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表紙説明
名詩の周辺
 
花朝澱江を下る(藤井竹外)
大阪・大阪市
 この詩は天保三年(一八三二)二月十五日に伏見あたりから舟で淀川を下ったときに詠んだもの、と詩の解説にありましたので、二月中旬、淀川を訪れてみました。「花朝」とは陰暦二月十二日(一般には二月十五日)をいい、「澱江」とは淀川のことを指すとあったことに従ったわけです(勿論、陰暦と陽暦の違いはありますが・・・)。
 淀川は源を滋賀県の琵琶湖に発し、木津川・桂川・加茂川を合わせて大阪湾に注ぐ、畿内第一の大河です。淀川を語ることはすなわち、大阪を語ることといわれるほど淀川と大阪は切っても切れない関係にあり、大阪の街は淀川が育んで来たといってもいい過ぎではありません。淀川は昔から京と大坂を結ぶ運輸の大動脈で伏見を出た三十石舟は川を下り、大阪を左手に眺めて天満橋をくぐり、八軒家に着いていました。しかし、いま八軒家船着場跡といえるものは、大阪市中央区天満橋近くにわずかに大阪市の史跡として小さな碑が残るのみで、明治時代には蒸気船も発着したという、その繁栄の面影は現在は残念ながら何も残ってはいません。
 藤井竹外は江戸末期の武士で、摂津(大阪府)高槻藩の名門の生まれでしたが、頼山陽の教えを受け、詩人として身を立てました。詩は七言絶句を最も得意とし、“絶句の竹外”といわれたほどです。この詩は彼の代表作「芳野懐古」とともに有名な詩で、のどかな春の淀川下りの情景がよく描かれています。竹外は晩年は官を辞して京都に住み、詩酒の間に悠々自適の生活を送りました。
(旧淀川・八軒家船着場跡=大阪市営地下鉄谷町線・京阪本線天満橋駅下車、徒歩3分)
 
取材――株式会社 サークオン
 
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水六訓
一、あらゆる生物に生命力を与えるは水なり。
 
一、常に自己の進路を求めてやまざるは水なり。
 
一、如何なる障害をも克服する勇猛心と、よく方円の器に従う和合性とを兼ね備えるは水なり。
 
一、自から清く他の汚れを洗い清濁併せ容るの量あるは水なり。
 
一、動力となり光となり、生産と生活に無限の奉仕を行い何等報いを求めざるは水なり。
 
一、大洋を充し、発しては蒸気となり、雲となり、雨となり、雪と変じ、霰と化してもその性を失わざるは水なり。
 
 水を心とすることが平和と健康と長寿の妙薬であります。
 
笹川良一
 
OPINION
明日への提言
吟剣詩舞発展、精神医療実践、日中文化交流の架け橋となられた竹末岳陽先生逝く
河田和良
我が命(わがいのち) 燃え尽くる(もえつくる)とも 吟じなむ(ぎんじなむ)
永遠に(とわに)伝えむ(つたえむ) 真実の(まことの)道を(みちを)(岳陽)
 故・竹末岳陽先生の辞世の和歌です。
 財団顧問(元常任理事)、社団法人日本詩吟学院岳風会総本部最高顧問(元理事長)、医療法人慶仁会天神病院開設者(元理事長)並びに佐世保廈門(あもい)市青少年交流協会会長など、数々の重責にあられた、竹末岳陽先生は、かねてよりご病気療養中のところ、一月二十五日にご逝去(享年八十七歳)されました。故人のご遺志により告別式は行なわず、通夜(一月二十六日)と密葬(翌二十七日)は、ご遺族、近親者のみで行なわれ、一ヶ月後の二月二十八日、佐世保市民会館で、先生のご遺徳を偲ぶ「お別れの会」が執り行なわれました。
 竹末先生は、全国に十万人を超える会員を擁す、社団法人日本詩吟学院岳風会と財団の協調発展の礎石となられ、吟剣詩舞の普及発展に尽くされました。併せて、医療法人慶仁会天神病院の開設とその運営に携わられ、精神医療実践の範となられ、多くの人々に慕われました。また、佐世保廈門市青少年交流協会の活動などを通じて日中文化交流の大きな架け橋ともなられました。
 一千人を収容する佐世保市民会館は、ほぼ満席、舞台中央には、竹末岳陽先生の生前のご功績を象徴する色とりどりの花びらを敷き詰めた一筋の架け橋が渡され、後方のスクリーンには温容な先生のご遺影が写し出されていました。
 「お別れの会」の実行委員長になられた光武顕・佐世保市長、続いて、平澤岳漱・社団法人日本詩吟学院岳風会総本部理事長、財団会長、王昆・中華人民共和国駐長崎総領事が関連団体を代表して、故人を偲ぶお別れのことばを申し述べました。
 竹末岳陽先生を偲ぶ、ビデオ放映「在りし日のお姿」並びに吟詠拝聴「往年の吟詠」と続き、哀調切々とした竹末岳陽先生の吟詠が会場を包み込む中、来場者一同による献花が行なわれ、先生との永久のお別れをしました。
ともがらよ はるけき海(うみ)よ 街並み(まちなみ)よ
共に(ともに)吟んぜん(ぎんぜん) 次の世(つぎのよ)までも(岳陽)


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