これがゲーム脳状態になると、前頭前野の働きが非常に悪くなるということがこのあとに出てきます。これがゲーム脳の例です。小学校1年から大学1年まで、3、4時間ゲームをやってきた例です。ゲーム中は、ほとんど視覚野、手の領域、こういう頭頂連合野的な場所はちょっと働きますけれども、言語系の、こういうネットワーク系は全然働きません。正面から見てみますと、左脳、右脳の前頭前野はほとんど働いていません。韓国で、これを86時間やって、最後に死んでしまった人がいます。3日間ゲームをやって、最後、死んでしまったのです。中国では、8時間ゲームをやって死んだ高校生がいます。日本では、まだ死人は出ていませんけれども、そういうふうに前頭前野が機能しなくなります。
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ノーマル脳と認知症患者のα波とβ波の関係 認知症患者の場合は、β波が低下し、α波と重なる。 図中の矢印はゲーム開始点を示している。 |
このゲーム脳の人に本を読ませる。視覚野は働きますが、しかし言語系のネットワークは働かないのです。形とか色などを処理する側頭連合野の場所はこの辺になりますけれども、脳全体は、あまり活動性はよくないということが言えるだろうと思います。それから、前頭前野はゲーム中、左、右が少しは働いているということです。ですから、読書はそれなりに前頭前野の機能を高めるという効果はあるということです。
それから、漫画の本を読んでいるときの動画です。先程、よく前頭前野が働いていた女子大生の例ですが、同じ被験者でも漫画の本を見せると、ほとんどの脳部位が働かなくなります。こういう状態です。ですから、漫画はたまにはいいんですけれども、大体ゲーム好きの子どもはゲーム、漫画本、攻略本ですから、脳にほとんどいいことはないということです。
あと、蛍を見ている動画を見せます。3歳の子どもが、生まれて初めて蛍を見た時の動画です。いかに幼児でも、このように自然の蛍を見ることによって左右の前頭前野が活性化します。ですから、自然と触れ合うということは、子どもの脳にとって非常にいい効果を及ぼすということが考えられます。
これは、開発した脳波計で、おでこに電極を付けてゲームをやっている最中のデータです(図13)。これはノーマル脳、高校3年生の女の子です。ゲーム経験なしで、テレビもほとんど見ない。上がベータ波です。下がアルファ波。3秒ごとに積分するという方法を採っています。矢印のところでゲームをさせるんですけれども、ほとんど変化しません。要するにこの被験者は常に右手、左手というふうに前頭前野が働いているのです。
下段は78歳の女性の例です。認知症ですけれども、完全にベータ波が低下しています。「お年は何歳ですか」とお聞きしますと、「18歳です」と答えます。実際には78歳ですけれども、もうそれ以上記憶がないんです。ただ、計算だけは、長谷川式スケールを使って100から7を引いていくと、最後までできます。「職業は何をやっていましたか」と言ったら、「経理をやっていました」と、それだけの神経回路は働くのです。それ以外は、もう全く駄目です。お会いして5分もすると、会ったことすら記憶にない方です。
これを見て分かりますように、ベータ波が低下してアルファ波と重なっています。これが特徴です。これは今まで、約1,000名近くデータを採っていますけれども、それぞれの例では10名のデータを重ね合わせています(図14)。Aはノーマル脳タイプです。ゲーム経験はほとんどない人です。これらのタイプはゲームをさせても、ベータ波の低下を示しません。
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前頭前野のα波およびβ波の積分波形(3秒毎)の出現様式から分類した4タイプ ノーマル脳(A)、ビジュアル脳(B)、半ゲーム脳(C)、ゲーム脳(D) ※:ゲーム開始、※※:ゲーム終了 |
Bはビジュアル脳タイプです。月に1、2回、小学校、中学校時代ゲームをやった経験があります。ですから、安静状態はノーマルと変わらないんですけれども、ゲームをやると一気に低下してしまいます。止めると直ぐに元の状態まで戻ります。これをビジュアル脳タイプとしたのです。
Cは半ゲーム脳タイプで、週3回ゲームをやってきた人たちです。小学校1年から大学2年、3年までゲームをやってきた人たちです。前頭前野に関しては、安静状態で、もう既に認知症と同じ状態になっています。ゲームをやると更に低下します。
Dは、毎日のようにゲームをやってきたタイプです。少なくとも週に5日以上です。ベータ波が、完全にアルファ波の下に来ています。これを「ゲーム脳」と名前を付けたわけです。ベータ波がアルファ波の下に来てしまっています。
まず、半ゲーム脳状態になりますと子どもはどういう状態になるかというと、笑わない、しゃべらない。それから週に何回か忘れ物をする。こういう状態になれば、まず半ゲーム脳と考えてほぼ間違いありません。それから、しゃべらない、笑わない、そして認知症の人のようにボーっとしている。そういう状態が出て、突然キレる。わめいたり、壁をけったり暴れる。こういう状態はゲーム脳と考えてよいと思います。
このように、4つのパターンに分けることができます。少なくとも、Cのように、安静状態でベータ波がアルファ波と重なった状態の子どもたち。すなわち半ゲーム脳状態の子どもというのは、大体学校の教科書を、5分か10分しか集中できないです。それ以上は無理です。それは脳のネットワーク、ワーキングメモリーが働かないから無理なのです。ですから、それを良くしようと思うなら、テレビを見る時間を減らした方がいいです。
