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2004年12月2日国家法(Kingdom Act)1
 安全調査委員会(Safety Investigation Board)の設立(安全調査委員会に関する国家法)我々ベアトリクスは、神の加護により、オランダ女王であり、オラニエ・ナッサウ家(英語読み:オレンジ・ナッソー家)の王女である。
 本文を閲覧、聴聞する全ての者に対し、以下を通知する。我々は、災害、事故、インシデントの原因や推定原因、又は、インシデントの種類、その被害(consequence)の範囲を調査し、また、しかるべき勧告を行うために独立した調査委員会の設置が望まれていることを考慮し、オランダ王国枢密院(Council of State of the Kingdom of the Netherlands)の助言を得て、首相(State General)と協議の上、オランダ王国憲章の規定に基づいて、ここに承認し定めるとおり、承認し定めた。
 
第1章:定義
第1条
1. 本国家法、及び、本国家法に基づく規定において、以下の用語は次の意味を持つ。
a. 当省大臣:内務・王国政務大臣(Minister of the Interior and Kingdom Relations)
b. 法務大臣:特に指定のない限り、オランダ法務大臣
c. 委員会:第2条1項に示される安全調査委員会
d. 委員会メンバー:第6条1項に示される委員会のメンバー、及び、第6条2項に示される委員会の準メンバー
e. 事務局:第11条2項に示される事務局(Office)
f. インシデント:人を死や傷害に至らしめる、あるいは物及び環境に損害を与える出来事、及び、同様の被害をもたらすおそれのある事件
g. 船舶(ship):構造上明らかに浮動することを意図した、航空機ではない物件
h. 海上航行船舶(sea-going vessel):構造上明らかに、専ら又は主に海洋に浮動することを意図した船舶
i. オランダの海上航行船舶:オランダに適用される法的規則に基づいて、オランダ王国の旗の下に航海することが認められている海上航行船舶
j. 蘭領アンティル諸島の海上航行船舶:蘭領アンティル諸島に適用される法的規則に基づいて、オランダ王国の旗の下に航海することが認められている海上航行船舶
k. アルバの海上航行船舶:アルバに適用される法的規則に基づいて、オランダ王国の旗の下に航海することが認められている海上航行船舶
l. RoRoフェリー:定期RoRoフェリー及び高速旅客船の安全運航のための強制検査制度に関して、欧州連合議会が1999年4月29日に制定した、指令No.1999/35 ECの第2条a節で定義されるロールオン・ロールオフ・フェリー
m. 高速旅客船:定期RoRoフェリー及び高速旅客船の安全運航のための強制検査制度に関して、欧州連合議会が1999年4月29日に制定した、指令No.1999/35 ECの第2条b節で定義される高速旅客船
n. 航空機:地表に対する空気力以外の、空気によって発動される搭載動力によって、空中に留まることができる航空機
o. オランダの航空機:オランダで登録されている航空機
p. 原因:インシデントに至らしめた行為、不作為、事件、状況あるいはその組み合わせ
q. 勧告:将来のインシデントの防止、又はその被害の制限を目的とし、委員会が行った調査の結果得られた情報に基づき委員会が行う提案
r. フライト・レコーダー:事故やインシデントの調査を促進するために、航空機に搭載されたあらゆる種類の記録装置
 
1 本2004年12月2日制定の国家法は英訳です。解釈に差異がある場合は、オランダの原文を優先する。
 
2. 第1項f節に示されるインシデントは、以下の意味としては理解されない。
a. 地方自治体法(Municipalities Act)第172条3項に示される治安の騒乱、地方自治体法第175条1項に示される暴動、その他の重大な混乱、又は、そのようなインシデントの発生が深刻に懸念される状態
b. 法施行を目的とした管轄当局の行為
c. 以下の場合の武力又は軍隊の行為
1)戦争又は武力紛争時
2)国際法及び国際秩序の維持や向上のための軍事行動期間中
3)1993年警察法(Police Act)に基づく行為
4)蘭領アンティル諸島及びアルバにおける軍隊配備指示に従った、支援提供の範囲内の行為
3. オランダで定められた自然人、営利/非営利法人、又は、法人格/非法人格の政府機関が使用する航空機は、オランダ航空機と同等とみなされる。
 
