総督は、委員のうち一名を委員会委員長に指名する。
委員長の義務
(2)委員長は委員会の代表執行役であり、人事、財務、資産事項、そして、以下を含む委員会のその他の内部管理に関する事柄に対して排他的責任を持つ。
(a)第10条(2)項及び(3)項に基づく職員への指示、及び、任務の割り当て
(b)第8条に基づく委員への指示、及び、任務の割り当て
(c)第12条に基づく会議の招集、及び、第8条(1)項(a)に定められた法律に従い、それに基づく会議の議長
委員長の委任権限及び義務
(3)委任文書で定められた制限に従い、委員長は、
(a)以下に関する委員長の権限又は義務を、任意の委員に委任することができる。
(i)会議の招集又は議事進行
(ii)委員への指示、又は、委員業務の指定
(b)本法で定められている委員長の権限又は義務を、委員会職員へ委任することができる。ただし、(a)に記載の事項は除く。
取消
(4)第(3)項の委任は、委員長の書面をもって随時取り消すことができる。
委員長の不在又は就労不能
(5)委員長が不在又は就労不能の場合、又は、委員長席が欠員している場合、その不在、就労不能、あるいは欠員の前後に総督によって指名された委員は、その不在又は就労不能の期間中、あるいは、新委員長が任命されるまで、委員長としての役目を果たすものとする。
1989, c. 3, s. 5; 1998, c. 20, s. 4(E)
 
利害衝突の禁止
第6条
(1)委員は、直接間接を問わず、所有者、株主、取締役、役員、共同経営者などとして、
(a)運輸企業又は事業に関与してはならない。
(b)運輸企業又は事業に利害関係を持つ、あるいは運輸設備又は機材の製造・流通に利害関係を持つことは禁ず。ただし、当該流通がもっぱら商品の一般売買に付随する場合はこの限りではない。
 本項において、「運輸」とは、航空、海洋、鉄道、パイプライン輸送を指す。
利害問題処理
 (2)第(1)項で示される利害関係が、委員の利益のために、贈与、遺言、相続などによって生ずる場合、当該委員はその付与から3ヶ月以内に、当該利害関係を処理しなければならない。
禁止の利害問題
(3)第(1)項に示される禁止事項に加えて、任期中の委員には、本法に基づく当該委員の義務の遂行に矛盾する以下の行為が禁止される。
(a)他の役職、雇用の受諾
(b)いかなる活動の実施
1989, c. 3, s. 6; 1998, c. 20, s. 24
 
委員会の目的
第7条
(1)委員会は、以下をもって運輸の安全性向上を図ることを目的とする。
(a)(調査対象として)選択した運輸事故の原因及び要因を明らかにするため、必要に応じ、公開審理(public inquiry)を含む独立した調査の実施
(b)運輸事故によって明らかになった安全性に関する欠陥の特定
(c)当該安全性に関する欠陥を排除、軽減するための勧告
(d)調査、及び、関連する調査結果の公開報告
制限
(2)運輸事故の原因及び要因を明らかにすることに関し、過失の究明や、民事・刑事責任の追求は委員会の機能ではない。しかし、委員会は委員会の調査結果から過失や責任が推測される可能性があるというだけの理由で、その原因及び要因を十分に報告することを差し控えてはならない。
同上
(3)委員会による調査結果は、過失の究明、又は、民事・刑事責任の追求とは解釈されてはならない。
調査結果の非拘束性
(4)委員会の調査結果は、法的手続、懲戒手続、その他の手続によって当事者を拘束するものではない。
1989, c. 3, s. 7; 1998, c. 20, s. 5.


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