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はじめに
 平成9年(1997年)11月開催の国際海事機関(IMO)第20回総会において、海難調査手続の国際標準化と海難調査における国際協力の枠組みの構築等を目的として、「海難及び海上インシデントの調査のためのコード−決議A.849(20)」が、採択されました。
 その後、平成16年(2004年)IMO第52回海洋環境保護委員会(MEPC52)及び第79回海上安全委員会(MSC79)において、オーストラリア、カナダ、バヌアツの3国から、同コードは採択から6年を経過して一般的に受け入れ可能な状況になったとし、必要な修正を加え、海上人命安全条約(SOLAS条約)の付属書とする共同提案がなされました。この提案は、同コードの強制化をはかり、海難調査に係る国際協力等を促進しようとするものです。
 船舶の運航事情や海難調査制度については、各国間に大きな差異が存在しており、コードの有用性は認めるものの、現段階での強制化には積極的とはいえない国も相当数あるなど、国際的な足並みが未だ十分に揃わないのが現状であります。
 しかしながら、同コードの条約化への気運は高まってきていることから、当海難審判協会は、高等海難審判庁と協議し、同コードの条約化への動きに対し、我が国としていかに対応していくかの参考に資するため、海運先進各国の海難調査制度等についての必要な調査を実施することとしました。
 このため、当協会は、学識経験者と海難審判庁の職員を委員とする「IMOコード条約化への対応に関する調査研究会」を設置しました。
 平成17年8月に開催した第1回研究会において、この調査研究においては、各国のコードへの対応の現状と法制化の状況にかかる調査が何よりも急務であるとし、今年度の研究会の活動計画とともに海外出張調査が決定されました。
 本誌は、この海外出張調査の結果について、「欧州・北米訪問調査報告書」としてとりまとめたものです。
 
IMOコード条約化への対応に関する調査研究会 委員名簿
委員長 加藤俊平 東京理科大学名誉教授
委 員 重田晴生 青山学院大学教授
櫻井美奈 (株)日本海洋科学研究員
大須賀英郎 高等海難審判庁首席審判官
河田守弘 高等海難審判庁総務課長
松浦数雄 高等海難審判庁国際業務調整官
伊東由人 海難審判理事所国際業務室長
(敬称略)
 
I 欧州における調査
第1 調査メンバー
加藤俊平 東京理科大学名誉教授・本調査研究会委員長
杉本昌弘 (株)日本海洋科学研究員
飯田朝明 (財)海難審判協会研究部長
第2 調査期間
平成17年10月17日〜30日
第3 調査対象の国及び機関
(1)グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国(イギリス)
・Marine Accident Investigation Branch
(MAIB・海難調査部)
(2)フランス共和国
・Bureau d'enquêtes sur les évènements de mer
(BEAmer・海難調査局)
・Administrator of Maritime Affair
(AMA・海事行政官)
(3)オランダ王国
・The Dutch Safety Board(DSB・オランダ安全委員会)
(4)ドイツ連邦共和国
・Federal Bureau of Maritime Casualty Investigation
(BSU・連邦海難調査局)
・Maritime Boards of Inquiry
(MBI・海事審問委員会)
 
(注)本文では、上記各国をイギリス、フランス、オランダ及びドイツと呼称する。


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