(2)入力対象の物理的接続条件の確認
入力点リストに基づいて接続対象とする機器(信号送出側)の確認を行う。(例えば、日付・時刻入力に関して、GPSを使うのか、船内時計を使うのか、接続対象を明確にする。)併せて接続対象機器のメーカー・型式も入力点リストに記載しておく(上記に示したVDRインターフェース整合用の表(表4・1〜4・3)にこれを記載する欄が準備してあるので、これを利用するのがよい)。ここで、注意が必要となる点は、接続対象機器(信号送出側)の接続ポートの確保である。RS422、RS232C接続の場合、その接続ポートの確保、アナログ接続の場合その回路及び接続端子の確保、ドライ接点あるいは電圧信号の場合もそれに関連する接点及び接続端子の確保が必要である。VDRの供給者は、受注時に、この基本計画の入力点リスト等で、入力ポートの形態、数量等の供給範囲について発注側と調整を行うが、接続対象機器側(信号送出側)は、一般にVDRと同じ供給者になるとは限らないので、接続対象機器側の、出力ポートの数量の確保、確認が必要である。(信号送出側の空きチャンネル、接続回路及び端子等の確保を忘れぬよう注意が必要である。)
(3)接続対象点の配置上での位置確認
入力点リストに基づいて接続対象機器の設置場所(配置)を確認する。(電路、電線長の検討を行う。)(VDRインターフェース整合用の表(表4・2〜4・3)に、場所、電線長等を記載する欄が準備してあるので、これを利用して作成すればよい。)
(4)概略配置
VDRのカタログ、メーカー図等のデータを利用してVDRの概略機器配置を行う。VDR関連機器は、メーカーにより多少の差があるが、基本的には、屋外設置の保護カプセル、屋内設置の記録制御装置(データレコーダ主パネル、データ収集用パネルとしての機能もあり)、及び、データ収集用の副パネル(インターフェースサブパネル)等で構成される。概略配置では、屋外設置の保護カプセルの位置、主パネルの位置、副パネルの位置を決める必要がある。(主パネルに全てのデータを集める場合もある。また、副パネルを複数台設置して電線工事を簡略化することもできる。これらは、VDRの供給者と打ち合わせを行い、効率的な設置が行えるよう配慮すればよい。)ここで、主パネルを操舵室倉庫等通常人のいない区画に装備する場合、VDRのアラーム表示器を操舵室内の操作しやすい位置に延長設置する必要がある。また、客先要求等でプレイバック端末等を装備する場合、それらの配置も決定する。接続対象によっては、電線長に制限がある場合もあるので、配置計画を行う際には、概略の電線長を配慮しながら実施する必要がある。操舵室の概略配置を図4・3に示す。
図4・3 操舵室概略配置図
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(5)概略系統図の作成
上記の機器概略配置、入力点リストと接続対象点の配置に基づき、概略系統図を作成する。最大電線長の条件、電線の種類等はVDR供給者のカタログ、メーカー図等を参照して確認の必要がある。
VDRの電源線については、VDR自体が、規則要求に基づきUPS(無停電電源装置)を持っているため、AC電源(又はDC電源)のみを、供給することで足りる。電源線の導体断面積については、機器の需要電力に基づき、電圧降下も配慮して決めること。なお、電圧降下計算等についてはレーダー装備艤装工事編のケーブルの布設の項を参照されたい。上記のVDR概略配置、系統図を作成するためVDRのシステム構成及び概略系統図の一例として、「VDRのシステム構成例」図4・4を 参考として添付している。この構成例に倣って、VDRの系統図の作成を行えばよい。
(6)ソフトウェア的インターフェース条件、電気的インターフェース条件の確認
入力点リストに基づいて、各入力点のソフト的インターフェース条件の確認が必要である。一般的には、接続対象全点について調査を行い、インターフェース条件を明確にすることが必要である。(これらについてもVDRインターフェース整合用の表にこれを記載する欄が準備してあるので、これ使って記述すればよい。)しかしながら、通常は、VDR供給者に接続対象機器のメーカー・型式を知らせることで、VDRメーカーがソフト的インターフェース条件の調査を行う。次に電気的条件であるが、接続を行うコネクタの形状、さらに具体的に進めると、そのコネクタの受け側の供給、電線の供給等をVDR供給者が行うのか、又は発注者が行うのかなどの細かい点まで確認の必要がある。
以上の基本計画を行った後に、VDRの引き合い仕様書として、入力点リストとしてのVDRインターフェース整合表、概略系統図、配置図等を添付の上作成し、VDRメーカーに、引き合い、見積、内容調整のための打ち合わせなどを行い、発注へと進める。
VDRの発注後、必要に応じて、上記の調整を行い、インターフェース条件の確定、副パネルを含めた機器配置の確定を行う。
VDR関連機器配置における一般的注意事項は次のとおりである。
(1)保護カプセル
保護カプセルの配置については、磁気コンパスからの安全距離を確保すること、索具その他障害物を避けること、浮揚式の場合には、周囲に浮揚の妨げとなるような障害物が存在しないこと、浮揚式及び非浮揚式いずれの場合でも、潜水夫、遠隔操作潜水回収機(ROV)、ロボットアーム等によるカプセル引き外しを配慮し、可能な限り周囲に引き外しの妨げとなるようなものが存在しないよう配置すること、可能な限り船体中央線の近くに設置すること、潜在的火災発生源(燃料タンク付近等)から離すこと、機械的損傷を引き起こす原因となるものから離すこと、メインテナンス目的でアクセスしやすい場所を配慮し配置すること。保護カプセルの取り付け方法、電線接続方法は、VDRメーカーの指定する方法とすること。
(2)主パネル
主パネルの配置については、基本的に、工事の容易さ、電線長制限、ノイズ等の面を配慮し、電線長を最小化する様に配置する事に集約される。主パネルは、操舵室内の海図区画あるいは、操舵室内の倉庫区画等が通常一般的に装備される区画であるが、その設置条件としては、周囲にヒータ等の高温物がないこと、湿気の少ない場所を選ぶこと(窓際、手洗い場所等可能な限り避ける)、また、操舵室の視界をさえぎらないような位置に配置すること等である。
主パネルが、操舵室内に装備される場合、VDRのアラーム表示を主パネルの上で行えば、アラーム表示器を単独に装備する必要はないが、主パネルを操舵室の倉庫区画等に装備の場合、アラーム表示を操舵室の見易い場所に装備する必要がある。
その他、配置の注意点としては、操作、メインテナンス等の為、容易に近づけるよう配慮すること、また、機器に接近するための通路、前面スペース等は、700mmを考慮の事などの点である。
(3)副パネル
インターフェース用の副パネルについては、操舵室コンソール等に組み込む場合が考えられる、コンソールメーカーと十分に物理的、電気的インターフェース整合、納期整合等の調整を図る必要がある。
(4)マイクユニット(船橋音響用)
マイクユニットの配置について、指揮する場所(Conning Station)、レーダー指示器、海図机等の船橋内の作業場所の会話(音響)を記録する目的で装備される。
具体的には、船橋中央、船橋左右舷、ウイング左右舷、海図区画、主レーダー付近、無線機付近等であるが、船橋の寸法によっては、幾つかの場所を集約することも可能である。マイクユニットの装備場所は、これらの場所付近の、壁、天井にマイクを埋め込む、あるいは、コンソール上にマイクを組み込むなどで、配置と設置方法を決定する必要がある。
(5)プレイバック装置(データの再生装置)
規則上装備が強制されるものではないが、プレイバック装置(データの再生装置)を装備する場合、これは、海図区画あるいは船長室等に置くのが適当である。
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