7・3・3 静止衛星
前述したようにケプラーの第3法則では、軌道の長半径Aと周期Tの間に、A 3/T 2=一定の関係があり、遠心力と重力の加速度が釣合う(等しい)という関係から、円軌道では、衛星の軌道上の速度vは の関係となる。ただし、Gは万有引力の定数でG=(6673±1)×10 -14m 3/(kg・S 2)、Mgは地球の質量Mg=5.977×10 24kgである。ここでAは軌道半径であるから、Rを地球の半径(R=6370km)とすれば、地球上の高さHは次の式から求められる。
この式から地上からの高さ約36000kmの円軌道に上げた衛星は24時間の周期を持つことが分かる。このような衛星が、地球の赤道上を東向き(地球の回転と同一方向)に回ると、地球の自転と衛星の軌道上の動きは完全に同期をするので、地上の各点から衛星は赤道上に止まったように見える。これが静止衛星である。
静止衛星を打上げるのには、まず、衛星をその軌道の地球から最も遠い点(遠地点)が、静止衛星の高度の近くになるような長楕円軌道(これを遷移軌道という。)に上げ、遠地点で、衛星に付属している遠地点モータと呼ばれる推進器を吹かせて、赤道を回る円軌道(ドリフト軌道)に入れる。ついで、衛星付属の推進器と姿勢制御の細かい調整によって、時間をかけて、衛星を所定の位置に静止させ、その後の運用中も、一定期間ごとにその静止位置を保持するように再調整をする。静止衛星の場合は、その寿命はこの位置の再調整用の推進器の燃料によって制限される場合が多い。
こうして地球上の高さHの衛星から見える地球上の地域は、衛星の直下点を中心とする直径Dで囲まれる円域となる。Dは
D=2Rcos-1(R/(H+R))ただし、Rは地球の半径6370km
で計算されるが、一般的には、衛星のカバレージは、送受信点から衛星を見る仰角が5°(又は10°)に限定されるので、Dの範囲は上式より少し小さくなる。
こうして、緯度70°以上の極地方を除く地球上の全地域は、大略3つの静止衛星でカバーできる。(図7・14参照)
しかし、静止衛星を船舶の通信に使用する場合は、通信をする地上の地球局と船舶が、その通信を中継する衛星を同時にみる必要があり、さらに完全にカバーするためインマルサットの海事衛星の場合は図7・15に示すように、4つの静止衛星で極地を除き全世界の海域をカバーするようにしている。
図7・14 静止衛星と極軌道衛星
内側は仰角5°、外側は仰角0°の線を示す
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なお、2005年2月20日から64E(IOR)が109E(IND-E)に変更される。また、2005年7月から54W(AOR-W)が98W(PAC-E)に変更される。変更後のインマルサットの海事衛星の配置を図7・16に示す
図7・16 インマルサットの配置変更後のカバレージ
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極軌道の衛星とは、北極と南極のほぼ上を通って地球を縦に回る衛星(図7・14参照)で、一部の気象衛星(気象衛星には静止衛星もあるが、より詳しい雲の写真を撮るには低軌道衛星を使用する。)、資源探査衛星のような衛星等地球面から800〜1000km程度の低い高度で地球全体の上をくまなく通る衛星軌道があり、これが極軌道の低い円軌道である。後に述べるCOSPAS/SARSATの捜索・救助用の衛星は、このような軌道の衛星であるというよりは、この軌道の衛星に相乗りをして運用されているものといえる。
軌道高度1000km程度の円軌道の衛星は、地球を1時間40分程度で一周するので、その間に地球は経度にして20数度自転する。このような衛星は、最低仰角を5°とすると、緯度によっても異なるが、中緯度で経度にして50数度の幅の地域から見えることになる。したがって、同じ衛星が約1時間40分おきに2〜3回上空を通ることになり、地球の裏側の軌道を合わせると、1日に同じ衛星が、4〜5回見えることになる。システムがよく配置された4衛星から構成されると、地球上のすべての点で、1日に10数回以上は衛星が上空を通ることになるので、COSPAS/SARSATシステムでは、その都度、遭難通報が衛星で受信されては地上に伝達されて遭難位置の測定が行われることになる。
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