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 これは読書です。2年目の先生です。丁寧に、それもべらべらと話しては駄目です。「こちらにおいで。先生が手の届く所においで」と。そして、そこで輪になって本を読んで聞かせてあげる。そのことが子供たちの情動のためにも、落ち着きのためにも、あらゆることにものすごく効果があるということは証明されていることです。
 これは異年齢集団活動。これも、一人っ子だとかそういう子供たちはばらばらです。ほとんど人間は年を取っている人との触れ合いのない時代になって参りました。しかし、うちの学校は仲良し班グループを赤で22、白で22というかたちで作って、1年から6年まで小グループを作ります。そして、朝の遊び、仲良し遠足とか仲良し給食、仲良しの遊ぼう会、仲良しの清掃ということで組んでいきます。
 あるゆる意味での仲良し班という異年齢集団活動をやることによって、子供たちは育って参ります。それはだれが育つかといったら、1年生はもちろん6年生に面倒を見てもらって育ちます。しかし、5、6年生は面倒を見て育つのです。面倒を見れば見るほど子供は育っていきます。面倒見られれば見られるほど子供は安定します。1年生、2年生は本当に喜んで頼みます。勉強が本当にできない、この子は何の取り柄もないという6年生の男の子が、1年生の前では必死に顔を真っ赤にしながら本を読んであげているのです。その真剣な姿、それは脳の前頭前野を活性化させます。夢中でやっています。そういう大変にいい活動が続きます。
 これは一緒に遊んで子供は仲良くなります。一緒に食べて仲良くなるのです。一緒に仕事をして仲良くなるのです。それ以外に仲良くなる手立てはありません。そういうふうにして子供たちは仲良くする。これは第1回目の、一番最初です。「仲良し遠足」と書いてある。
 これは碁です。囲碁はすごいです。うちの学校の囲碁については特筆すべきものです。囲碁の教育的な効果というのは計り知れません。うちの学校は、全面1ページで新聞にも出ていたり本に載ったりしています。本当に多様な問題を抱えている子供が囲碁の活動を通して生き返ってきている。どんどん生き返っていますから、これも大変なことです。全校の3割ぐらい囲碁を何段のかたちで打つということ。「クリタさん、何人でした?」と昨日もその担当の先生に聞いたら、4月以降で、延べで言ったら1,200人です。1,200人が囲碁室に来たと。そういうふうに言っていました。ですから、これは大変な実践だと思います。
 これは祭りです。祭りというのは人間関係を育てるうえで極めて大事。こういう所で祭り嫌いの子供は大体ろくでもない子供が多い。(笑い)祭りに出るような子供たちがいい。「祭りに行ってらっしゃい」と言われるような家のお母さんがいい。それから、町会に入らないような家は大体駄目です。町会に入って役割を果たせるような家の子供がいいです。これは町会の祭りです。学校の校庭を開放しないでくれと言っています。僕は校長になって全部開放です。祭りの山車をやるのに、そういうのがなかったら困るでしょう。それを今までやらないです。休みだからといって校長が寝たがっていたら駄目です。校長は休みも何もない地域の教育の責任者ですから、「年中無休」大変名誉だと僕は言っています。(笑い)
 こういう農園がある。これは1,100平方メートルぐらいある。ここでは蛇も出るし、バッタも出るし、いろいろ出るのです。迷路の中で走り回っています。探検隊を作ってやっているのです。2、3日前からサツマイモの収穫ですごかったです。サツマイモだけではない。夏はみんなトウモロコシとかトマトとかピーマンとか、こういうものをどんどん子供たちが作って、子供たちに食べさせてあげます。柿なんかでもみんな僕が取って子供たちにあげる。1年生には必ずあげて、6年生にもあげる、余ったら2年生にもあげるというかたちで全校でいただきます。(笑い)
 こうして作る、育てるということはものすごく大事です。これは総合的だから大変なのです。これは本当にいいかげんなことをやっているのです。しかし、土と親しみ、作物を育てるという経験は、子供の心をゆっくりとじっくりと育てて参ります。総合的という取り組みをしたけど、それは素晴らしいものでした。このように米作りもやりました。写真はあるのかな。米は88回手を掛けるというのですが、そういうことをやらなければ駄目。米は横着な先生がやっているとみんな枯らしてしまう。(笑い)横着な先生が多いと物作りは本当に駄目です。
 これは命のことです。今までのところは大体、辺縁系とか側頭葉なんかを刺激しているものです。こういう活動になってくると、大脳皮質、新皮質という所の活動を非常に刺激します。命の問題というのは、生き物ですから、当然、情動の問題も出てきますけれども、授業を動物の授業として形成する、構成するという場合には、また先生が必死になってプランを作りながら進めて参ります。
 このように、うちの学校は、道徳だけではなくて脳科学の知見に基づいた心の教育の実践研究ということで、研究発表を致しました。今年もやります。ですから、いつも脳科学の知見と現場の実践値。今日、有田先生に講義いただいたのは宝の山ですから、それを僕は学校に帰って、教頭と一緒にそれを更に整理しながら生かしていこうと考えるわけです。そういうふうにしてやってください。
 これは、森教授がうちの学校に来た時の写真です。全員に公開しました。子供の授業もしました。職員研修もしました。ありとあらゆることをやっていただきました。今年もまた来ます。こちらは13人大学院生が来てその研究をやっております。これは、Hensch,Takao(ヘンシュタカオ)先生。理化学研究所の先生ですけれども、お世話になり、またいろいろなことを見させてもらっている。
