日本財団 図書館


4.2.7 パネルデスカッション
テーマ:地域活動の広がりへの期待
パネリスト:森野栄一、鯉江正雄、下津公一郎、小山恵子、猪澤也寸志
コーディネーター:大塚万紗子氏 IOI日本事務局長、文部科学省科学技術・学術審議会海洋開発分科会委員
 
大塚 鹿屋、宇土、佐賀の伊万里の海岸海浜清掃と工作教室に参加させて頂きまして、こちらにいらっしゃる下津さん、松本さん、菅原さん、工藤さんと御一緒に活動をしたんですが、皆さん熱心に、子供たちへ楽しく環境教育をされている姿に感動しましたし、感銘を受けました。ゴミというものが能弁に語っているということを実感致しました。海岸にあるゴミを見ているとその辺りにどういう産業があり、どういう海の使われ方をしているのか。例えば、ゴミ拾いをしていると、ゴロッと自転車が転がっていたり、ガラスばかりが落ちていたり。これは何処から流れてきたのか。また何処へ流れて行くんだろうか。
 子供たちもきっとそういった目で海岸清掃をしているのではないかと思いました。外にある色んな道具を見ていただいたと思いますが、常滑の方々が色んな工作キットを作っているんですが、最初は30種ぐらいの貝殻や木片であろうと思っていたら、なんと160種や200種といった種類を集め、しかも山の恵み、里の恵み、海の恵みというものが子供たちに良く分かるように展示されている。その中の材料を好きなように使い工作が出来る。勿論、海岸でも自分たちで好きなものを拾ってきている。海という物を媒介にして、子供たちは山から、里から色んなものを学んで行ける。という非常に良い機会を皆さん作っていらっしゃる。
 パネラーの方を御紹介します。まず、山形県酒田市酒田港おんな港会議の事務局長 小山惠子さんです。地域の活性化の為に次々とプロジェクトをやってらっしゃいます。そして愛知県常滑市観光協会マリナーズ代表の鯉江正雄さんがいらしてます。SOFの菅原さんと、このプロジェクトの基本的なモデルを考えられました。そして鹿児島県NPOさつま代表下津公一郎さん。九州地区でこの活動をどんどん広げて行きたい。綺麗にしたいという夢を持ってらっしゃいます。そして次が、沖縄県宮古島エコガイド教育コンソーシアム代表の猪澤也寸志さんです。環境産業をしながら来れば来るほど綺麗になる宮古島、そして地域のことを考え、島は地球のモデルみたいな場所と頑張っておられる。最後になりましたが、ゲゼル研究会代表の森野栄一さんです。地域の在り方、経済の在り方というものが問われている時期でありますが、地域通貨をとおして、それらを問い直してどういった社会を建設して行けるかを具体的に活動してらっしゃいます。
 それでは、皆さん宜しくお願いします。
 パネルディスカッションでは、今まで御報告にあったような活動をいかにつなぎながら、しかし自立的であって、同時に助け合えるものに出来るかということを語って頂きたいと思います。それぞれ非常に良い活動をしてらっしゃいますが、それぞれ孤立していては勿体無い活動ですので、これを日本の津々浦々の海岸にどうやって広げて行きたいか。またどうやって手を繋いで行けるか。お互いにノウハウを提供しあったり、助け合っていけるのが大切であり、それぞれの地域の持続的な活動として、どうやったら定着させていけるかを考えて行きたいと思います。
 その中で地域の商工会議所であるとか、企業、役所、学校など他のコミュニティとどうつながっていけるか。どうやって一緒に働いて行けるかも考えていきたいと思います。
 ひとつは環境チケット。環境チケットを使いながら、今の経済の仕組みを変えて行く突破口にもなりそうなものでございますし、使っている方々、これから使われる方々にどういう所がやり易く、どういう所がやり難くて、どういう風になっていったら意味が出てくるのかを話し合って頂きたい。次に地域参加、地域社会の中で活動を継続して行くためにはどういう風にしていけば良いか。今までの御苦労やこれからどうやって行きたいかと思うところ。そして、この活動がどうやったら持続的に津々浦々に広がって行くか、ネットワーク作り、共に働いて行ける方法。この3点について話し合ってみたいと思います。
 それでは、まず第一の点として、環境チケットを中心に話して頂きたい。先程は地域の代表としての報告をされていたと思いますが、ここからは自分の自由な発言でお話していただきたい。まず、小山さんからお願いします。
 