例えば、これはビジュアル脳タイプです(図15)。2分間ゲームをさせたわけです。それを2回。ゲーム中は、ベータ波が低下してアルファ波と重なります。これは30分ゲームをさせた例ですが、30分で「はい、やめてください」と言ってもベータ波は元には戻りません。ですから、30分ゲームをしたあと勉強をしても、これは意味がないんです。もう、早く寝たほうがいいんです。ただ子どもは、そのあと「勉強しろ」と言われても子どもは、ただ文字を見ているだけで、脳の神経回路は働かないのです。ですから、学力は低下してしまうと思います。ましてや1時間やったら、これは話にならないということです。
ではどうしたらいいのか。幼稚園児は基本的にはゲームをさせないというのが僕の考えです。子どもがどうしてもというなら、小学生、中学生に関しては15分まで。15分やって、そのあと3倍本を読んで、感想文を手書きで書かせる。それができなければ駄目と。そのようにしつけをしなければ、毎日1時間させていたら、中学に入ったら左脳も働かない状態になって、ゲーム脳になって、本を読んでも覚えられない、そして学力低下によって引きこもりも起こってくるようになる。そして、怒れば家出をする。まあ殺されないだけいいですけれども。(笑い)そのように、動物的になってしまうのです。理性は利かないですから。
そのときは、やはり小さいときにきちんとしつけをするということが大切だと思います。私は、いろいろな父兄にお会いしました。「中学生で子どもが家出をしてしまった」、「高校生で家出をしてしまった。どうしたらいいでしょう」。結局聞くと、好きなだけやらせていた、そのツケが、本当は子どもが悪いわけではないのです。ですからそれは、ゲームが、脳にどう影響しているかというのが分からないですから。そういったことで、最後は困ってしまう状態になってしまいます。
そういうことで、ゲームは休日で30分、そして、1時間半読書をさせて感想文を手書きでさせる。大体書けないんです。大体見る本は漫画しかないですから、小説を読ませても理解しません。ですから、そういう場合はページを1ページ、簡単なものでいいですから拡大コピーをして読ませて、どういうことを書いているか、会話から始めるといいと思います。そして、ゲームをやった後、まず15分で3倍読書をしていれば、絶対にゲーム脳になりません。子どもは、ゲームがつまらなくなってきます。ですから、それをやらないとあとで自立できない、将来計画はなくなります。そういう子どもに育っていってしまいます。ですから、そういったところは注意されたほうがいいと思います。
これは9歳の女の子の例です(図16)。完全にゲーム脳です。本来、ベータ波はアルファ波の上に位置しているべきものが下に来てしまっています。人の話は一切聞きません。自分の言いたいことだけです。毎日3時間、ゲームをやっています。幼稚園からやっているわけです。小学生3人で、果物の名前を記憶して、それにさらに足していく記憶ゲームをさせると、この9歳の女の子は、一回りで全部忘れてしまいます。「あ、忘れちゃった」と大変な騒ぎになるのです。ですから、30秒、1分もしないうちに、前のことが記憶から消えてしまいます。
このような子どもは学校に行って、先生の話を聞いても、1分前に何をしゃべったか分からなくなり授業についていけません。そうすると、教室から出ていく、うろうろするのです。そういう子どもが現実的に、たくさん出てきているわけです。大学生でも最近、「言っていることが分からない」、そういう大学生が現実にでてきてしまっているんです。ですから、「黒板に書いてください」と言うんです。同じことをゆっくりしゃべっているんですけれども、書けないんです。要するに、記憶をとどめるということができないのです。つまりワーキングメモリーが働かないのです。
下のは男の子の例で、11歳ですけれども、ベータ波の低下がみられます。やはり、3時間ゲームをやっているということで、これもゲーム脳です。顔は締まりがなく、しゃべるのも非常にスローです。ゲーム大好きということで、お母さんも、あまりきちんとしつけをしていないという感じでした。
これは、毎日7時間ゲームをやっていた女子大生の例で、3年生です(図17)。大学生ですからアルバイトもしていますけれども、ゲームセンターです。徹底してゲームをやっているのです。人との約束は100パーセント守りません。言ったことは5分もすると消えてしまいますから、次の日に電話をすると「えっ、何でしょう」「えっ、12時に来てくれるっていう約束だったけど」という話をすると、「えっ、そんな約束しましたっけ」。こうなってしまうのです。ですから、そういう意味から、もう認知症と同じで、ワーキングメモリーが働いていないと思われます。顔は無表情です。4年になったら大学に出てこなくなって、連絡が付かなくなってしまいました。
RPGで回復しなかった例
(毎日約7時間15年間のゲーム歴)
これはRPG、人を殺していくゲームソフトですけれども、本来これは、ノルアドレナリンとかドーパミンが出て、普通のゲーム脳の場合でもベータ波の上昇がみられるのですが、この大学生の場合には上がらないでのす。ですから、そういう意味ではかなりむずかしい例だと思います。
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