2・2・9 絶縁抵抗試験
(1)絶縁抵抗の性質と測定器
電気機器の絶縁状態を最も簡単に測定する方法は、直流絶縁抵抗計(メガ)によるものである。しかし、この測定によって得た値は、絶縁劣化状態の一つの目安を与えるものである。
(a)絶縁抵抗の測定は耐電圧試験前に行うのが普通である。また、この値は比較値に意味があり、保守を行うには定期的な測定を行って変化の状態を比較検討することが大切である。
(b)絶縁抵抗値は、直流電圧印加後、時間とともに増加するが、普通は指示一定になった値を記録する。指示が微増している場合は、中小形では1分値をもって行うことが多い。
(c)測定器は電池を内蔵したオートメガがよく使われる。
(2)測定上の注意事項
(a)電池内蔵式の場合は、電池の電圧が降下すると誤差が大きくなる。
(b)測定前には巻線の残留電荷を除去しておくこと。特に大容量機では測定前30分程度は端子を接地しておくとよい。
(c)電気機器の各部が正常な使用温度に達した直後、機器の異極導体相互間及び導体と大地間で行う。
(d)測定終了後は保安上、必ず放電させておくこと。
(3)絶縁抵抗の許容値
回転機の絶縁抵抗値は温度試験後500Vの絶縁抵抗計で測定し、次の算出式による値以上が要求されている。
(1)耐電圧試験
耐電圧試験は絶縁抵抗試験の直後に行うもので、充電部と大地間、又は充電部分相互間に施された絶縁の強度を保証するための試験である。
(2)耐電圧試験上の注意
(a)製作工場で新しい機器の耐電圧試験を行う際は、温度試験後に行うのが普通である。
(b)試験時間は1分間とし、まず、試験電圧の1/3程度を加え、引き続き電圧計の読みうる程度の範囲内で電圧を上昇させ、既定値に達してから1分間その値を保持する。
(c)試験における交流電圧の波形はなるべく正弦波に近い商用周波数のものとする。
(d)試験にあたって、被試験巻線の端子は一括して印加するようにする。
(e)絶縁破壊の場合には入力側の電圧計の振れ、破壊音、煙、匂いなどによって検知する。
図2・13は試験回路の一例を示す。
図2・13 耐電圧試験回路の一例
(f)耐電圧試験必要容量
耐電圧試験を行うには、試験電圧を発生する変圧器、一次電圧を調整する誘導電圧調整器又は水抵抗器が必要である。これらの準備をするうえに耐電圧試験時の充電容量を知る必要がある。通常、充電電流は大略60〜300mAぐらいであり、3〜5kVAの耐圧用変圧器があればよい。ただし50W以下の小容量機器の場合は0.5kVA以上でもよい。
(3)試験電圧値
回転機一般として行われる試験電圧値は次のように規定されている。
表2・7 絶縁耐力試験電圧表(船舶設備規程)
機器の部分 |
試験電圧(ボルト) |
直流機及び交流機の電機子巻線 |
1キロワット以上のもの 2E+1000(ただし、最低1500)
1キロワット未満のもの |
直流機界磁巻線 |
定格電圧が50ボルト未満のものは500、定格電圧が50ボルト以上250ボルト未満のものは1000、250ボルト以上ものは2E+500 |
電動機として起動しない同期機の界磁巻線 |
10Ex(ただし、最低1500) |
電動機として起動する同期機の界磁巻線 |
界磁巻線を短絡して起動するもの |
10Ex(ただし、最低1500) |
界磁巻線を開いて起動するもの |
2Ei+1000 |
絶縁した起動用回転子巻線 |
2Ei+1000 |
誘導機一次巻線 |
1キロワット未満のもの2E+500(ただし、最低1000)
1キロワット以上のもの2E+1000(ただし、最低1500) |
巻線形誘導機二次巻線 |
2Es+1000(ただし、最低1200) |
|
備考 |
1. |
Eは主発電機定格電圧とする。 |
2. |
Exは、励磁機定格電圧とする。 |
3. |
Eiは、回転子を静止させ、起動電圧を電機子巻線に加えた場合の界磁巻線又は起動回転子巻線の端子間に生ずる誘起電圧とする。ただし、界磁巻線又は起動用回転子巻線に高抵抗を接続して起動する場合には、その状態における端子電圧とする。 |
4. |
Esは、二次巻線端子の最大誘起電圧とする。 |
5. |
電動機として起動する界磁巻線であって、これを短絡して起動するもののうち、その界磁短絡用抵抗値が界磁巻線抵抗値の10倍を超えるものについては、これを界磁巻線を開いて起動するものとみなす。 |
表2・8 回転機の耐電圧試験値(NK規則)
項 |
試験部分 |
試験電圧(実効値)(V) |
1 |
1kW(又はkVA)未満で100V未満の回転機の絶縁した巻線(3項から6項に規定するものを除く) |
2E+500 |
2 |
回転機の絶縁した巻線(1項及び3項から6項に規定するものを除く) |
2E+1,000(最小1,500) |
3 |
直流機の他励磁巻線 |
2Ef+1,000(最小1,500) |
4 |
同期発電機、同期電動機及び同期調相機の界磁巻線 |
|
a)Ex≦500V
500V<Ex
|
10Ex(最小1,500)
2Ex+4,000 |
b)界磁巻線を短絡して、又は巻線の抵抗値の10倍未満の抵抗を介して始動するもの
|
10Ex(最小1,500,最大3,500) |
c)界磁巻線を開路して、又は巻線の抵抗値の10倍以上の抵抗を介して始動するもの
|
2Ey+L000(最小1,500) |
5 |
誘導電動機又は誘導同期電動機の恒久的に短絡されない(例えば、抵抗始動する場合)の二次巻線(通常は回転子巻線) |
|
a)逆転運転をしない電動機又は静止状態からのみ逆転運転をする電動機
|
2Es+1,000 |
b)逆転運転をする電動機又は運転中に入力電源の反転により制動を行う電動機
|
4Es+1,000 |
6 |
励磁機。ただし、同期電動機又は誘導同期電動機の始動時に接地される又は界磁巻線から切り離される励磁機び励磁機の他励磁界磁巻線を除く。 |
2Ei+1,000(最小1,500) |
|
備考1. |
E; |
定格電圧 |
Ef; |
界磁回路の最大定格電圧 |
Ex; |
定格界磁電圧 |
Ey; |
回転子を静止し、始動電圧を電機子巻線に加えた場合の界磁巻線又は始動用回転子巻線の端子における誘起電圧。ただし、界磁巻線又は始動用巻線に高抵抗を接続して始動する場合は、その状態における端子電圧。 |
Es; |
回転機が静止した状態における、二次巻線間の静止誘導電圧。 |
Ei; |
定格励磁電圧 |
|
2. |
一端子を共有する二層巻線の場合、定格電圧(E)は、あらゆる二端子間に発生する最大実効電圧とする。 |
3. |
段絶縁を有する回転機の耐電圧試験は、本会の適当と認めるところによる。 |
4. |
励磁装置の半導体整流器については、2.12半導体整流器の規定による。 |
|