小山氏 はい。酒田では環境チケットをやっていないのですが、隣町の鶴岡でやっているNPOグループはありますが、私達の言葉でありがとうを「もっけらの」と言うんですが、そのチケットの名前は「もっけ」と言います。1モッケ、2モッケ。何かして貰ったら「もっけらの」と言ってそのチケットを渡す。貰った人がまた誰かに何かをしてもらうとそれを廻す。循環して行く。基準がすごく広い。どうもありがとう、と言う意味で渡すので掃除をしてもらったり。子供たちがお年寄りにお話をしてあげて、どうもありがとうとあげたり、上手く使われていると聞いたことがあります。酒田でも使ってみたいのですが、庄内と言っても酒田と鶴岡は非常に仲が悪く、先程本間様の話をしましたが、「本間様には及びも無いが、せめてなりたや殿様に」という歌があるんですけど、非常に町民の文化が強く、鶴岡にある堺港の殿様をナメテかかっている。殿様が怖くない。自分が偉いと思っている。鶴岡の人間は、自分のところは殿様だ。酒田の方が悪い、と思っている。平成の時代になっても仲違いをしている。合併の話になっても、酒田と鶴岡で大きい庄内市になれば良いのに、ダメなんです。気心が分かっているだけに難しい。そのうち酒田でも真似したと言われないようなことが出来るのではないかと思っています。
 
鯉江氏 地域通過の導入と言うのは考えたのですが、実際海にいるとものすごく有りがたいことばっかり、感じてしまって、非常に沢山のものを与えられている喜びというものを感じてしまいます。たとえば、地域通過として考えたら、返すものが自然に無い、比較にならない、とそれをまず、子供に伝えるべきだと思います。地域通過を採り入れることは、重要なことだと思っているんで、今の社会だとか、経済活動を地域通過を使うのは言いのですが、僕の仕事としては、より自然体に、より子供のように、自然の恩返し、自然の素晴らしさをもっとシンプルに考えるべき。ちょっとこちらサイドで割りきって、考えていただくことが非常に上手く行くコツかな、という風に思っているんですよね。
 
大塚 多分、直接的なところでは、「ありがとう」とか「楽しかった」ということだけで十分と言う感じなんだろうという訳ですね。
 
鯉江 例えば、子供たちによく聞くのですが、海のお魚に餌、あげたことがあるか?と。「無い」と。「そうだろ?何もしなくても、どんどん、どんどん、お母さんみたいに育ってくる。その感謝の気持ちを持った方がいいかもしれないよね。」という、やりとりの方が言いと思うし、実際自分たちが自然と係わったり、こどもたちの活動をみていると、そこに感動するんですね。だから、僕は、そこがまずあって、地域通貨の専門家の方からお知恵を拝借して、連動することの方が広がりがもてる。これを一緒にすることによって、僕の場合は、スピードが遅くなるかな、と思ったんですね。
 
大塚 では、その辺はまた、森野さんの方にもうかがってみようかと思います。
 
下津 活動の中で、直接は地域通貨はやっていないのですが、今回環境チケットということで、やりとりを見てまして、それを含めて言いますと、私は、「ゆい」という、昔から言う、「ゆいの心」が地方にも随分沢山残っていたのですが、それが、ここ2−30年かの間に、習慣も変わってきて、そういう中で、この地域通貨というのが、生まれてきたような気がするのですね。その「ゆい」の心を取戻すためのひとつの手段としては、重要なことでもあるし、ただ、非常に入り口をやさしくしないと、その地域の人達がわからない、ということもあるのですね。
 
大塚 ごめんなさい。「ゆいの心」って?
 
下津 いろいろ物物交換する、野菜貰ったら、お返しする、都会にはないんですかね、このやりとりが、田舎でも、随分なくなりつつあるんですね。だから、地域通貨というものが言われてきていると思うのです。今回の、環境チケットみたいな入り口で使い慣れる、「掃除をして、ありがとう。じゃあ、これしてくれたおかげで、工作教室をやったらどう?」というように、子供やお年寄りには入り口を易しくしてあげること。まあ、地域通貨になると随分奥が深いですから、そういったものから、徐々に慣れるということが、必要かと思います。
 
猪澤 宮古島では、SOFの海浜清掃バカンスを2回やったあと、すごいことがおこったんですね。もともと、海浜清掃というのは、役場が商工会とかへ声をかけて、みんな嫌々、たまに1回か2回やるんですけど、実はSOFの活動したあとに、10団体ぐらいのボランティアや老人会、ゲートボールとか、第何期の同窓会など、地域のグループのいろいろなところが、自発的に地域地域の清掃を始めたんです。今僕が宮古島でやっているモデルというのは、全国どこででも観光地だったら使えるのですが、「観光客が来れば来るほど美しくなる」っていうのは、地元のひとにとってみれば、ある意味すごく恥ずかしいことなんですね。
 
大塚 いつもが汚いということですか?
 
