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第2編 試験・検査
1 試験・検査の共通事項
1・1 用語の意味
(1)試験とは、部品又はそれを構成する材料、部品の性能などが、関係法規、規則、規格などの規程に適合するかどうかを判定する資料を得るための運転、操作、測定などの行為をいう。
(2)検査とは、試験のうえ、適合性の合否を判定する行為をいう。
1・2 検査区分
 船舶の検査を区分すると次のようになる。
(1)政府機関において実施する検査(運輸局、水産庁、電波監理局)
(2)日本小型船舶検査機構の検査
(3)船級協会検査
(4)船主監督検査
(5)社内検査
1・3 船舶安全法による検査の分類
(1)定期検査
(2)中間検査
(3)臨時検査
(4)臨時航行検査
(5)特別検査
(6)準備検査
(7)製造検査
(8)予備検査
 上記のうち(1)〜(6)は船内に装備後、また(7)、(8)は製造工場における検査である。
1・4 試験・検査の種類
(1)製造工場における試験・検査
(a)電気機器の材料及び部品の試験・検査
(b)電気機器の製造中及び部品の完成時における試験・検査
(2)船内における試験・検査
(a)電気艤装工事中における検査
(b)船内試験・検査(効力試験・動作試験)
1.5 復習問題(1)
(1)運輸局で実施される検査には、いかなるものがあるか。
(2)試験とは、いかなる行為であるか。
 
2 製造工場における電気機器の試験検査
2・1 試験の予備知識
2・1・1 試験・検査の種類
(1)試験・検査方式
(a)全数試験・検査
 全数の製品について行う試験・検査をいう。
(b)抜取試験・検査
 検査品中から無作為に抜取った電気機器について、その結果により試験・検査品全数の合否を定める試験・検査をいう。
(2)試験・検査の分類
 電気機器の製造工場における試験は次の3つに分類され、検査官又は船級協会検査員の立会検査などは、一般に受渡試験の全部及び参考試験の全部又は一部が行われ、形式試験は特に要求される場合を除き製造工場が自主的に行う。
(a)形式試験
 形式試験は製品の性能を知るために、原則として製造工場において行う試験である。
(b)受渡試験
 受渡試験は受渡しの際に行われる一般的な試験である。
(c)参考試験
 参考試験は設計上必要な場合又は仕様書などによって、特に要求された場合に行う試験である。
(3)試験・検査項目
 電気機器の試験・検査項目は次のものがあげられる。
(a)材料の試験・検査
 回転機軸材など主要材料、その他の材料が規則・規格などに適合するかどうかを試験・検査する。
(b)部品の試験・検査
 電気機器の主要な構成部品及び組立部品のうち、特に指定されたものについて、規則・規格などに適合するかどうかを試験・検査する。
(c)中間工程における試験・検査
 電気機器の主要な構成部品及び組立部品のうち、特に指定されたものについて、製品として組立調整を完了するまでの工程において規則・規格などに適合するかどうかを試験・検査する。
(d)製品試験・検査
 一般に電気機器については次の試験・検査が行われる。
(i)外観構造検査
(i)動作試験・検査
(iii)性能試験・検査
(iv)温度試験・検査
(v)絶縁抵抗試験・検査
(vi)耐電圧試験・検査
(vii)防水試験・検査
(viii)落下試験・検査
(ix)騒音試験・検査
(x)寿命試験・検査
(vi)その他の参考試験・検査
 規則・規格などによっては、次のような試験・検査が要求されることがある。
 高温試験・検査、低温試験・検査、塩水噴霧試験・検査、傾斜試験・検査、動揺試験・検査、振動試験・検査、衝撃試験・検査、爆発引火及び爆破強度試験・検査など。
2・1・2 試験・検査に適用される規則及び規格
 電気機器の試験・検査の項目、方法及び判定基準は一般に客先との打合せで定めたもの及び規則・規格によって行われるのが普通である。これらの主なものに次のものがあげられる。
 (カッコ内は規則又は規格の略称・記号を示す)
(1)規則 船舶設備規程 小型船舶安全規則、小型漁船安全規則 日本海事協会鋼船規則(NK)、その他の国の船級協会規則(LR、ABS)など
