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船舶電気装備技術講座 〔試験・検査編〕 (中級)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


3. 船内における試験・検査
3・1 一般
 船内に装備される電気機器及びケーブルは、一般に、製造工場において、検査機関(政府機関又は船級協会)の定める規則に基づいて、構造及び性能の検査が行われた良品であるが、これを船内に装備する場合、輸送、保管、取付け、配線、結線等の良・否によって所定の性能が得られない場合があるので、必ず船内において、検査機関の立会のもとに、電気機器の試験検査(以下、性能検査という)が行われる。
 船内の試験検査としては、この性能検査のほか、電気機器の取付状態、ケーブルの配線工事状態等の艤装工事に関する検査(以下、艤装検査という)も行われる。
3・1・1 試験検査の時期
 電気設備の船内の試験、検査は前述したように、(a)艤装検査と(b)性能検査の2種類あるが、艤装検査は、電装工事の開始の時点から行われるものであり、性能検査は、それぞれの電気機器が据付けられ、これに係る艤装工事が終了し、電源の供給が確保されてから実施されるものである。一般に、船内における検査は次の時期に行われるのが標準である。この検査時期には、検査機関の立会者のほか、船主監督及び乗組員(艤装員)が立会する場合もある。
(1)電気機器及び電路の位置出し(墨出し)の終ったとき。
(2)主要電気機器(発電機、配電盤、変圧器、電動機、始動器等)の取付けが終ったとき。
(3)区画ごと(機関室、居住区画、上甲板又は船倉内等)のケーブル布設が終ったとき。
(4)居住区画等の内張工事を行う前で、同区画の電路布設が終ったとき。
(5)タンカー等で危険場所における防爆形電気機器及びそのケーブルの取付けが終ったとき(進水前)。
(6)船底部に取付ける電気装備品(ログ、音響測深機等)の取付けが終ったとき(進水前)。
(7)各種電気機器の結線が終ったとき。
(8)各種電気機器の性能試験を行うとき。(船内試験時)
(9)海上試運転のとき。
(10)絶縁抵抗測定と電気艤装工事完了のとき。(最終確認検査)
3・1・2 電源
 試験は、船内電源によって行うことを原則とするが、試験結果に疑義がなければ陸上電源によってもよい。ただし、この場合、電気機器の入力端子における電圧は定格値の+6%〜-10%、船内配電盤における周波数は定格値の±1.5Hz以内にあるものとする。
3・1・3 船内試験・検査の準備
 試験を円滑に行うために、あらかじめ次の事項を考慮すること。
(1)各機器は試験に先立ち内部の清掃、各部の締付けのゆるみの有無を調査し、また各種計測用温度計・計器の準備を行う必要がある。
(2)試験内容を十分に検討して疑問がないようにしておく。
(3)必要と認めれば予備試験を行う。
(4)該当する電気機器の規則、規格、添付成績書、取扱説明書などを調査、研究し、その性能、操縦並びに取扱いに十分な知識を得ておく。
(5)関係各部と十分な連絡、協議を行う。
3・1・4 調査確認事項
 試験に際しては、特に次の事項について調査をしておく。
 試験を行うに当たっては、陸上試験成績書と照合するほか、他部に関連がある機器については主務部の成績表を十分に調べておくこと。
(1)設置の適否
(2)動作の良否
(3)操縦及び取扱いの難易
(4)振動、衝撃、騒音の程度
(5)温度上昇の程度と異常温度の有無
(6)整流の良否
(7)誤差の程度
(8)絶縁の良否
(9)照明の適否
(10)通信の程度
(11)防水の良否
(12)漏水の有無
(13)分解、点検、手入及び取換えの難易
(14)その他必要な事項
3・1・5 計測器具及び測定上の注意
(1)計器
 計器は、船内装備の計器を使う。ただし、造船所で標準計器により校正された計器とあらかじめ照合されることが必要である。
 固有計器以外に計器を使う場合は、あらかじめ校正された1級以上の電圧計や電流計を使うこと。
(2)絶縁抵抗の測定
 絶縁抵抗の測定は、原則として電気機器にあっては運転の前後に行い、特に指定がなければ直流500V絶縁抵抗計を使うこと。ただし半導体素子などを含む回路の測定には十分注意して測定を行うこと。