第2章 委員会
第1部 設立と任務
第2条
1. 安全調査委員会を設置する。
2. 委員会はハーグを本拠地とする。
3. 委員会は法人格を有する。
 
第3条
 委員会は、将来のインシデントの防止、又はその被害の制限を専らの目的として、各インシデントや一連のインシデントの原因や推定原因、また、その被害の程度を調査、確定し、必要に応じてしかるべき勧告を行うことを任務とする。
 
第4条
 委員会は、以下の調査を行う権限を有する。
a. オランダの管轄権内の欧州海域を含むオランダ領地の地上、上空、地下におけるインシデント
b. 蘭領アンティル諸島、アルバそれぞれの管轄圏内の領海を含めた、蘭領アンティル諸島、アルバ領土の地上、上空、地下におけるインシデントで、蘭領アンティル諸島、アルバの各政府がかかる調査を委員会に要請した場合
c. 公海上又はオランダの管轄権外の海域において、オランダの海上航行船舶が関与したインシデント
d. オランダの港を最終入港地とするRoRoフェリー又は高速旅客船が、公海上で関与したインシデント
e. オランダ航空機が、公海の上空又は海外で関与したインシデント
f. 公海上又は蘭領アンティル諸島、アルバそれぞれの管轄権外の海域において、蘭領アンティル諸島、アルバの海上航行船舶が関与したインシデントで、蘭領アンティル諸島、アルバの各政府がかかる調査を委員会に要請した場合
g. 蘭領アンティル諸島、アルバの航空機が公海の上空又は海外で関与したインシデントで、蘭領アンティル諸島、アルバの各政府がかかる調査を委員会に要請した場合
2. 調査を実施する権限は、以下にも及ぶ。
a. 海外のインシデントのうち、オランダの管轄権内の欧州領海を含むオランダ領地にその被害が及ぶものに対してオランダで処理された方法
b. 海外のインシデントのうち、蘭領アンティル諸島、アルバそれぞれの管轄権内の領海を含む蘭領アンティル諸島、アルバの領土にその被害が及ぶものに対してオランダで処理された方法で、蘭領アンティル諸島、アルバの各政府がかかる調査を委員会に要請した場合
c. 第1項a、c、e節に示されるインシデントの被害の処理
d. 第1項b、f、g節に示されるインシデントの被害の処理で、蘭領アンティル諸島、アルバの各政府がかかる調査を委員会に要請した場合
3. 以下組織の機能のため、あるいはその行使において使用された物件や人に関わるインシデントに限り、委員会は当該組織に代わってさらにそれらインシデントを調査し、その被害を処理する権限を有する。
a. 国防省
b. 外国軍:オランダ王国の領海及び領海に属する大陸棚を含むオランダ王国領土の陸上又は上空で発生したインシデントで、かつ、航空機インシデントである場合。キュラソー島のフライト情報領域の範囲内で発生したインシデントで、かつ、このフライト情報領域が他国の管轄権内の領土又は領海内にない場合。
4. 国防大臣が管理する組織の機能のため、あるいはその行使において使用された物件や人に関わるインシデントに限り、委員会は当該組織に代わってさらにそれらインシデントを調査し、その被害を処理する権限を有する。
 
第5条
1. 委員会が調査義務を負うインシデントは、枢密院王国令(Kingdom Order in Council)又は枢密院令(Order in Council)によって決定される。
2. 他国が関与する追って指定される(to be further specified)インシデントについては、調査の組織方法、調査における当該他国との協力、当該ケースの委員会の役割、当該調査で求められる国際的義務などに関し、枢密院王国令又は枢密院令に従って規則を定めなければならない。
 
第2部 組織と構成
第6条
1. 委員会は、委員長を含め5人のメンバーで構成される。
2. さらに、委員会には準メンバーも参加する。
3. 委員会は、個別のインシデント、又は一連のインシデントについて、適任の準メンバーに協議参加を求める。
4. 準メンバーは、第7、16、17条、第20条1項、第23条1項、第25、26、65、71条の適用に関する委員会の協議には参加することができない
 
