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船舶電気装備技術講座 〔試験・検査編〕 (中級)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


2・4・7 拘束試験
(1)拘束試験の方法
 この試験は、円線図法によって特性算定を行う場合の、すべり(拘束点)の値を求めるために行う。電動機の軸が動かぬように特殊腕木などで固定し、任意の周囲温度で一次巻線に定格電流又はそれに近い一次電流が流れるような定格周波数の低電圧を加えて、一次電流、印加電圧及び入力を測定する。定格負荷電流に対する拘束電圧(インピーダンス電圧)の値は、440V電動機で70〜100Vである。
 図2.39はその測定接続図である。
 
図2・39 拘束試験回路図
CB; 遮断器
VT; 計器用変圧器
CT; 計器用変流器
VS; 電圧計用切換器スイッチ
AS; 電流計用切換器スイッチ
W1、W2 電力計
V; 電圧計
F; 周波数計
A; 電流計
IM; 被試験機
〔注意〕
(a)巻線形では二次端子を短絡して行う。
(b)二次電力計の読みから力率は次の式で求める。
 ただし、力率が50%以下の時は一方の電力計の読みは負の値となることに注意。
 この値と入力・電圧・電流から求めた力率が合致していることを確かめる。少くとも両者から算出した力率の差は後者の10%以下のこと。
(c)電流の大きい電動機を試験する時、VTから電動機まで線路が長いと、電圧降下が無視できないのでVTを電動機端子に接続すること。
(d)巻線形電動機では回転子の位置によってインピーダンス電圧の値が多少変るので(±3〜5%ぐらい)、平均値を示す位置で行うこと。
 図2.40は回転子位置による拘束電圧の変化の一例を示す。
(e)拘束したまま電流を通すので巻線が加熱するから迅速に行うこと。
(f)この試験で電流が不平衡な場合は、巻線のつなぎ違い、接続部のろう付不良、層間短絡などが考えられる。
 
図2・40 回転子位置の変化に対する拘束電圧の変化の一例
(全閉巻線形15kW-8極-200V-50Hz)
 
(2)低周波拘束試験
 特殊かご形誘導電動機・大容量高速機などは(1)の定格周波数による拘束試験のほかに、定格周波数の1/2の周波数でも同じような試験を行う。これを低周波拘束試験といい特殊かご形電動機の回転子導体の電流による漏れ磁束の分布が二次周波数によって変化するため、回転子の拘束時と運転時ではインピーダンスに相当の相違を生ずる。このため定格周波数と1/2周波数によるインピーダンスから運転時(円線図法では定格周波数の1/5の周波数)のインダクタンスと抵抗を算定している。
〔注意〕
 この試験では、定格周波数の1/2の周波数を発生する電源が必要であるが、ない時は、定格周波数を発生している状態から試験用発電機の駆動機の電源を切って、減速させる途中で測定するとよい。
 
(3)拘束試験の簡便法
 
図2・41 単相試験法結線図
R; 可変抵抗器
A; 電流計
V; 電圧計
W; 電力計
IM; 被試験機
 
 拘束試験は低電圧の平衡三相電圧を必要とするので試験用発電機又は商用電源から誘導電圧調整器を通して行うのが普通である。しかし試験設備の不備な場合は次のように単相を印加して行うと簡便である。
 図2・41は一次巻線の2端子を短絡し、それと他の1端子に単相電圧を印加する。この場合の電流を全負荷電流近くにする。可変抵抗はグリッド抵抗でも水抵抗でもよい。いま、単相電圧の読みE1、電流I1、入力P1としたとき、三相印加時に換算するには、次のようにする。
 
 
 これを単相試験法と呼んでいる。
2・4・8 特性算定
(1)円線図法
 電動機特性は、2・4・3、2・4・5、2・4・6、2・4・7の結果に基づいてJEC 2137:00(誘導機)に規定する次の4種類の円線図法により算出しその結果が規定値又は保証値に適合するかを確かめる。
(注 円線図の作図法及び特性算定の詳細についてはJEC 2137:00を参照のこと)
(a)L形円線図法 (b)T形円線図法
(c)特殊L形円線図法 (d)特殊T形円線図法
 L形円線図法は、ハイランド氏法といわれるもので、普通はこの方法を使う。
 T形円線図法は鳳氏法を原案としたものである。特殊L形・特殊T形円線図は低周波拘束試験を行ったものに適用するものである。
 T形円線図法は、精度は高いが計算・作図が多少めんどうであるので、極数の多い機械、無負荷電流が全負荷電流の50%以上或は全電圧短絡電流の20%以上もあるような電動機に対して使う。
 しかし、無負荷電流が全負荷電流の80%以上或は全電圧短絡電流の50%以上もある特殊電動機は、実測によった方がよい。なお、円線図法は作図によって特性を算定するのが普通であるが、計算によっても算出できる(JEC2137-00誘導機参照)
 なお、始動特性の算定に当たっては、鉄心の飽和の高い場合には、全負荷電流並びに全負荷電流の2倍の2点を、対数目盛方眼紙上にて延長し、全電圧を加えたときの電流を推定し、下式により始動トルクTstを算定することが望ましい。
 
 
ここにR1:各端子間において測定した一次巻線抵抗の平均値(Ω)
IS': 全負荷電流に近い拘束電流(A)
W'S:全負荷電流に近い電流を通じたときの拘束時入力(W)
Ist:始動電流(A)
S: 定格出力におけるすべり
P: 定格出力(W)
(2)損失分離法
 この方法は無負荷試験と実負荷試験から諸特性を算定する方法であり、入力側のみ測定を行うので、負荷の種類を問わず、電動機出力を消化できる機械であればよい。従って可変電源設備のない場所や、すでに相手機械と直結されている場合に非常に便利である。試験の順序並びに特性の算定法は次のとおりである。
(a)一次巻線の抵抗を測定し、75℃(絶縁の耐熱クラスA、E、B)又は115℃(絶縁の耐熱クラスF、H)に換算した一次一相の抵抗値r1(Ω)を算出する。
(b)無負荷試験を行い、定格電圧V0(V)における無負荷電流I0(A)、無負荷入力W0(W)を測定する。
(c)電動機に負荷をかけ、定格周波数・定格電圧において無負荷より約125%負荷にわたって運転し、それぞれの点の入力W(W)、一次電流I(A)及び回転速度NR(min-1)を測定する。
(d)以上の測定値から、次の式により特性を算定することができる。
 
 
 出力の算出式は、次のように考える。
 
 
 
 上式中、回転速度NRにおける機械損がとなっているのは、これらのせまい測定範囲内での機械損は速度に比例すると考えてよいからである。このようにこの方法は、各損失を分離して考え効率を算定するので損失分離法と呼んでいる。なお、測定に当たっては、周波数を正しく定格周波数に合わせること、正しい値を測定すること及び回転速度の正確な測定とが、特に必要である。
 これにより正しいすべりを算出するためで、すべりの小さい5%以内では2・4・8(3)に述べるようなストロボスコープ法ですべりを測定した方がよい。
(3)実負荷試験(トルクの測定)
 円線図法で算定する特性は、ある特定の状態(静止点と無負荷点)の特性から、計算により各負荷に対する諸特性を求めているが、厳密にはこのようにして算定した特性が実際の負荷状態の特性と必ずしも一致しないし、実際に負荷を掛けないと分からない現象もある。例えば、負荷電流又は温度上昇による漂遊負荷損の増加、始動時やすべりの大きい点の異常現象、負荷が多くなった時発生する電磁音、振動などを詳細に知りたい場合など、どうしても実際に負荷をかけて行う必要がある。また、機械的に負荷して強度を試験する必要がある場合、特殊な電動機で円線図法では不正確であることが分かっている場合(例えば、無負荷電流が全負荷電流の80%に達したり、拘束力率が85%以上もあるような場合)、又は小形電動機で実際に負荷をかけるのが簡単な場合などに、この方法が行われる。試験方法としては、大中形機には電気動力計、小形機にはプロニーブレーキ・うず電流ブレーキが用いられる。測定項目は出力に対する電流・力率・効率・回転速度・トルクを測定する負荷特性と、すべりに対する電流・力率・トルクを測定する。すべり−トルク特性を必要に応じて測定する。すべり−トルク特性を測定する場合、停動トルクよりすべりが大きい点では、測定が不安定になり困難である。この場合は図2.41のような結線でダイナモメータ又は直流発電機を負荷として運転し、これと返還負荷を行っている電動発電機の励磁を加減し容易に測定できる。
 
図2・42 トルク測定結線図
 
 回転速度の測定は回転計によるほか、すべりの少ない全負荷付近まではストロボスコープ法・直流電圧計法・受話器法などが用いられる。
 ストロボスコープ法は、電動機の極数と同じ白黒の色わけを白墨などで回転部につけ、電動機と同一電源のネオンランプや蛍光灯で照らし、色分けされた模様の1分間の回転速度を測定し、同期速度で割ればすべりが求められる。
 巻線形電動機の場合は、回転子スリップリング間に直流ミリボルト計を接続し、1分間に指針が振れる数nを測定し、これを電源周波数f1からすべりSはつぎの式で求まる。
 







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