5・1・5 搭載要件
新造船に対する搭載要件は、第2章 図2・1 衛星航法装置等のとおりである。
ただし、2002年7月1日より前に建造された船舶及び建造に着手された船舶に対する搭載要件は、次のとおりである。
2002年7月1日以降の最初の検査の日までに設置すること。(すでに設置されているGPSについては、検査時に動作確認を行う。測地系はWGS-84であること、またAISの搭載が義務である船の場合はGPSの信号がAISに正常に入力されていること等も併せて確認する。)
個別機器については、各メーカーの装備要領書の内容に従い、主管庁、各船級協会等の規則及びユーザーの要望を満足するように設計しなければならない。
それぞれのユニットの配置についての注意事項を次に示す。
(1)GPSアンテナの設置(図5・8参照)
(A)レーダーアンテナの送信ビーム内から外す。
(B)インマルサットアンテナの送信ビーム内から外す。
(C)アンテナ位置はなるべく高くし、衛星からのGPS信号を妨げる障害物がない所を選択する。
(D)アンテナが排煙等で高温になったり、カーボン等が付着しない場所を選択する。
(E)メーカー指定のアンテナケーブル長を考慮すること。
(F)図5・8の装備例を参考に他のアンテナ等からできる限り離して配置するようにする。
図5・8 GPSアンテナの装備例
(2)DGPSビーコンアンテナの設置
(A)GMDSSのMF/HF送信機のアンテナからは、少なくとも3m以上離す。
(B)ビーコンアンテナのプリアンプ部分等はレーダーアンテナの送信ビーム内に入らないようにする。
(C)他のアンテナによりビーコンアンテナが遮蔽されない場所を選択する。
(3)指示部(受信演算部)の設置
(A)直射日光が当たらないところ。
(B)冷暖房装置の風が直接当たらないところ。
(C)振動が少ないところ。
(D)保守点検が行なえる場所。
(E)機器の磁気コンパス安全距離を満足すること。
(F)図5・9の装備例を参考に取り付け強度に注意して装備する。
図5・9 指示部(受信演算部)の装備例
系統図・電路設計上の注意事項を次に示す。
(1)GMDSS機器の装備が強制される船舶で、GPSからGMDSS機器へ位置情報を供給する場合は、主電源及び非常電源が停止しても無線設備の予備電源等で引き続きGMDSS機器へ位置情報を供給できるように系統図・電路図を設計しなければならない。
(2)INS、AIS、VDR等へ測位情報等を出力するデジタル出力ポート数は、メーカー、機種により異なり、又船舶により要求されるポート数は異なっている。GPS受信機のデジタル出力ポート数が不足の場合は、信号分配器を追加装備する必要があり、系統図・電路設計も見直す必要がある。
(3)GPS受信機から出力できるIEC 61162あるいはNMEA0183データ、センテンスの形式、種類、データ出力周期は機種の設計年月により異なっている。GPS受信機から出力されるデジタル出力の方式として、ハードウェアインタフェースの形式、使用可能最大ケーブル長の制限、情報受信側の機器が要求するデータ、センテンスの調査が必要である。出力側と受信側のデータ、センテンスが一致しない場合は変換器あるいはバッファが別途必要な場合も発生する。
(4)IEC 61162デジタル出力ポートのコネクタ型式はメーカーの機器により異なり、一般的にコネクタに直接舶用電線を接続できないことが多い(ケーブルが大きすぎるため)。メーカー供給のケーブルに舶用電線を接続することが必要な場合は接続箱が別途必要になることがある。
個々の製品についてはメーカーの装備要領書に従うこと。
アンテナと受信演算部間のケーブルで1.5GHz帯のGPS信号が伝送されている場合は、ケーブルの伝送損失が大きく性能に影響する恐れがある。必ずメーカー指定のケーブル及びコネクタを使用すること。
それ以外のケーブルを使用した場合は信号が減衰して感度不良あるいは信号が受信できない場合が発生することがある。指定標準より長いケーブルが必要な場合は信号損失の少ないケーブルをメーカーがオプションで設定している場合があるのでそれを使用すること。
(1)GPSアンテナ
同軸コネクタが正しくケーブルに取り付けられていない場合は接続箇所で大きな信号の損失が発生する場合がある。又アンテナ部は暴露部に装備されるため、コネクタ部に雨水が侵入すればやはり大きな信号損失が発生する。ケーブル接続及び暴露部の防水についてはメーカー指定の工事方法を守ること。
(2)DGPSビーコンアンテナ
原理的に、DGPSのデータを放送している電波の波長に比較して受信アンテナ長さが短く、アンテナインピーダンスは非常に高くなっており、受信アンテナ周辺の雑音を拾いやすくなっている。
艤装工事ではアンテナカプラ等は高周波インピーダンスが低いリードで短く接地することが重要である。アンテナあるいはカプラの取り付け方法はメーカーの工事要領書に従うこと。
(3)指示部(受信演算部)
保守点検ができるように、接続ケーブル長は本体を引き出せるよう余裕を持たせること。装置によってGPSアンテナコネクタとDGPSアンテナコネクタが同一型式の製品を使用している場合、差込間違いをした場合は、アンテナ部のプリアンプが壊れる場合があるのでコネクタは差込間違いをしないよう注意する。 |