第7条
1. 第6条1項に示される委員会メンバーは、委員会の意見を聴取した後、王室令(Royal Decree)によって任命、停職、解任される。
2. 第6条2項に示される委員会メンバーは、委員会の意見を聴取した後、当省大臣がオランダにおける関連大臣と合意のうえで出す勧告をふまえた王室令によって、任命、停職、解任される。
3. 委員会のメンバーの選出については、関連あるすべての分野の専門家が揃うように行う。国防及び運輸分野の専門家を含めることは必須である。この点に関する規則については、さらに枢密院王国令によって定めることができる。
4. 委員会の会員資格は、セキュリティクリアランス法(Security Clearances Act.)の第1条1項a節で定められる機密職務(function)とみなされる。
5. 委員会メンバーの任期は4年とする。任期満了前に欠員補充として任命されたメンバーの任期は、同期のメンバーの残留任期と同じとする。委員会メンバーの再選は1度とする。
6. 当省大臣はオランダの関連大臣との合意のもとに、委員会の欠員に対して責任を持つ。委員会は、欠員の公表を行う前に、当省大臣にしかるべき提案をすることができる。
7. 委員会メンバーは自ら辞表を提出することができ、当省大臣が当該辞表を受領した日から数えて3ヵ月目の月の1日までに当該辞職は遂行される。
8. 職務の行使が適切でない、あるいは適当でない、又は、当該人物についてその他の重大な理由があったときに限り、停職、解雇は、第7項を損なうことなく行われなければならない。
 
第8条
1. 王室令により、第6条1項に示される委員会メンバーの1人は、委員会委員長に任命される。
2. 王室令により、第6条1項に示される委員会メンバーの1人は、委員会副委員長に任命される。
 
第9条
 以下の規則については、枢密院王国令に従って定めなければならない。
a. 委員会メンバーの宣誓方法
b. 委員会メンバーの、旅費、宿泊費を含む報酬
 
第10条
1. 委員会は、小委員(committees)を指名することができる。
2. 小委員会は、第6条1項に示される委員会メンバー1名以上、及び、第6条2項に示される委員会メンバー1名以上で構成される。
3. 委員会は、第6条1項に示される委員会メンバー1名を、小委員会の委員長に任命しなければならない。
4. 委員会は小委員会に対して、委員会の代行決定権を付与することができる。
 
第3部 事務局
第11条
1. 委員会は事務局長を擁する。
2. 事務局は委員会を支持する。
3. 事務局は、事務局長が主導する。
4. 事務局員の選出は、関連するすべての分野の専門家が事務局内に揃うように行う。事務局長を含む事務局員の職務は、セキュリティクリアランス法の第1条1項a節で定める機密職務とみなされる。
5. 事務局員に委員会委員長の合意の下に国防大臣に任命された軍人が含まれる場合には、当該事務局員は法的地位を維持したままで、第4条3項に示されるインシデントの調査に配備されることとなる。委員会はまた、当該軍人を別の調査任務に配備させることもできる。
 
第12条
 事務局の事務局長及び事務局員は、委員会メンバーになってはならない。事務局長は委員会に対してのみ説明責任がある。
 
第13条
1. 各省庁所属の公務員に適用される規則は、第11条2項に示される事務局の事務局長及び事務局員の法的地位に適用される。ただし、これら規則において、当省大臣以外の大臣に権限が与えられている場合、この権限は委員会によって行使される。
2. 第1項に示される規則には、枢密院令によって特例を設けることができる。
 
第14条
1. 委員会の要請により、関連大臣は委員会の指令にしかるべく従い、あるいは委員会に代わり、追って指定される調査の実施を支援する専門家1名以上を自らの支配下に任命することができる。
2. 国防大臣が別段に定めないかぎりにおいて、第1項により任命され、セキュリティクリアランス法に従って、国家の安全やその他の重大な国家利益のために機密機能を果たすことに同意の認定書を発行された専門家によってのみ、第4条3項に示されるインシデントの調査を行うものとする。
3. 第2項に示される以外のインシデントの調査支援は、第1項により任命され、第2項で示される認定書を発行された専門家によってのみ行われることを、当省大臣あるいは法務大臣が各自決定することができる。
4. 第1項により任命された専門家は、調査期間中、事務局に付属する。
5. 第1項により任命された専門家は、当該調査の実施期間中は、委員会の責任下に置かれる。


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