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カリキュラム紹介
認定看護師教育課程訪問看護学科
I 認定看護師の役割
 日本看護協会認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的として創設された。
 認定看護師とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有することを認められた者をいい、実践、指導、相談の3つの役割、つまり、個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践し、看護実践を通して看護者に対し指導を行い、看護者に対しコンサルテーションの役割を果たす者である。
 訪問看護分野の認定看護師教育は、平成17年度財団法人日本訪問看護振興財団において、初めて開始された。
 
II 認定看護師教育課程訪問看護学科のカリキュラム
 認定看護師教育課程訪問看護学科の教育は、教育理念・教育目的に従い、共通科目、専門基礎科目、専門科目、演習、実習から構成され、約6ヶ月にわたる630時間のカリキュラムである。
 本課程では、共通科目は東京女子医科大学認定看護師教育センターで約1ヶ月の講義が行われた。ここでは、東京女子医科大学認定看護師教育センターの透析看護・手術看護、および東京都看護協会の感染看護の領域との合同講義であった。専門基礎科目、専門科目は表参道にあるJNAビル5階にて多数の講師の方々により講義が行われた。演習は、設備や医療機器類の整った施設等に協力を得て一部は学外で行った。実習は、14ヶ所の訪問看護ステーションに分かれ6週間実習を行った。実習後には、受け持ち患者の看護をケースレポートとして発表会を行った。
 これらの全課程において規定の条件を満たしたものが、修了試験に臨み、その結果により、18名全員が課程を修了することができた。
 
〈教育理念〉
 地域で暮らす人々が疾病や障害があってもQOLを満たした生活が主体的に継続できることをめざし、地域で支える看護実践の専門家・指導者を育成して、訪問看護等在宅ケアの質向上及び推進を図る。
 
〈教育目的〉
 医療ニーズの高い在宅療養者・障害者に対して、専門的看護技術・知識を提供するとともに、ケースマネジメントを適切に実施し、在宅ケアチームのケア能力の向上とリーダーシップが発揮できる認定看護師を育成する。
 
 
1. 入学式
 平成17年10月3日南青山会館(東京・港区)にて、多数の来賓のご臨席をいただき入学式が挙行された。課程長式辞に続き、主催者・共催者による祝辞があり、来賓代表として厚生労働省医政局看護課山田雅子在宅看護専門官からの祝辞として訪問看護への期待が述べられた。最後に入学生代表として阿比留智恵さんがこれからの抱負を述べた。
 
2. 共通科目
 東京女子医科大学では、各自のパソコンを使用しての情報処理、文献検索システムを用いての文献講読、教育指導計画案作成など、訪問看護実務の中では経験できない科目や、対人関係、看護管理、看護倫理など、これまでの実践と結びつけることにより新たな視点を得られる科目などを通して、認定看護師としての活動のもっとも基礎となる学習を深めることができた。
 
3. 専門基礎科目
 専門基礎科目では、訪問看護概論、訪問看護対象論、在宅ケアシステム、在宅医療概論など、訪問看護の専門性の基礎となる制度や報酬、理論といった知識を学んだ。これまでの実務経験では深く学ぶ機会が無かった制度や理論は、新しく獲得した知識となった。
 
4. 専門科目
 専門科目は、訪問看護認定看護師としての特化した能力を発揮するために、医療機器類を使用した事例、終末期の事例、退院移行期の事例に即したケースマネジメントを学習した。また在宅医療処置については、人工呼吸器、疼痛緩和、輸液、腹膜透析などをはじめとする技術について学び、退院調整についても実践豊富な退院調整看護師により講義を受け、これらは演習につなげられた。
 
5. 演習
 演習は、人工呼吸器関連はNPO法人SRアカデミー、疼痛緩和・輸液・腹膜透析などはテルモ株式会社、退院調整は実績ある3病院の協力を得て実施した。また、救命処置では日本赤十字社千葉支部の協力を得て実施した。演習施設は、千葉県、神奈川県など郊外の施設が多く移動は必要であったが、集中して学習できる環境であった。
 
6. 実習
 実習施設は東京都、埼玉県、神奈川県、奈良県、大阪府にわたる14ヶ所の訪問看護ステーションに協力をいただいた。6週間の実習期間中、利用者宅への訪問看護のみならず、地域の医療機関や教育機関との連携、訪問看護ステーション間のネットワークの実際、地域での教育活動など、様々な経験をすることができた。多くの学生は人工呼吸器装着や終末期など医療ニーズが高い事例を受け持ち、実習施設の指導者の助言を受けながら看護実践を検討した。これらの成果を、ケースレポート発表会で報告し、他の学生や実習指導者からの質疑応答を通してさらに理解を深めることができた。
 
7. 修了式
 平成18年3月29日、青学会館(東京・渋谷)にて来賓の方々の見守る中18名の学生が修了式を迎えた。来賓の祝辞には、診療報酬改定や療養通所介護創設など変化の時期における認定看護師としての責任が多く述べられた。講師の先生や実習施設からも祝電を頂戴し、修了生代表として松井美嘉子さんが今後困難はあっても刺激しあっていきたいと締めくくった。


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