猪澤 はい。自分たちの出したゴミを観光客に拾ってもらう、ということはある意味、地域の恥と言えば恥なのですが、やったあとに、いろんな人から声をかけられたのですが、「いやあ、地元がもっとしっかりしないとね。観光客の人がここまでやってくれるんだから。」まして、子供でしょ。宮古の子供たちがやっていますよね。そうなると、年寄りとか、ある程度、社会的な自覚のある方々は、「では、自分たちでもやろうじゃないか」と次々と、週末になると、月曜日の新聞にはどこかで清掃された、という記事が結構出始めまして、このポイントなのですが、「活動」と「運動」のちがいがあると思うんです。「活動」というのはある程度トップダウンで、ある程度資金があって、引っ張る人がいたりしてやることは、今までもあったと思うのです。でも、「運動」というのはボトムアップなので、「自分たちでやらないといけないよ」という気持ちが出て来たときに「運動」につながるんで、そういう意味で、この活動が「運動」に繋がった。で、先程の地域チケットのテーマに繋がるところからすると、じゃあ、海浜清掃しない人は皆だめなのか、という、でも、本当に忙しくて、日曜も働いてても、会社を維持するのが大変な時代なので、だったら、そういう方々は汗はかけないので、だったら、自分たちの不良在庫でもいいですよ、そういう商品を出して、みなさんに感謝。この環境チケットの根底にあるものが、運動だとすれば、それは何かというと、テーマは感謝なんですね。子供たちも自然に感謝してきれいにしていく。観光客もそう。もちろん地域に住んでいる方も感謝。協賛する企業もやはり、感謝なんですね。お互い、感謝のポイントがここに溜まって行くという話なんで、この感謝と言う言葉は、別に宮古島だけに限ることじゃないし、世界共通の言葉ですよね。だったら、これが、僕が今、今日提案したかったのは、例えば、宮古でボランティアで清掃した方々のグループが10組あって、延べ200人いるときに、それを「運動」として纏め上げて行くときに、何か連絡会を作って「一緒にやりましょうよ」という事よりも、例えば、環境チケットを共通でやりませんか、みんなで作りませんか、みんなで協賛会社集めましょうよ、と。どこでやっても環境チケットは共通、はんこも共通、であれば、10団体ばらばらでやっていたのが、20になったり、30になったりしていくうちに、とんでもないものになっていくんですよ。宮古の中だけでもね。
 今回、来た一番の目的は、こうやって、皆さんと人のつながりが出来るので、SOFにお願いしたいのは、紙切れ1枚ですが、よーく考えておかないと落とし穴があったりするわけですよね。それをシンクタンクの力がある訳だと思うのですよ。これ、紙ですが、当然電子キャッシュであったり、ICカードになったり、とデバイス変わって行きますよね。だから、それが、シンクタンクのしっかり考えてもらって、紙から始めるでしょうけど、展望を持っていれば、航空会社とも話しているのですが、航空会社に僕言うんですよ。「皆さんがお客さんを送れば送るほど、沖縄の自然を破壊していますよね。」って。「ノー」とは言えないですよね。実際そうですから。「皆さんが送れば送るほど、沖縄が美しくなるんだったら、そういうものが出来るんだったらやりませんか?」といえば、それは理想ですよね。それが、ひとつの何で統合するか、というと、この紙きれ1枚なんですよね。
 
大塚 その1枚が非常に大きな力を持つようになるんですね。
 
猪澤 これに全部の感謝が集まってくるんで、これを持って島にいくとフグの食べ放題に行けるわけですよ。全部が全部割り引きかもしれませんけれど。すごい夢のある話なんで、知らないうちに、とんでもない人達がこれに終結してくる、それが、「活動」と「運動」の違いだと思うのです。
 
大塚 いままでは環境チケットは顔が見える中で、割りと使われていたのですが、今度は顔の見えないところだけれども、お互いにそれを有効化させていく方法はないのだろうか、ということでもあるわけですね。
 
猪澤 僕も地域通貨は通産省のエコマネーのところから入って、そして、森野先生のゲゼル研究会の話まで、地域通貨から入ったところはほとんど失敗しているような話を良く聞くのですが、最初に地域通貨ありき、ではないのですよね。先に粘り強い、人と人との関係があるところには、昔の日本と一緒ですよね。そこには、そういう粘り強い関係のところに、こういうものが自然発生的に出てくるぐらいのボトムアップの力があったときに成立するんであって・・・。
 
大塚 つまり、そこにちゃんとした力があって、それに乗っかってくる地域通貨ということですね。
 
猪澤 あと、ひとつ、ネットワーク的に言うと、1ヶ所1ヶ所がものすごい粘り強い力を持っていると、それが繋がったときは、お互いもっと強くなる。全体として、群れとして凄い力を発揮してくるんですね。となると、大企業も協力せざるを得ないような状況が出てくるわけですね。
 
大塚 凄く面白い発想だと思います。
 
猪澤 そういう夢は持っています。
 
大塚 森野先生、そういうのはいかがでしょうか?


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION