4・6 表示器(指示器)の点検整備
新設時には4・6・2項の定期点検の内容のほかに、設置場所等の以下の項目についても点検整備する。
(1)磁気コンパスへ影響を与えないように、レーダーの各ユニットに表示されている安全距離が守られているか。
(2)操作者が船首方向に向かってブラウン管面が観測できるように設置されているか。
(3)箱体の据付けのために無理な締付けを行って、箱体がひずんでいないか。
(4)振動の少ない場所に設置されているか。
(5)箱体やケーブルの設置は確実になされているか。
(6)ケーブルは導入口付近で箱体に固定され、接続端子板への配線は整理されて結束されているか。また接続に誤りはないか。
(7)船室の窓や扉からの水しぶきが直接かからないような位置に設置されているか。
(8)装備後の点検を容易にするために、指示器を前方に引き出せるようなスペースを確保し、かつ、配線にゆとりが取ってあるか。
(9)ケーブルの接続に誤りはないか。
(1)表示器の設置場所が適切で操作に支障がないことを確認する。
(2)表示器に画面の破損、汚損その他の異常がないことを確認すること。また、方位目盛板、カーソル板その他の付属部品が取り付けられたPPI型CRT式のものについては汚損、動作異常がないことを確認する。
(a)ブラウン管の表面にほこりが付着して透明度が悪くなり、映像が暗く見えるときがある。このようなときは帯電防止剤(ポリケアーなど)を付けた柔らかい布、又は湿った布で軽くぬぐうこと。
(b)PPI型CRT式表示器における方位目盛板は傷つきやすいので、アルコールか水を浸した柔らかい布で清掃する。絶対にベンジン、シンナー、ガソリンなどの溶剤を使用してはいけない。
(c)カーソル板とプロッター用のガラス面には特殊加工が施してあるので、乾いた布で軽く拭く程度とし、強く拭いたり溶剤を用いたりしてはならない。
(d)プロッター用ハーフミラーは特に傷つきやすいので、指紋を付けたりしないように慎重に取扱い、表面も柔らかいガーゼなどで軽くぬぐう程度とすること。
(e)端子板や部品密度の高いところ、及び高電圧部がごみやほこりで汚れていないか点検し、必要があれば電気掃除機で吸い取るようにすること。このようなところは布などで拭いても余り効果はない。
(3)スイッチ類の接点の摩耗状況を点検し、異常がないことを確認する。
(a)各つまみ類の締付けと調整範囲に対する位置及び可変抵抗やスイッチの接触状態等はよいか。
(b)スイッチ類やリレーを何度も切り替えてみて、映像面に異常が出ないことを確認する。
(c)目視で点検できる接点は十分に点検し、必要があれば極細目のサンドペーパーやケント紙などによって研磨する。
(4)表示灯の断線、操作つまみの欠落等がないことを確認すること。
表示ランプやプロッタランプの点灯状態や照度の調整範囲はよいか。
(5)CRTの取付状態はよいか。
(6)高電圧部のキャップや接栓などの接触状態はよいか。
(7)偏向コイルとCRTネック部との位置関係はよいか。
(8)反射プロッターを備え付けていない航海用レーダーにあっては、プロッテイングを行うために必要な器具類が備え付けられていることを確認すること。
(a)プロッター用グリスペン
(b)プロッターシート等
新設時には4・7・2項の定期点検の内容のほかに、供給電源の種類についても点検整備する。
(1)船内電源が交流の場合、機器によっては整流器が必要となる場合もあるので、交流とを間違えないようにすること。
(2)電源電圧を間違えないように接続すること。交流電圧の100/110/115V、200/220/230V等に対して、電源トランスの接続端子やトランス巻線の接続替えを行う必要のある機器では、この接続が適正であることを確認すること。
(1)電源入力側の絶縁抵抗を測定する際には、半導体素子に測定器からの高電圧が印加されないように注意すること。
(2)その他の点検項目
真方位指示装置の付属しているレーダーでは、ジャイロコンパスからレピータ用の方位信号が必要である。また、真運動装置付きレーダーにはログから航程信号も必要である。これらの信号はアナログ信号として接続されるものやデジタル信号として電気−機械的に接続されるもの、あるいはIECで定められた型式のデータフォーマットのシリアル信号線で電気的に接続されるものがある。
(1)シンクロモータでの接続
シンクロモータの信号電圧は90〜115Vで、周波数は50/60Hz又は400Hz(少数)の交流が使用されている。ジャイロコンパスからの方位信号を受けるほかに、アンテナの回転角度の受信にもシンクロモータを使う形式が従来のレーダーでは多かった。
(2)ステップモータでの接続