 これは、特別支援の教育です。本当に物覚えが悪い、すぐに忘れやすい、粘りはない、この子は本当に取り柄がないと言われるような子供たちもかなりいるわけですが、教育の取り組みの中でほとんど改善する。改善しなかった子は本当にいません。100パーセント改善するのです。本当の話です。
 この子は廊下で夏休み補習をしています。廊下で補習をします。ある先生は家庭科室で、ある先生は自分の教室でやるのもいるけれども、全部の先生が自分のクラスの補習をするのです。最初、僕は夏休みも26日間補習をしたのです。26日間補習すると夏休みはほとんどないです。朝、ラジオ体操から始まって、ラジオ体操が終わって帰ってくると農園の草むしりを1人でやるのです。これは人が来ないうちに早くやらないと駄目だから。それが終わったら今度は補習をやって、クラブの指導に行くということで、火のようになって動くわけ。
 先生方は、最初は何人かしかいなかったけれども、今では全部の先生方に補習をやっていただく。そして、教頭先生も、何と、体育で駄目な子供たち、休みの子供らはみんな職員室で補習をしている。体育で休みの子は職員室で教頭先生が補習をしています。そういうふうにやりながら、多重多層の教育計画を作る。多重多層というのは、脳科学の原理としてはものすごく大事な原理になります。これは澤口先生がHQのイギリスの脳科学を見て言っていることですので、ものすごく大事です。ばらばらは絶対駄目。そして、仕事がつながっていかないのは全然駄目。キレるのも駄目、ばらばらは駄目で、多重に重ならない仕事は教育効果が上がりません。そう思います。
 これも、問題のあるフィリピンの子、ほかの子は親からある意味でやられている子供ですけれども、法務員が一生懸命面倒を見ている。こういうことがごく当たり前。全部の教育スタッフがこういうふうに取り組みをやっています。
 アスペルガーの子がいるのです。この子はお母さんが随分熱心だけれども、随分苦しんできた。このアスペルガーのMくんなんかは素晴らしい成長をしました。今年の運動会でもさっそうと走りました。通学班の班長をやるようになりました。ダンスのやり方が見事だ。この中で優勝したのです。そういうふうに、教育が脳科学の知見ということを本気になって、それを学問値と実践値を融合させることによって、これからの教育の展望が開けると僕は思います。
 もうこれで退職です。この年になると退職の年になってしまって本当に張り合いがないけれども、辞めるつもりは全然ないということで・・・。(笑い)人事の調査で僕は退職の所に○を付けなかったのです。「なぜ付けないんだ」と言うから、「俺は辞めるつもりはない。まだ仕事をしたいんだ」と。「だけど、桑原くん、法の定めだからそういうことを言うな」と。(笑い)だけど、本当に辞めるつもりはありません。何かのかたちで子供の、実際の現場の教師になって関わっていくということです。それでは長々失礼を致しました。(拍手)
 
おわりに
(高橋史朗)皆さん、いろいろなことをお感じになっただろうと思うのですけれども、研究者と教育者が連携していく場をぜひ今後続けていきたいと思っております。実践家と研究者の両方が発表して、もう少し相互に議論する時間を今後は確保していきたいと思っております。
 今回、痛感致しましたのは、もう少し研究会とセミナーをスピードアップしていく必要があるかと思っております。第1回目は「ゲーム脳」というキーワード、今回は「セロトニン欠乏脳」というキーワード。次回はぜひ澤口俊之先生をお願いしまして、今日も人間性の脳科学という話がありましたが、「HQ」という本を2冊お出しになっております。ヒューマニティークオーシャント、人間性・知能をキーワードにぜひ研鑽を深めたいと思います。
 あるいは、熊本大学の三池輝久という先生が慢性疲労症候群という立場で不登校の問題について医学的なアプローチをしておられます。今日は養護の先生方もたくさんお見えいただいておりますけれども、従来のアプローチから一歩進んで、この脳科学から不登校にどう対応していくかを三池先生は不登校を三つの段階に分けまして、どうかかわったらいいかを提唱しておられます。それもぜひ近々作りたいと思います。最近、川島隆太先生は音読・暗算ということを盛んにおっしゃっていますが、そういう見地からのお話も伺いたいと思います。
 先程、今泉課長補佐から軽度発達障害の問題が出ましたが、「脳と障害児教育」という本があります。これはジアース教育新社という所から出ているのですが、養護学校の先生が中心になって、障害児教育の現場に脳科学をどう導入しているか。大変説得力のある本が出ております。そういう方にも来ていただいて、ぜひ今後深めて参りたいと思っております。
 また、今日は、美しい日本人の心を育てるということをテーマにしておられる先生方もたくさんお見えいただいておりまして、今月、幼稚園で茶道をしているときの脳波を測定するということをお願いしております。森先生に福島まで出ていただいて、9人でやっていただくのです。あるいは全日本きものコンサルタント協会の方もお見えいただいていますが、和装をして礼法しているときの脳波を測定する。そういう教育現場での実践をどんどん進めていきたい。
 この感性・脳科学教育研究会はゼンセン同盟で定例的に定例会をやっておりますけれども、埼玉でも、今日お話しいただいた桑原先生を中心に小・中・高の校長先生が発起人になっていただいて、「埼玉感性・脳科学教育研究会」も7月にスタートしております。ぜひ全国に広げて、実践と研究の合流を東京、埼玉から全国に発信していきたいと思っております。今後また皆さんにいろいろとご連絡を致しますので、どうぞ共に研究・実践を深めていければと思います。







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