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2.4 動力及び電熱装置
2.4.1 電動機及び始動器
(1)電動機
 電動機は設置場所の環境に適した保護形式のものを選定し、使用条件、機械の特性、電源、制御方式などとの関連を考えて性能と経済性のバランスを図ることが肝要である。
電動機は次の諸点を検討して選定することが望ましい。
(a)標準品の採用(JEM参照)
(b)速度制御の要求の有無、もし要求があればその範囲、制御精度、過渡特性など。
(c)絶縁の耐熱クラス。
(d)効率の良否。
(e)始動時などの突入電流が電源電圧におよぼす影響。
(f)非常停止の要否。
(g)取扱い及び保守の難易。
(h)設置場所の環境条件、とくに周囲温度、相対湿度、換気性、空気の汚染度及び据付条件。
(i)艤装工事の難易
 船内の補機用電動機には一般に三相かご形誘導電動機が使用され、直流電動機、同期電動機、巻線形誘導電動機などは、それらの特性上の利点から是非その使用が必要とされる場合を除いては適用されない。
 一般にかご形誘導電動機が使用される理由としては構造が簡単なこと、保守が容易なこと、安価なことなどが挙げられる。
 電動機の定格はその使用状態により連続定格、短時間定格及び反復定格の3種類に大別されるが船内の電動機は一般に連続定格のものが使用される。
 短時間定格及び反復定格の電動機は次のようなものがある。
短時間定格の電動機
主機回転装置、工作機械、天井クレーン、舷梯ウインチ、救命艇ウインチ、エレベーター、ダムウエーター、糧食用クレーン、かじ取機
反復定格の電動機
荷役装置
 なお、反復定格の表し方は一般に負荷時間率(%ED表示)が使用されるが、これは1回の負荷時間と1周期の時間との比を%で表したもので、特に指定しない場合は1周期の時間は10分とされる。
 またJEC2137(誘導機)によれば短時間定格の標準値は5分、10分、15分、30分、1時間及び2時間の6種類があり、%EDの標準値は15%、25%、40%及び60%の4種類がある。
 従って、短時間又は反復使用される負荷の使用状態(使用時間)を考慮のうえこれらの標準値の中から適当な値を選べばよい。
 電動機の絶縁は従来耐熱クラスEが多く用いられてきたが、その間に、技術の進歩とその応用による小形軽量化は世界的すう勢となり、絶縁材料の進歩による耐熱クラスB・Fの採用が標準的となってきた。
 このような状況のもとで、JEM1277(船用低圧三相誘導電動機)が1984年に改正されるとともにJEM1410(船用低圧三相かご形誘導電動機の寸法)が新規に作成され、絶縁も電動機の枠番により下記のごとく耐熱クラスE、B及びFが併用されるよう規定された。
 
枠番 112M以下 132S〜180M 180L以上
絶縁の耐熱クラス E B F
 
 しかし、これに対する各メーカーの対応は必ずしも同じではなく、全機種を耐熱クラスFで統一するメーカーもあれば、BとFのみの併用で対応するメーカーもあるので、メーカーによってその都度絶縁を確認する必要があるが、いずれにしても、耐熱クラスEの時代からB及びFの時代へ移ったといえる。
 なお、JEM-1277では耐熱クラスFの電動機で装備状態において、外被の温度上昇が50℃を超えるものには赤字のマークを外被の見やすい場所に表示することになっている。
 また、実際に電動機を装備する場所の周囲温度が本船に適用する規則で定められた値よりも高い場合には電動機へ全負荷を掛けた場合の電動機各部の温度が規則で許された値を超えないように温度上昇を抑えるように設計された電動機を選定するように注意しなければならない。
 電動機の外被は、暴露部へ装備される場合全閉防水形を使用する以外は、一般に価格の面から防滴形を使用するが例えば機関室の床下のように水分や油分が多い環境条件の良くない場所に装備する電動機は全閉外扇形又は防水形を使用するのが望ましい。
 軸流内装形通風機用電動機は水分や油分を多量に含んだ空気の流れの中に直接晒されるので全閉形を使用するが冷却は空気の流れによって行われるので外扇を設ける必要はなく全閉自冷形を用いる。
 また工作機械は金屑や木屑が侵入するおそれが多分にあるので一般に全閉外扇形とし、電動機の両軸端に回転砥石が取り付けられるグラインダーのように構造上外扇を設けることが困難な場合は全閉自冷形を採用する。
 なお、現在では、比較的小容量の電動機は全閉外扇形とすることを標準としているメーカーが多く、これらの電動機を防滴形とするとメーカーの標準から外れるため、かえって高価となることもあるのでこの点にも注意して外被の選定をする必要がある。
 電動機の絶縁抵抗の低下を防止するために、電動機が休止中にのみ自動的に通電するようにした乾燥用ヒーターを設ける場合があるが一般にはかじ取機用電動機、ウインドラス、係船機などの甲板機械用電動機、荷役装置用電動機などに設けられているようである。
 乾燥用ヒーターには電動機の巻線に微弱電流を流して電動機内を加熱する方法と電動機内へスペースヒーターを設けてこれにより加熱する方法とがあるが後者の方が多く用いられ、その適用は造船所によりまちまちである。
 また、ヒーターへの給電の方法については電動機の始動器の中へ降圧トランスを設けて始動器内の主接触器の電源側の電圧を降圧して給電する方法と船内の照明装置などのための100V(又は220V)系から給電する方法とがあるがこれも造船所により適用はまちまちである。







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