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4・5 予測される法規の改正
4・5・1 SOLAS搭載要件関連(2004年12月10日現在)
 SOLASの搭載要件関連では、現存貨物船に対する搭載要件が、第79回海上安全委員会(MSC79)で採択された。
 改正内容は以下のとおり。
 SOLASV章20規則(航海データ記録装置)の第1項の後に、新しく以下の記述を第2項として追加する。
2  海難事故調査官の作業を援助するために、国際航海に従事する貨物船は、*簡易型でも良いVDRを下記により設置しなければならない。
(1)2002年7月1日より前に建造された20,000総トン以上の貨物船の場合は、2006年7月1日以降の最初に行う入渠工事までに設置しなければならない。ただし、この設置は2009年7月1日より前に行わなければならない。
(2)2002年7月1日より前に建造された3,000総トン以上20,000総トン未満の貨物船の場合は、2007年7月1日以降の最初に行う入渠工事までに設置しなければならない。ただし、この設置は2010年7月1日より前に行わなければならない。
(3)主管庁は、上記の(1)と(2)項で指定される実施日から2年以内に永久に業務から外されるような船舶については(1)と(2)項の要件の貨物船への適用を免除しても良い。
 
現行の2項は、3項として番号が修正される。
(注*)決議MSC.163(78)船舶の簡易型航海データ記録装置(S-VDR)の性能基準参照
 
4・5・2 性能基準関連(2004年11月26日現在)
 性能基準関連では、MSC.163(78)として簡易型VDR(S-VDR)の性能基準が採択された。これを受けてIECは、IEC/PAS61962(80/401/NP)としてオリジナルの規格にAnnexDを付加することで簡易型VDRの規格を作成し、意見照会のため回章中である。(締め切り2005年3月4日)
 主な変更内容は、
・簡易型VDRは、この規格で決める要件の浮揚型カプセルでも良い。
・固定型カプセルは貫通試験をしなくても良い。
・浮揚型カプセルの構造は、EPIRBの基準を満たせば良い。
・回収用に取っ手を設けること。
・回収中に記録されたデータを損なわないこと。
・記録すべきとされるデータ項目の内、一部の項目のデータがIEC61162の承認センテンスを持たないものは記録しなくても良い。
・レーダーデータを得るために利用可能な、標準品として、直ぐに使えるインターフェースが無い場合は、他船に関する情報源としてAIS物標データが記録されなければならない。
・AIS情報はAIS物標とは別に、他船及び自船に関する有益な二次的情報源として記録されても良い。
・IEC61162のVDMメッセージ(AIS-VHFデータリンクメッセージ)は、船上AISから得ることができる全ての物標データとして記録されなければならない。
・IEC61162のVDOメッセージ(AIS-VHFデータリンク自船メッセージ)が記録されるならば、4・1・2(4)(A)の(a)から(d)の個々のセンサーデータに対する付加的な記録でなければならない。
・IMO決議A.861(20)、本指導書で4・1・2(4)(A)の(i)以降の要件に記載された、いかなる付加データ項目も、IEC61162に従った承認センテンスフォーマッタを使用したデータで記録されなければならない。
 
(浮揚型カブセルの探査のための装置)
・自動誘導送信機
 浮揚型カプセルは、1ドット(1単位)が115ms±0.5%に等しく、47.5s〜52.5s間で繰り返し変化する、モールス符号の“V”(・・・−)が挿入されなければならないこと以外、IEC6109-2あるいはIEC61097-5の付録Bのいずれかに従う1215MHzで運用する自動誘導送信機が含まれなければならない。
・光源
 浮揚型カプセルは、IEC61097-2又はIEC61097-5の関連した要件に従う光源を持たなければならない。さらに、この光源は巳中の間中作動を続けなければならない。
・位置
 浮揚型カプセルは、緯度・経度4秒以下の分解能でその位置を送信する能力がなければならない。
 
(合体されたEPIRB/S-VDRカプセル)
 合体されたEPIRB/S-VDRカプセルの場合には、この標準の要件に加えて、ここで変更される場合を除きIEC61097-2又はIEC61097-5に適合しなければならない。
 
