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4.2.6 地域の海洋環境貢献活動の事例発表
1)「こども地域通貨「タラ」の活動について」
梅田敏文(北海道稚内市教育委員会教育部こども課係長)
 
 稚内市から来ました。教育委員会のこども課で子育て支援係長をしています。こども地域通貨「タラ」の活動についてのお話というよりも、素直に表現すれば、シップ・アンド・オーシャン財団・海洋政策研究所の活動を通して、地域活動のありかたを学んだといったことになろうかと思います。
 稚内市は北緯45度にあり、人口が4万3千人ほどで、北端の宗谷岬から樺太まで43キロぐらいあります。天気のいい日には、島影を望むことができるようなところです。産業的には漁業、酪農、観光、公共事業で暮らしています。最近はロシアとの蟹船などの交易もあり、年間2700隻のロシア船や往復で120便のサハリンとの直行フェリーの運航等により、ロシアの船員や市民が、たくさん街中を歩いてという光景がみられます。
 流氷という言葉に代表されるような寒いところで、幕末にロシアの南下政策に対抗して蝦夷地が江戸幕府の直轄地とされました。幕命で1807年に津軽藩士が230人ほど、北の防人として宗谷に派遣されましたが、厳しい冬を乗り切ることが出来ず、230人の内72人藩士が、野菜不足からくるビタミン不足の水腫症で亡くなるという惨状になった、という記録も残っております。次の年の会津藩士は50人ほどが亡くなりました。特にそのような厳しい土地柄です。それでも、我々の先祖が住みつづけてきたというのは、豊かな漁場と夏場の過ごしやすさと素晴らしい自然があるからだと思っています。厳しい寒さのなかでも頑張って暮らしています。夏場是非、皆さんいらしてください。
 稚内市では、平成14年度より国をあげて取り組んでいる少子化対策の充実、エンゼルプランの推進のために、市長の熱い思いもあって、全国でも先駆的に「こども課」をつくり、特区による「幼稚園と保育所の一元化」や児童虐待や養育困難事例に地域のネットワークで即座に対応するシステムづくり、子育て支援ボランティアの育成、児童館や学童保育所活動の充実と利用促進の手法として子ども通貨「タラ」事業に力を注いでおります。
 これは、遊びのキャラバン隊という活動と連動してくるのですが、これは、タラの証明書ということで、1タラ、5タラ、10タラとあるのですが、これは、市内の7つの児童館、4つの保育所で、元気な挨拶ができたり、下級生の世話をしたり、ボランティアをしたり、と言う時に、ごぼうびとして、タラを上げて、概ね1人100タラ集めたら色々と希望する遊びを企画して、実施する。子供たちの希望をかなえてあげる、というようなことで、できることになっています。「タラ」の名前は地元の高級食材のタラバガニやタラにあやかったものです。「タラ預金」「タラ証明書」ということで、家庭の中での善行、家で手伝いをしたとか、も含めてタラを獲得します。2年やったところで、約1000人のこどもが参加し、現在の通貨量は4万5千タラを出しております。
 タラの中で大きいのは、子供たちが遊びをしたい、ということで希望したときに、海の子なので、魚釣りをしたいとか海岸で遊んでみたいとか、海遊びをしたい子供たちの要望が多いので、そういう時に、海浜の美化活動ということで、結びついています。
 私は、こども課で子育て支援の仕事をしているのですが、私の本業的な部分で言えば、母親がこどもを残し蒸発した、母親が「根性焼き」と称して子供の腕にタバコの火をつけるとか、内縁の男性にこどもが暴力をふるわれているとか、不登校であるとかの児童問題を本業としています。
 私がなぜ、遊びのキャラバン隊というようなことを、民間有志の力を借りてやるようになったかと言いますと、少子化時代の子どもにとって、こども達が地域の多くの人と接する機会を多く作ることが、大事なことだなあと思ったからです。少子化時代で、子供が、地域の中で孤立している。社会というのは、ひとりで生きていくのではなく、皆で活きているんだということを、自然に子供たちがわかっていくようなそういう活動が必要なのではないか、ということで、市民有志と行政が協力し合って、市民活動としてサポートしていっています。こども通貨タラということになると、いろいろキャラバン隊が協力してくれるわけです。
 遊びのキャラバン隊が、実は、平成15年の8月に、シップ・アンド・オーシャン財団と先生方がこられて、海浜美化活動というものをやっているので、是非お手伝いさせてください、ということで、財団の活動に参加したわけです。その中で、いろいろなイベントの方法を勉強させてもらったわけです。
 財団が稚内で海浜の環境保護や美化活動を呼びかけて、参加した子供たちにタラ通貨を応用して、活動をしている写真がこれです。約200人の子供たちがイベントに参加して、遊ぶ機会を得る環境チケット(子供地域通貨タラ)を手にしたわけです。
 具体的にどういうことをやったかと言いますと、海浜清掃をした後に、ペットボトルの中に2−3センチのヒラメの稚魚を入れて、ミニ水族館ということで、自分の名前を書いて、1ヶ月ほど経ったら、前浜に流してください、ということで、やりました。これは、大変好評でした。
 遊びのキャラバン隊でも参加している水族館の人などが協力して、海水族館づくり、ということで、やらせていただきました。生き物を大切にするという気持と、地域の子供たちが、自分達が海を意識して生活する中で、自分達のお父さんたちが沿岸で仕事をしている、ということに気付かせてもらった訳です。
 これは、後の「ほたるまつり」の開催に繋がっていくわけです。
 これは、200人以上参加しています。
 これは、打ち寄せられたガラスビンの破片や、小さい流木などを利用して、海洋工作教室と称して行ったものです。これは、児童館まつりでやったんですが、あまりお金がかからなくて、子供たちに満足感や達成感を提供できるということで、地域の活動に取り入れたいと思っています。これは、稚内の子供たちの作った作品です。貝殻をそのまま利用してくれればいいのですが、子供たちは色をつけるのが好きだったようです。
 私はこどもたちのゴミ拾い、シップ・アンド・オーシャン財団の海浜環境美化活動に参加して、思ったことのひとつとして、稚内は北の町ですが、朝鮮半島や中国、ロシアのビニール袋やゴミが多く混ざっていました。外国のものが打ち寄せられているのをみて、海洋は世界中つながっているんだな、というのを改めて思い、いろいろ考えるきっかけになりました。
 地元でも婦人部の人たちもホタテや昆布やウニ漁がはじまる前に海浜の清掃をするのですが、特に海藻ゴミは、腐れば匂いがして、非常に臭くて、自分達の船が出入するところをきれいにするのですが、なかなか上手くいっていない、というのが現実です。
 話はそれましたが、この経験をもとに、遊びのキャラバン隊では、こども課で発行している子ども通貨タラを利用して、子ども達を海岸で遊ばせてやり、海浜環境を美しく守るという活動の取り組みや、子どもたちの工作教室にシップ・アンド・オーシャン財団の手法を利用させていただこうと思っています。
 これは、七夕まつりでほたるを観賞しているところです。子供たちは、生き物を大変喜ぶんだということが、分かって、そういう活動もやっていきたいと思っています。そういう意味でも、数多くの子供たちと活動をする手法を勉強させていただいたと思っています。これから、遊びのキャラバン隊と子供たちで、どんどん環境美化活動を、北の防人として、ゴミの防人として行い、海浜の環境保全活動に取り組んでいきたいと思っていますので、皆さんの御指導を宜しくお願い致します。
 
 
 
 
 
 


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