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 それから、反抗的な少年に対する対応ですが、これはきちっと対応しなければいけません。もし、皆さんの注意に対して暴力で向かってくるような子がいたら、警察へ110番通報してください。警察と一緒にその子には対応する。それはうやむやにしないでほしいと思います。
 次は、こういう言い方をすると反感を持つよという事例です、「はい、名前、住所」と高飛車に言うと、ほとんどだめです。「こんな時間に何をやっているんだよ」とか「何を言っているんだ、子どものくせに」等、そういうことを言うと絶対にだめですね。口をつぐんで、一切話をしてくれなくなります。「おい・こら」的な言葉を使うと子どもは心を閉じてしまう。
 逆に、こういう言い方をすると効果的ではないかというのは、本人が自慢することをほめてあげる。言葉遣いも相手と合った言葉で話す、ばかていねいな言葉を使う必要はありません。子どもに合ったような言葉遣いで結構です。それから、注意だけではなくて、先ほどお話ししたとおり、少年が興味を持っていることを聞いたり、ほめてやったり、励ましてあげたりする。
 それから「その他のポイント」になりますが、一度注意した少年については、次に見かけたときは、また声をかけてあげる。例えば路上に座っていたら、どうしたの、具合が悪いの、お腹が痛いのと心配してあげる。いやいやと行ってしまうと思いますが、次に会ったらまた、「この間のきみだね、どう。今日は大丈夫?」と、1回見て注意した子どもには必ず声をかけてあげる。そうすると、このおじさんは僕のことを覚えていてくれたんだ、親ではないけれども裏切れないなという気持ちになってきます、ぜひ、自分が注意した子どもがいたらまた声をかけてあげてほしいと思います。
 それから「若者の言葉」と書いてありますが、若者の言葉をいろいろ書いてあります。我々も少年補導をやっておりますと、いろいろな若者の言葉でしゃべることがあります。例えば、たばこは何を吸っているのと聞くと、マイルドセブンなどと言いません。マイルドセブンであればマイセンで、マルボロ・メンソールライトはマルメラと言います。例えば、顔を真っ黒にしている子がいます。ガングロやヤマンバですが、ああいう子にだいぶ焼けているね、どうしたのと言うと、日サロヘ行ったと言います。ヒサロってどこの国だろうとか思うと、日焼けサロンに行っているということで日サロと言うらしい。
 そういうことをわかっていると、そう、週に何回行くのとか、1回いくらぐらいかかるのとか、そういうことを聞いていくと、喜んで話してくれるようになります。お父さんは何をやっているの? リーマン。これはサラリーマン、会社員です。そこにいろいろ書いてありますので、それを参考にしていただければと思います。また皆さんのお子さんがいればそれで、こうなんだねということで話が合うかもしれません。
 それから「非行少年の発見活動」ということですが、まず犯罪者を皆さんが見つけた。どうするか。現行犯人で皆さんが逮捕できる状況であれば、これは逮捕してもいいと思います。一般的には110番をしていただくことになろうかと思います。それから不良行為、たばこを吸っていた等。自分が注意できる少年であれば、そこで注意すればいいと思います。こちらは1人、2人しかいなくて、相手は15人も20人もいた。これは無理をしないで110番していただくか、地元の警察の少年係に電話して来てもらって一緒に補導していただきたい。
 次に、少年のたまり場を発見したら、是非、少年係のほうに通報していただきたい。私たちも少年のたまり場はどこだろうと見ていますが、やはり漏れがあります。皆さんの目で、多くの人の目で見ていただくと、新しいたまり場を発見することができ、効果的な補導活動を行うことが出来ることになります。皆さんの中で、110番をしたことがある方はおられますか。110番した方はだれもいませんか。わかりました。事件、事故も同じですが警察署に電話をして、交換を通して少年係り等につなぎますと時間がかかりますので、緊急の場合には110番をしていただければと思います。110番しても何も怖いことはありません。聞いてくることは、「事件ですか、事故ですか。」消防だったら、「火事ですか、救急ですか。」あとは見たままを言っていけばいいわけです。