(2)規格 日本工業規格(JIS)、電気規格調査会標準規格(JEC)、日本電機工業会規格(JEM)、日本電線工業会規格(JCS)
2・1・3 試験上の注意
(1)試験に必要な資料、客先仕様書、設計仕様書、関連法規・規則・規格などを検討し、試験項目・方法・順序を明確に決定し、必要な負荷・諸計器をそろえ、十分な容量の開閉器・電源などを準備する。
(2)試験結果を予想すると同時に合否の判定基準を明確にしておく。
(3)配線、給油・給水装置、回転機の直結状態、ベルトのかけ方、遮断器のリレーセットなどが計画どおりであることを確認する。
(4)計器は、校正されたものであり、計器と使用回路の関係を明らかにし、できれば計器に表示する。
(5)安全について十分な注意を払う。
(6)一つの試験項目が終わったら必ず記録を整理し、予想値と比較確認する。
(7)試験は、一般に電気技術者が行うが、電気的性能にばかり気をとらわれることなく、機械的点検、特に振動・軸受温度、油量・水量などの監視に注意する。
(8)仕様に合致しない事項、品質保証上不適確な事項は早期に発見して、迅速な対策を関連部署と協議し、再発防止の手段をとる。
(9)試験回路及び使用機器等を記入した回路接続図を書いて、この図によって接続するようにする。
(10)配線は、原則として、主回路を先に行い、次いで分岐回路を接続するほうがよい。
(11)一般にそれぞれの規則・規格などに試験状態の指定がない場合には、試験は標準試験状態で行われる。
(12)標準試験状態JIS Z 8703:83(試験場所の標準状態)により、標準温度は20℃、標準湿度は65%とするが、試験結果に疑義がないときは、温度は5〜35℃、湿度は45〜85%の範囲内において試験して差し支えない。
(13)規定された試験状態に対する許容差は、特に各規格に規定されていなければ、次によってよい。
(a)温度±5℃
(b)湿度±5%
(c)圧力±5%
2・1・4 安全上の注意
 試験を行うに際しては、安全について細心周到な注意を払うとともに、十分な安全対策を施し、特に電気災害は重大な災害につながる傾向にあることを十分に認識しておくべきである。
 次に安全対策の幾つかについて述べる。
(1)試験を行うグループの責任者、担当者を明らかにして、関係部署との連絡を常に緊密にできるようにする。
(2)責任者は試験員に作業内容・方法・順序・分担・日程・安全注意事項などをよく理解させ、毎日の作業・試験項目が常に分かるようにする。
(3)安全標識を必要箇所に掲げる。一般には標識の種類と設置例はJIS Z 9104:95(安全標識)を参照すること。
(4)通電している機器、特に変圧器のような静止機器には通電中の標示として赤電球の点滅をさせるとよい。このことは耐電圧試験中においては、特に必要である。
(5)電気機器の周囲には、安全柵やロープなどを設け、試験作業区画を明らかにしておく。
(6)非常の事態に備え、消化器・消火砂・消火栓・出入口・配電盤・担架などの置いてある場所、緊急連絡先を全員が確認しておく。
(7)作業を行う場合には、原則として、安全帽を着用し、腰手ぬぐいやネクタイは回転体に巻きこまれるおそれがあるので着用してはならない。また裸体に近い状態で作業することは避けること。
(8)試験前に電源設備、被試験機との直結状態、負荷設備、関連設備の状態を点検し、危険な箇所を発見したら即刻処理する。
(9)導電体部分の作業を始める際は検電器で通電していないことを確かめる。
(10)配線はなるべく負荷先端から始め、電源への接続は最後に行う。
(11)VT、CTの取扱い及び接続は入念に行い、特にVTの二次回路は他の回路と混触しないように注意し、その一端を接地する必要がある。
(12)電気機器は完全に所定の接地が行われていることを確認する。特に、軸電流防止板やゴムクッションのあるもの、あるいはフレームが球形のため試験用木枠上で試験するものは、接地を忘れがちであるから十分注意する。
(13)導電部分の露出箇所はできる限り絶縁する。もし、絶縁が行えない場所は安全保護柵かロープなどで人が近づかないように危険標識を行う。







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