(送信機の作動)
 送信機は、
(a)指定された義務期間の最低7日間を維持する運用ができること。
(b)装置が遠隔指令される能力を備えるならば、それは次の初期の探査信号を送る能力が無ければならない。
(1)少なくとも2時間の間、送信できること。
(2)合体されたEPIRB/S-VDRカプセルの場合には、規定の時間(少なくとも48時間)の後に、自動的に待機モードに変わらなければならない。
(3)さらに、7日間/168時間以上の指定された持続期間において、少なくとも48時間の累積期間のために、探査/自動誘導信号を送信できる能力をもっていること。
もし、5日間/120時間以内に送信する指令を受けない場合には、48時間送信モードに自動的に変わらなければならない。
 
4・5・3 IECデジタルインターフェース関連(現在)
 VDRとセンサ類を接続するインターフェースは、IEC61162に規定されているが、さらにVDR用にIEC/PAS61162-102として2003年12月付で公布された。
 主な追加内容は、
・新センテンス
・構造
・データ出力シーケンス
などである。
 
4・5・4 VDR本体からのデタダウンロード(2004年12月10日現在)
 IMO NAV 51(2005年6月開催予定)で、VDR/S-VDRに収録されたデータをカプセル内の最終記憶媒体からでなく、本体からダウンロードする方法が検討される。これは、船舶の事故が必ずしも船体放棄に至る事故ばかりではなく、カプセルを取り外し、又は回収することなく本体からデータを取り出せるようにするIMOの性能基準の改正提案である。
 議了年は2006年であるが施行期日等は未定である。
 
4・5・5 ISOのVDR装備指針関連(2005年3月24日現在)
 現在、ISO22472としてVDRの装備に関する指針案が検討されており、現段階ではCD(委員会案)が承認されてDIS(国際規格案)として中央事務局に登録され、近々意見照会のため回章される予定である。
 
第4章 練習問題
問1. VDRにデータを記録するために定められた事項に関して、下記の記述で正しいものには、文章の前の[ ]内に○印を、正しくないものには×印をつけよ。
(1)[ ]レーダーデータは、船のレーダー設備の1つから、記録している時点に、このレーダーの主表示器に、実際に表示されている、電子信号情報を含むすべての情報を記録すること。
(2)[ ]VDRに記録すべきデータは、航海中の運航データ及びVDRの構成、接続されるセンサーを明確にする船舶固有のデータである。また、逐次更新される12時間のデータが記憶され、これより古いデータは新しいデータによって上書きされ、古いものから順次消去される。
(3)[ ]VDRに記録する日付と時刻は、すべての記録データ項目とは関係なしに独立して記録すること。
(4)[ ]船橋での、1台又は複数のマイクロフォンの位置は、指揮する場所等の船橋内の作業場所で、会話が十分に記録されると思われる近くに置かれること。
(5)[ ]主警報は、IMOで義務付けられた警報の代表1つを船橋において表示すること。
 
問2. VDRの装備・保守整備時に注意すべき事柄について、下記の記述で正しくないものには、文章の前の[ ]内に○印を、正しくないものには×印をつけ、正しくない表現を指摘せよ。
(1)[ ](a)保護カプセルの周りには水中での取外し作業の妨げとなるような障害物がないこと。
(2)[ ](b)主電源及び非常電源から受電可能であること。また、外部電源停止の警報を発し2分後に自動的に停止すること。
(3)[ ](c)外部電源復旧後、3分以内に通常動作に復旧すること。
(4)[ ](d)保護カプセルに装着されている水中音響ビーコンの、音波発信部が汚れていないか確認すること。
 
問3. 保護カプセルの下記記述で、正しいものには、文章の前の[ ]内に○印を、正しくないものには×印をつけよ。
(1)[ ]保護カプセルは、規定により、耐加熱性(260℃10時間、1100℃1時間)で出来ている。
(2)[ ]水中ロボットで取外し作業ができるようにアイボルト又はハンドルをつけること。
(3)[ ]カプセルには外側の見え易いところにどんな形でも目立つ絵文字が記載されている。
(4)[ ]浮揚型カプセルは、更に、探索用に無線発信器と光発信器が備え付けられている。
(5)[ ]事故後カプセルの存在位置を探索するために水中音響ビーコンが備え付けてある。
 
問4. VDRの基本計画においは、信号の入力点リストを作成する必要があるが、そのリストには「データ名称」の項目の他にどのような項目について調査・記入する必要があるか、4つ述べよ。
 
問5. 保護カプセルの配置において注意することを4つ述べよ。


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