7・20 回頭角速度計
回頭角速度計は、ジャイロコンパスによって検出される船の旋回角速度信号を演算処理し、指示計に旋回角速度として表示するもので、微少の旋回角速度を表示できるので、狭水路や輻輳した海域での操船に有用な装置である。
船舶設備規程(第146条の28)で、装置の機能要件を次のように定めている。
(1)回頭角速度の表示は、管海官庁が適当と認めるものであること。
(2)30度毎分以上の回頭角速度を表示することができ、かつ、角速度が目盛りの最大を超えた場合には、そのことを表示できるものであること。
(3)停止状態から4分以内に完全に作動するものであること。
(4)作動中であることを表示することが可能であること。
(5)入力信号に対する応答を調節することが可能であること。
(6)連動するジャイロコンパスの機能に障害を与えないこと。
回頭角速度計の構成の一例を図7・25に示す。
図7・25 回頭角速度計の構成の一例
(1)一般
IBS(集中船橋設備:Integrated Bridge System、以下IBSという。)及びINS(集中航海設備:Integrated Navigation System、以下INSという。)は、AIS及びVDRに対して、航海関連の情報提供源となりうる。また、AISに関しては、IBS又はINSは、AISより周辺他船情報を受信し、周辺船の状態をARPA、あるいは、電子海図上で表示を行う役目も持っている。したがって、IBS及びINSは、VDRとは、単一方向、AISとは、双方向のインターフェースを持つこととなる。
この場合、VDR、AISに入力されるセンサー信号は、信号発生源から直接インターフェースすることが規定されているが、INS、IBSの異常で、信号の伝送が阻害されることがない限りINS、IBS等で、信号発生源からの信号を中継してVDRに渡すことができる。すなわち、INS、IBS等で、これらの信号を統合化して、1つのチャンネルとしてVDR、AISに送信することも可能である。しかしながら、センサー信号の独立性、INS、IBSの異常時の影響等を考慮すれば、INS、IBSは、単なる中継として扱っておくのが安全とも考えられる。この点は、今後の国内法の解釈、INS、IBSメーカーの実質的対応等、注意しておく必要がある。(INS、IBSが装備される場合、VDR、AISとの、信号伝送方式はその都度それらのメーカーと打ち合わせるのがよい。)
(2)インターフェースの概要
IBS及びINSは、それらの定義する範囲、構成要素が、まだ、一部で流動的でその内容を画一的に取り扱うのは難しいが、現状では、次のような要素で構成される。
(A)INS
INSは、まず航海情報収集機能として船首方位(ジャイロ、TMC、GPSコンパス等から。)、船位(GPSから)、船速等の航海情報の収集、次に航海情報判断機能として、電子海図システム、レーダ/ARPAの表示装置の集約、さらに、制御機能として保針制御(オートパイロットの機能)、トラックコントロール(航路保持制御)等の機能を集約したものである。したがって、これらの関連信号が、AIS、VDRに送出可能となる。
ここで、船首方位、船位、船速等の信号は、それぞれの機器から直接AIS、VDRにインターフェースする方法と、一旦、信号をINSに集めて、INSの中で中継する形でインターフェースする方法と、2種類から選ぶこととなる。
(B)IBS
IBSに関しては、システムとして統合化の範囲について、確たるものはないが、広い範囲の例としては、上記のINSの機能に加えて、GMDSS関連通信機器の統合、機関制御機器(機関部モニタ、ロガー、主機関遠隔制御等)の統合、荷役制御システムの統合、その他管理用情報システム等の統合を行うものである。
したがって、具体的には、上記に加えて、ソナー、舵角指示器、風向風速計、VHF、ナブテックス、インマルサット、船体運動、機関部モニタ、機関部遠隔制御装置、荷役制御装置等が含まれることもある。したがって、これらの関連信号がAIS、VDRに送出可能となる。
これも上記と同様、GPS、ジャイロ、ログ、測深機、ソナー、オートパイロット、舵角等の機器とAIS、VDRに直接インターフェースする方法と、一旦IBSに集めて、IBSの中で中継する形でインターフェースする方法があるので、この2種類の方法から選択する必要がある。
(3)インターフェースの例
(A)IBS/INSとVDR及びAISのインターフェースの例(1)
国内メーカーのIBS、INSのシステム構成例を、図7・26に示す。
図7・26 IBS/INSのシステム構成例
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(a)IBS/INSとVDRのインターフェースの例
上記の例で示すような構成の場合、VDRと、IBS、INSのインターフェース接続に関しては、次の表7・4に示す範囲が、取扱い可能である。(先に述べているとおり、VDRと、各機器を個別に接続することでも、インターフェースは可能なので、電線・電路敷設のやりやすさ、電線長、使用電線、接続方法等を考慮して、どちらの方法を取るのか決めるのがよい。)
表7・4 IBS/INSとVDRのインターフェース可能範囲
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(b)IBS/INSとAISのインターフェースの例
次に、上記のIBS/INSの例で示した構成の場合における、AISと、IBS、INSの接続に関しては、次の表7・5に示す範囲が、IBS、INSから、AISに送信されるデータとして取扱い可能である。(これも、VDRとIBS/INSのインターフェース同様、各機器を個別に接続することでも、インターフェースは可能なので、電装工事業者は、電線・電路布設のやりやすさ、電線長、使用電線、接続方法などを考慮して、どちらの方法を取るのかを、決めるのがよい。)
表7・5 IBS/INSとAISのインターフェース可能範囲
(B)IBS/INSとVDRのインターフェースの例(2)
次に海外メーカーの場合のIBS/INSとVDRのインターフェースの実例を、図7・27に概略系統図で示す。
この例では、IBS/INSとVDRの接続が、ネットワークケーブルで接続されている。これらにおいては、通信に関する標準としてIEC61162-3/-4(NMEA2000)が利用される。
図7・27 IBS/INSとVDRの接続―ネットワーク接続の例
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