ステップモータの場合には、24V〜70Vの直流をON/OFFする方法で方位信号を伝えている。ステップモータを駆動するための電流信号の発生方法として、昔は機械式回転スイッチを使用していたが、信頼性の点から無接点式の発信機が使われるようになった。その構造の概略を図4・3に示す。レーダーの受信側でも従来のステップモータで電気−機械的に受信する方式ではなく、図中に記入している3相の電流信号をフォトカプラ等で受けて、電気的に処理して方位信号とする形式が多い。フォトカプラの使用は誤動作対策上において有効な手段であり、最近はとても多い。
図4・3 |
無接点発信方式(シンクロモータ)によるステップ・モータ駆動信号発生回路とその出力波形 |
(3)接点あるいはパルス信号での接続
接点スイッチや電磁リレー等による接点信号での出力やオープンコレクタ方式のトランジスタ式の出力が使用される。電磁ログの航程信号が1海里あたり200パルスの接点信号として出力されていたことから、互換性の面からこの形式が続いている。
(4)シリアルデータ信号線での接続
多種類のデータを伝送するために、データフォーマットを定めたシリアルデータ伝送が行われている。データフォーマットや信号レベル等もIECが詳細に規定しており、これが、国際標準として各航海計器に採用されている。(詳細は規格の解説書を参照されたい)
GPS受信機、ログ、ドップラーソナー(ログ)、ジャイロコンパス、電子磁気コンパスその他の各種の航法機器やプロッタ等との接続にこれから広く使用されている。
(1)ジャイロコンパスとの電気−機械的接続
ジャイロコンパスの方位伝達機構により、レピータのカードを1回転あたりのレピータモータの回転比として、360x、180x、90xなどの回転比の区分がある。360xとは、レピータのカードを1回転させるためにレピータモータが360回転することを表している。伝達機構には、シンクロモータ及びステップモータが使用されている。
(2)ジャイロコンパス等とのシリアルデータ信号線での接続
ジャイロコンパスにはシリアルデータ信号線での出力を持つ機種もある。接続が容易な利点がある。最近では、電子磁気コンパスが低廉な価格であることと方位信号が電気的に出力できることから小型漁船やレジャーボートで使用されている。また、IECの国際規格でも電子磁気コンパスの使用に関わる自差(magnetic deviation)や偏差(magnetic variation)も伝達できるフォーマットが用意されている。
(3)真方位指示装置でのシンクロモータの接続
アンテナの回転角度を指示器に伝える方式については、4・8・1項で述べているように行われている。ジャイロコンパスを装備している船舶では、レーダーの表示画面の上側が真北の方位を表示するように真方位指示装置が取り付けられている。この真方位指示装置は、アンテナの回転角度と現在の船首方位を計算して、真北が指示器の画面で0度の位置に来るように映像を表示する。計算方法には、差動シンクロモータを使う方法や最近ではIC等の演算回路で処理する形式もある。
差動シンクロモータを使用する方式を図4・4に示す。この方式では、例えばアンテナの回転角度を伝えるシンクロモータの信号を差動シンクロモータの固定子のコイルに接続する。差動シンクロモータの回転子側のコイルはレーダー側の偏向コイルに回転角度を受信する側のシンクロモータの固定子側に接続する。この差動シンクロモータの回転子側の回転軸はジャイロコンパスからのシンクロモータかステップモータによる真方位にあわせて機械的に回転させる。このように接続すると差動シンクロモータでは、真北からの偏角をずらした船首方位角度の信号分が回転子から出力される。従って、レーダーの表示画面では真北を上側とする真方位指示での表示ができる。差動シンクロモータを通さないで接続すれば船首方位が上側に表示される。
図4・4 真方位指示装置の差動シンクロモータの接続
(拡大画面:23KB) |
|
|
レーダーとログとは接点あるいはパルス信号での接続のほかに、シンクロモータで接続する形式がある。どちらも1海里あたり100〜800パルスの航程信号とする種類がある。接続時にはパルス数と整合させるための設定用ディップスイッチがある。
ジャイロコンパスからの信号は、かなり強い雑音成分を含んでいることが多い。交流の場合であっても正弦波であるとは限らず、方形波も用いられている。特にステップモータは、直流パルスや整流波形のままのパルスで、雑音成分が多く注意を要する。
したがって、ケーブル工事に対して十分な接地工事を行わなければならない。
ログ信号は、接点信号である場合が多いので、受信機側で信号の質を決めることができる。機器が半導体化されると信号レベルが小さくなり、雑音の影響を受けやすくなる。雑音が混入すると航程の精度が悪くなり、使用に耐えない。これを防止するためには、やはり十分な接地をする必要がある。
いずれのケーブルであっても、雑音の影響があるときには接地の状態を調査し、必要あれば接地工事を追加する。更に性能に悪影響を及ぼさない範囲で、コンデンサや雑音防止器(雑音防止回路)を線路に挿入することも行われる。
|