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はじめに
 財団法人日本訪問看護振興財団は、社団法人日本看護協会から出された「新たな訪問看護研修カリキュラム ステップ1・ステップ2」のカリキュラムに基づいて、精神障害者の看護に関する研修会を実施することとした。
 現在、精神障害者を地域で支えるためには保健医療福祉経済が一体となって在宅生活支援チームを形成する必要があり、とりわけ服薬管理等医療の継続を図る在宅医療分野での訪問看護師の役割は重要である。
 しかし、現在全国に約5,500ヶ所の訪問看護ステーションが活動しているが、高齢者看護や医療看護が中心で、精神科領域の訪問看護に対しては一部の訪問看護ステーションしか対応できないのが実態である。
 そこで、訪問看護ステーションで精神障害者の在宅看護を実施するために必要条件整備を理解し、全人的なケア・援助技術の習得と、家族および介護者への指導、他機関・他職種との連携や調整を図ることができる地域ケアコーディネーターを育成し、全国の訪問看護ステーションに配置できることを目的として、日本財団の助成金を受けて研修会を開催した。
 平成17年度の研修内容と実施方法を含めて、研修実施録としてまとめたので、ここに報告する。また、研修を開講するにあたり、講師をお引き受けくださり、ご支援ご指導を賜りました先生方に深く感謝申し上げます。
 
財団法人 日本訪問看護振興財団
事業部
 
精神障害者の在宅看護の現状
 昭和25年、制定の精神衛生法が昭和62年に「精神保健法」に改正され、平成5年には精神に障害がある人や知的障害のある人と並んで障害者基本法の対象として位置づけられた。平成7年度に、「精神保健法」の内容が改正され、精神障害者の社会復帰施策の充実、より良い精神医療の確保、地域精神保健福祉施策の充実等が行われた。それとともに、公費負担優先の仕組みが保険優先の仕組みに改められ、法律名も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」となった。平成11年6月4日に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律」が公布された。平成14年12月に閣議決定された新しい「障害者基本計画」においては、「7万2千人の退職・社会復帰」の目標が打ち出された。平成17年には障害者自立支援法案の概要がだされ、平成18年10月から施行された。
 在宅精神障害者数は、身体障害、知的障害、精神障害の3区分で障害者全体の概数を見ると、身体障害者351万6千人、知的障害者45万9千人、精神障害者258万4千人となっている。これを人口千人当たりの人数で見ると、精神障害者は21人となる。精神障害者258.4万人のうち、在宅の精神障害者は約223.9万人である。その内訳を見ると、20歳未満13.8万人(6.2%)、20歳以上65歳未満148.7万人(66.4%)、65歳以上61万人(27.2%)となっている。平成14年の高齢者率18.5%に比べ、若干高い水準となっている。
 在宅精神障害者の疾患別の内訳を見ると「気分(感情)障害(躁うつ病を含む)」68.5万人(30.5%)、「精神分裂病、分裂病型障害及び妄想性障害」53.1万人(23.7%)、「精神症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」49.4万人(22.1%)、「てんかん」25.1万人(11.2%)となっている。
 訪問看護においては、入院治療から地域生活へと精神保健医療福祉の重点が移行しつつある現在、精神科訪問看護は精神障害者の地域での生活を支援する事業としての期待が大きい。
 診療報酬上、精神障害者を訪問して看護・指導する場合は、在宅患者訪問看護・指導料でなく、精神科専門療養の精神科訪問看護・指導料として算定する。精神科訪問看護・指導料(I)は、患者を診察した精神科医の指示を受けた保健師、看護師、作業療法士または精神保健福祉士が入院患者以外の精神障害者またはその家族を訪問し、看護また療養上必要な指導を行った場合に週3回を限度として算定する。また、グループホーム等の入居者も訪問看護を受けることができる。グループホームまたは医師もしくは看護師の配置を義務づけられていない精神障害者社会復帰施設を訪問し、入所している複数の患者またはその介護担当者等に対して同時に看護または社会復帰指導を行う場合には、精神科訪問看護・指導料(II)を週3回まで算定することができる。なお、平成16年診療報酬改定により、精神科訪問看護・指導料における訪問の評価を行ったものに対する加算が始まった。
 さらに、平成18年度改定では、退院後初期における訪問回数上限の緩和が検討されている。このように精神科訪問看護は、精神障害者地域ケアの軸となるサービスとして位置づけがすすんでいると考えられる。
 
領域別修了認定証発行研修要綱
1. 目的
 訪問看護におけるジェネラリストの領域別の看護実践能力をたかめ、質的向上を図るための人材育成を目指す。
 
2. 対象者
 国家資格免許取得後に通算2年以上の訪問看護領域の実務経験を有すること。または、それと同等以上の実務経験(所属・地域看護従事等も含めた業務内容)を有し、それを所属長が証明すること。
 
3. カリキュラム
1)1領域60時間(4単位)以上とする。
2)内訳、講義30時間+演習・実習30時間とする。
3)カリキュラムの基本的考え方
(1)講義は15時間を1単位とする。
(2)1時間は45分とする。
 
4. 研修方法
1)集中型研修
(1)講義・演習は集中講義として行う。
(2)講義30時間を4日間
(3)演習12時間を2日間
(4)前期研修3日間・後期研修3日間とし1年以内に履修とする
2)課題実習
(1)課題実習18時間
(2)課題実習は前期研修終了後、後期研修開始前までに、課題実習レポートを作成し提出する。
 
5. 修了認定
認定修了書発行の選定方法
(1)講義・演習は原則として欠席はしないこと。
(2)課題実習レポートが合格点(60点以上)であること。
(3)勤務証明書を提出すること。
(4)領域修了課題レポートが合格点(60点以上)であること。
(5)前期・後期と分散して開講した研修の場合には、同年度の前期・後期の研修修了者。
財団法人 日本訪問看護振興財団
 
訪問看護研修の新たな枠組み
(拡大画面:144KB)
資料:社団法人 日本看護協会
「新たな訪問看護研修カリキュラム」ステップ1・2


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