(3)電流の測定
 交流三相回路の電流の測定は、R.S.T各相について行うのを原則とするが、三相平衡負荷の場合はS相の電流のみを測定してもよい。
(4)電圧の測定
 交流三相回路の電圧の測定は、R-S.S-T.T-R.の各相間について行うのを原則とするが三相平衡負荷の場合はT-R相のみを測定してもよい。
3・1・6 その他船内試験・検査を行う際の注意事項
(1)検査機関及び船主監督による立会検査の際には、関係のある承認図を用意しておき、電装工事について注意事項又は指定事項があればその対策、処置等を十分検討する必要がある。
(2)艤装検査及び性能検査(船内試験)の時期について検査機関及び船主と事前に協議し、検査スケジュールを作成しておく必要がある。
(3)外注品(各種電気機器及びケーブル)については、試験成績書、検査機関の検査合格証明書、取扱説明書等を管理、調整しておき、試験検査中何時でも提示できるようにしておく必要がある。
3・2 発電装置
3・2・1 一般
 船内における発電機の試験は発電機の製造工場における単体試験及び原動機と組合わせたときの総合試験の成績結果を参考にしながら実施する必要がある。
 船内において各種の性能試験を行う場合、陸上で行った試験条件と必ずしも一致しないため試験成績の結果にも当然違った値が出てくることがある。例えば、発電機の負荷として船内の実負荷(照明設備、動力設備等)を利用するか、水抵抗負荷(負荷水槽等)とするか、更に力率調整用としてリアクトル負荷を使用するか等の負荷の条件が異なる場合には発電機の特性も違ってくるので、陸上試験はできる限りこれらの点を十分考慮した試験成績書を作成しておくことも必要である。
 発電機の負荷のとり方として、船内の実負荷を使用する場合は、船内の各種設備が殆んど運転できる状態にしておく必要があり、発電機の試験が遅れたり又は十分な負荷がとれないこともあるので、工事の進行状況を見た上で決定しなければならない。負荷水槽を用いる場合には2・1・6を参照のこと。
3・2・2 絶縁抵抗試験
 連続運転試験前とその後に、500V絶縁抵抗計により固定子巻線、回転子巻線、励磁装置、スペースヒーター、ガバナーモータの各導電部と船体間の絶縁抵抗を測定する。自動電圧調整器回路にトランジスタ、ダイオードなどの半導体を使用している場合は、主回路から切離して単独にテスターで測定する。
 測定値は、規則によって、連続運転後で2・16式(2・2・9参照)による値以上が要求されているが、一般にはIMΩ以上あれば運転上差し支えない。
3・2・3 連続運転試験
(1)試験方法
 発電機を定格電圧、定格回転速度(又は定格周波数)のもとで全負荷(水抵抗の場合にはkW負荷、リアクトル負荷を併用の場合kVA負荷)において、少なくとも2時間連続運転し、各部の温度上昇、振動、その他の性能に異常のないことを確認する。
 なお、本試験の前に下記の負荷と時間によって順次確認運転を行う。
 
負荷率(%) 25 50 75 100
運転時間(分) 15 15 15 120
 
 運転中の計測個所は表3・1の各項目とするが、計測は30分毎に行い、回転部の温度計測は運転停止後速かに温度計法により行う。もし、抵抗法で測定する場合は2・2・8(1)(f)を参照のこと。
(2)試験の結果
 温度上昇値については、2・2・8表2・5(船舶設備規程)又は表2・6(NK規則)により良否の判定をするが、そのときに、製造工場で行った温度上昇のデータを参考にして試験条件(例えば、電流の大きさ、運転時間、振動の有無、周囲温度等)を考慮した上で、異常の有無をチェックすることも必要である。また、同時に、原動機の連続運転試験については、その関係者と十分協議のうえ計測する。
 
表3・1 計測項目
 負荷として水抵抗(力率100%)を使用した場合、定格力率80%の交流発電機では負荷電流が定格電流の80%になるので、温度上昇値は電流の2乗に比例することから約64%に低減されることに注意する必要がある。







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