平成十六年度全国吟詠コンクール決勝大会
優勝に近道なし、日々是研鑽
●平成十六年九月二十日(敬老の日)
●笹川記念会館・国際ホール
全国各地の厳しい予選を勝ち抜いてきた総勢一五〇名の吟詠家が一堂に会して競い合う、平成十六年度全国吟詠コンクール決勝大会が去る九月二十日、敬老の日に笹川記念会館国際ホールで盛大に行なわれました。
昭和四十四年からはじまった本大会は、今年で三十六回を数え、その間に素晴らしい吟詠家を幾人も誕生させ、吟道振興に大きな役割を果たしてきました。
大会は河田和良財団会長の「日々研鑽の成果を遺憾なく発揮するように」という財団代表挨拶にもあったように、競吟者それぞれが持てる力を舞台で発揮し、訪れた多くの愛吟家の耳を楽しませました。
しかし、プレッシャーのかかる大きな大会。中には緊張のあまり普段の練習通りにゆかず、絶句やタイムオーバーなど、考えられないようなミスを犯してしまうケースもありました。
大会は午前中に幼年の部、少年の部、青年の部、一般三部が行なわれ、午後からは一般一部と二部が審査されました。幼年の部では年に似合わずしっかりとした吟詠を披露し、会場の人々を感心させていました。その中で栄冠を手にしたのは、十番手で吟じた難波初衣(兵庫)さんで、吟題は「汪倫に贈る」でした。
少年の部も大人顔負けの素晴らしい吟詠を繰りひろげ、接戦の趣を見せていました。そして、接戦を制したのは二十五番手で吟じた山本純子(大分)さんで、吟題は幼年の部優勝者と同じ「汪倫に贈る」でした。
青年の部では伸び盛りのはつらつとした吟詠が印象的でした。やはり誰もが甲乙つけがたく、その中で見事に優勝を飾ったのは二十九番手で吟じた奥村由美(東京)さんで、吟題は「新涼書を読む」でした。
一般一部では、これからの吟界を支えていくであろう吟詠家が登場し、きわめて興味深い吟詠を堪能することができました。熾烈な競吟を制し、晴れの栄誉に輝いたのは八十一番手で吟じた土澤なぎさ(栃木)さんで、吟題は「母を奉じて嵐山に遊ぶ」でした。
一般二部は経験に裏打ちされた熟練の吟詠を、それぞれの競吟者が披露していました。古典芸能としての吟詠を鑑賞することができ、感動的でした。そして、優勝したのは一一二番手で吟じた野島繪未(東京)さんで、吟題は「静夜思」でした。
開会の辞を述べる鈴木吟亮専務理事
一般三部はベテランらしい落ち着きのある、味わい深い吟詠を満喫できました。その中で優勝を手にしたのは五十七番手で吟じた河島末松(福岡)さんで、吟題は「母を奉じて嵐山に遊ぶ」でした。
すべての競吟が終了し、河田和良財団会長が講評を述べられ、その内容は次のようなものでした。
●とくに女性の出吟者に見られる傾向だが、手の組み方が前から見ると握り締めているようで気になる。そういう人は手で調子を取っているのでしょう、動くことがあり、これは減点の対象になる。いくら良い吟詠をしても、手が動いているとマイナスになるので吟詠が台無しになる。
●吟じているときの態度は自分で直すことができるので、ぜひとも努力してほしい。
●発音の良かった(満点)方は、幼年の部では二人、少年の部では七人、青年の部では九人、一般一部では十三人、二部では二十人、三部では六人だった。
●調和(二十点満点)では十八点が一人、十七点が二人、十六点が七人、十五点が十四人だった。
河田和良審査委員長の審査結果発表。後方は審査委員の皆さん
一般一部優勝者、土澤なぎささんは河田大会会長から優勝トロフィーを受けた |
表彰式では河田和良財団会長をはじめ、鈴木吟亮専務理事、工藤龍堂常任理事、他の皆様から賞状が一人ひとりに渡され、長時間にわたったコンクールも成功のうちに幕を下ろしました。来年は、また新たな挑戦者が笹川記念会館の舞台を踏み、レベルの高い競吟を繰り広げることでしょうし、また吟界のためにも多くの方々が挑戦してくれることを望みたいものです。
平成16年度
全国吟詠コンクール決勝大会
入賞者一覧
〔(文)は文部科学大臣奨励賞〕
●幼年の部
優勝(文) 難波 初衣 (兵庫)
2位 西田 伽湖 (山口)
3位 明日 勇聖 (愛媛)
4位 柴田 きよ乃(愛知)
5位 本田 陽彦 (福岡)
●少年の部
優勝(文) 山本 純子 (大分)
2位 笠井 郷平 (福岡)
3位 西田 和樹 (山口)
4位 遠藤 衣恵 (群馬)
5位 明日智恵美 (愛媛)
●青年の部
優勝(文) 奥村 由美 (東京)
2位 向山 里水 (熊本)
3位 上野眞由美 (高知)
4位 藤井 真美 (愛知)
5位 荒崎有紀江 (神奈川)
6位 堂前 優子 (大阪)
7位 中西 弘恵 (大阪)
●一般一部
優勝(文) 土澤なぎさ (栃木)
2位 宇井 久絵 (千葉)
3位 森谷あずさ (長野)
4位 大西 静 (高知)
5位 笠井 俊生 (福岡)
6位 高山 浩胡 (岡山)
7位 粥川しげ子 (愛知)
8位 田代 和代 (静岡)
9位 西野 佳子 (兵庫)
10位 藤本千寿恵 (山口)
●一般二部
優勝(文) 野島 繪未 (東京)
2位 星野美喜恵 (神奈川)
3位 中野紀美子 (大阪)
4位 松浦 洋文 (奈良)
5位 中野 澄子 (広島)
6位 武 直子 (岡山)
7位 松行 清子 (福岡)
8位 浮津美津恵 (広島)
9位 山田 守 (大阪)
10位 加藤加代子 (東京)
11位 守友 文子 (石川)
12位 齋藤 利男 (東京)
●一般三部
優勝(文) 河島 末松 (福岡)
2位 布施 才二 (奈良)
3位 岸田 蔓子 (兵庫)
4位 山内チヨコ (広島)
5位 染谷 康子 (東京)
優勝者の喜びの声
【幼年の部】難波初衣(兵庫)さん
「賞状とかトロフィーをもらって、本当に優勝したんだと思いました。ありがとうございました。これからも、一生懸命練習していきます」
【少年の部】山本純子(大分)さん
「トロフィーがもらえて嬉しいです。次は詩舞の踊りでも頑張りたいです。十月に発表会があるので、それに向けてお稽古を頑張ります」
【青年の部】奥村由美(東京)さん
「小さな頃から挑戦してきましたが、全国優勝は初めてで、ビックリしています。今日は無心に吟じきることだけを考えて吟じました」
【一般一部】土澤なぎさ(栃木)さん
「今日は体調が優れないにも関わらず優勝できて嬉しいです。宗家から発音や言葉を大切にするようにいわれ、それを守って吟じたつもりです」
【一般二部】野島繪未(東京)さん
「全国大会は初めての優勝で、大変感激しています。先生方のご指導を守ったつもりですが、うまくできたかわかりませんが、感謝しています」
【一般三部】河島末松(福岡)さん
「これに向けて練習してきましたので、大変喜んでいます。とくにアクセントは難しいもので、十分練習しました。結果が出て嬉しいです」
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