 あと東京の場合、場所がわからないという場合には、信号に書いてある番号や電柱に書いてある番号を見ます。交通標識には番号を記入したテープが全部張ってあります。その番号を言うと、場所が全部わかるようになっています。もし皆さんが都内で場所がわからないときは、標識のテープの番号を言えば、その住所が自動的に出てきますので参考にしていただければと思います。
 
<渋谷センター街の実態>
 最後に、私たちが活動している渋谷のセンター街における少年環境の実態ということでお話しさせていただきたいと思います。その前にこれを回して見ていただきたいと思います。皆さんはセンター街というのを聞いたことがありますか。渋谷のセンター街からと、よくテレビで放送しています。今でも、マスコミ等のカメラが3台、4台と入って取材していることがあります。逆に、それでテレビに出たくてセンター街に来る若い子もいます。
 渋谷地区は東急の109ビルをはじめ、多くの若者ファッションの店があり、流行ファッションの発信地となっております。ということで、若い女の子があそこに多く集まってくる。それを目的に、また若い男たちがナンパしに集まってくる。そういう街です。ですから、あそこは本来不良少年の街ではなくて、流行ファッションの発信地なんです。決して不良少年の集まる怖い街ではないということをご理解ください。
 また、渋谷のセンター街というのはだいたい、東京ドームと同じくらいの広さになります。この中にカラオケ、インターネットカフェ、プリクラ、ゲームセンター、それから脱法ドラッグ、ブルセラ、生セラといったものの店があります。
 このセンター街では、先ほどお話ししたとおり地元の子はほとんど補導されません。センター街で補導される子どもたちというのは、都内が56%、他府県が44%です。男女別では女の子が多く54%、男の子は46%となっています。
 次に、インターネットカフェなんですが、インターネットカフェに入ったことがある方はおられますか。まんが喫茶です。すごいですね。まんが喫茶というのは、昔の歌声喫茶だとか、○○喫茶ではなくて、そこに行くと入場料を払ってインターネットは使い放題で、一晩そこで過ごせるわけです。写真を回していますが、夜は6時間1,000円でいられます。ジュースなどは飲み放題。シャワーなども、別料金で300円を払うと使えます。そうすると、家出してきた子どもでも、1,000円あればそこに一晩いられるわけです。今、写真を回していますが、シートもリクライニングシートだとかペアシートなどいろいろなシートがあります。そうことで不良行為が行われやすくなっている。東京都では昨年、青少年育成条例を改正しまして、カラオケやインターネットカフェ等においては18歳未満の青少年は午後11時以降入店させてはいけないと規制されました。入れたら処罰の対象にしているわけです。
 それから年少者の被害事案ということですが、渋谷では一昨年に、複数の小学生がいい仕事があるよと騙され、港区内にあるマンションに手錠をかけられて監禁されていた。また、今年は、銀行員が小中学生売春クラブ営業ということで、渋谷で声をかけた小学生に売春をさせていたという事案が発生しております。渋谷の街というのは、確かにファッションの街で楽しいこともあるけれども、一歩間違うととんでもない落とし穴がこの街にはあるんだということにもなります。ですから、皆さんの親戚の子、知り合いの子にも、渋谷に行くのはいいけれども、そういった危険な一面を持った街であるということも指導してほしいと思います。
 
<その他の健全育成活動>
 それから、その他の健全育成活動ということでご紹介させていただきます。まず「スクールサポーター制度」についてであります。これは非行や被害を防止するために、警察官のOBを再雇用し、各学校を訪問させています。そして非行防止や被害防止等について学校との連絡に当たるという活動をやっています。スクールサポーターは、年間多いところで10回以上同じ学校を訪問しますから、先生、教頭先生、校長先生の顔も知れてくる。そうすると、顔の見える話で「実は」という話が出てきます。この「実は」の話から、学校内の不良グループの解体や荒れた学校の建て直し支援等を実施した事例もあります。
 次に「セーフティ教室」、警視庁では子どもたちが被害に遭わないため、また非行を起こさないための教室「セーフティ教室」を全学校で開催することとしています。どういうことかというと、小学生の場合には、例えば知らない人にはついて行かないとか、大きな声を出すとか、逃げるだとか、高校生の場合には、例えば悪いことはしない、たばこを誘われたら、こう断る、「こういうふうに誘われたらこうやって断るんだ」ということを警察やスクールサポーターが小学校、中学、高校に行って指導します。
 「サポートチームの結成」と書いてありますが、これはいろいろな問題を抱えている生徒がいます。こういう少年に対して、警察、学校、教育委員会、児童相談所といった機関が連携して、この子を立ち直らせるためにどうしたらいいかということについて連携して取り組む活動という事です。
 最後に「児童生徒の健全育成に関する警察と学校との相互連絡制度」と書いてありますが、これまでは、例えば警察で少年を逮捕しても、学校には連絡していませんでした。これでは、学校が何もわからない、指導ができないということで、昨年警察と教育委員会が協定を結びまして、「相互連絡制度」を発足させました。我々も事件捜査を通じて再非行防止を図っていきます。学校も、自分のところの生徒ですから、教育的な指導により再非行防止を図り、少年の健全育成を図っていくということです。
 昨年5月に発足しまして本年7月末まで、全部で約2,400件の連絡を実施しています。逮捕したもの、虞犯として送ったもの等です。2,400件のうち1,400件が万引き事案となっております。中には、万引きを犯罪と思っていない子どももいるし、親御さんもいます。「お金を払えばいいんでしょう」、「弁償すればいいんでしょう」、「うちの子をなんで泥棒扱いするのか」と抗議してくる親御さんもいる。
 実際、私たちが扱った事例を見ると、例えばある高校生が○○商店に行こうと言う。今日は帰りに○○商店に寄っていこうじゃないかというと、それは万引きをしにいこう、万引きをやりに行こうということなのです。その店はどういうことかというと、絶対に、捕まえても警察に通報しなくて本人に弁償させます。金を持っていなかったら親を呼んで弁償させます。警察に通報して事件にすると、そこの店員さんも3時間も4時間も拘束される。だからお金を弁償させればいいんだということです。そういうことが続いたため、変な表現ですが、その店は地域の少年達の「狩り場」になってしまいました。警察から何回も説明し、棚卸をやったら相当の損失があることがわかって、以後は全部警察に通報するようになりました。
 そうすると、あの店に行って捕まったら、今度は警察に全部通報されてしまうということになるともう行きません。そこで万引きをする子はほとんどいなくなりました。もし皆さんが県に帰りましてそういうお店がありましたら、これは温情だと思ってやっているかもしれないけれども、少年達はそうは思いません。金さえ出せばいいんだということで、どんどんエスカレートしていってしまう。そういうことになりますので、よろしくお願いします。
 これまでは、非行を犯した少年の保護者は「これは学校に連絡しますか」と言うわけです。今までは「学校に連絡しません」という回答でしたが、今は「学校に連絡します」と言います。そうすると親も、学校に連絡されるんだったら自分から先に言ってしまおうということで、だいたい親御さんが学校に行って、うちの子どもはこういうことをやり、警察の取り扱いを受けましたと言いますので、学校の方でも指導がしやすくなります。この協定は、生徒をクビにしてしまえばいいという話ではない。そうすると子どもの健全育成につながらないわけです。クビにするのではなくて、教育の場を通じていろいろな指導をしてもらうという協定です
 時間となりました。渋谷はこういった街、警視庁ではこういった活動をやっているということで話をさせていただきました。今後の皆さんの活動の参考にしていただければと思います。これで終わりにさせていただきます。 (拍手)


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