III. 教育に於ける国際交流・合作
1. 教育に於ける国際交流・合作
教育面における国際交流・合作の内容は、留学生の派遣、外国人留学生の受入れ、学術交流及び外国人専門家の招聘などからなっている。
改革・開放以来、外国の進んだ技術と管理経験を学び、参考にして、高度の人材を育成するため、政府は一連の「出国留学」に関する方針と政策を決めた。多くの留学帰国者が外国で学んだ知識と技術を生かして、中国の経済建設、社会発展に大きく貢献している。
また、外国人留学生を受け入れて育成することは、国の対外交流と合作の重要部分である。とくに、中国経済の急激な発展・成長にともない、中国への留学生数も大幅に増加している。78年から96年までの19年間に、世界の160の国と地域から留学生を受入れ、そのうち、中国政府の奨学金を受けた留学生は15.5万人に達している。
なお、中国政府は、国連の関係機構、ワールドバンク等の国際組織及び数多くの国と、様々な教育合作・交流を展開している。中国政府は118ヵ国と119の協議書に調印し、一部の国際学術会議に参加したり、または主催してきた。
一方、教育視察団や学者を派遣し、外国から専門家や教師を招聘している。
中国の教育関係者は、各国の教育関係者、学術分野と広範な連携を結び、学術交流を活発化させ、相互理解と友情を増進している。
最近の統計でみれば、1年間に中国は、世界54ヵ国から各分野の優秀な専門家8万人を招聘し、また、外国の優れた管理、技術を学ぶために、4万人の幹部、管理者、技術者、労働者を研修のために外国へ派遣している。
中国が招聘する外国の専門家のうち1.5万人が中国の大学やマスコミ関係者で、そのうち2,526人が日本人専門家で、これはアメリカ合衆国に次ぐ数である。
2. 日本語教育の現状
中国に於ける日本語教育が盛んになったのは78年の改革・開放政策以来のことで、88年にはピークに達し、その後「英語」が国際語としての地位を確立するにつれて、減少の傾向にある。
94年の統計によれば、中等学校における日本語学習者が16万人、大学(専攻・非専攻)7.8万人、成人教育機関(テレビ・ラジオ・通信教育を含む)での学習者が8万人で計32万人という数字が掲げられているが、実際は数百万人とも言われ、誰もその実数は把握できていない。
中等学校での外国語教育は一科目であり、その多くが「英語」を選択している結果、日本語学習者は英語の240分の1にしか過ぎないが、これが大学となると外国語の第1は英語であるとしても、日本語は外国語専攻者で英語の11分の1、非専攻者で15分の1で、勿論、地域によって異なるが、ドイツ語、フランス語、ロシア語などを抜いて、英語に次ぐ位置を占めている。
中国の1040余の大学のなかに、日本語学部または日本語学科を設置している学校は約70校だが、それ以外にも、第1外国語または第2外国語として日本語教育を行っている大学も数多くある。
また、一部の大学では、様々な日本語訓練センターを創り、社会人や日本企業に就職する人、日本へ研修または留学予定の人々を対象に日本語教育を行っている。
日本語教師も、国際協力事業団・青年海外協力隊から毎年25名程度、日本シルバーボランティアズから10名以内、東京、神奈川、三重、奈良、長崎などの各教育委員会から若干の現職教師を招聘しているが、最も多いのは日中技能者交流センターからの派遣教師で、毎年100名内外の招聘となっている。
なお、日本の国際交流基金は、北京、瀋陽、長春、上海、広州などに於いて、毎年、「日本語能力検定試験」を行っている。
以上
(元中国国家外国専家局、中国人材交流協会日本駐在事務所代表、現中国国際人材交流協会局〔北京〕)
2002年5月1日現在の文部科学省調査では、留学生総数95,550人のうちの9割近い85,024人が私費留学生という。
留学生の地域別構成比では、中国61.3%、韓国16.6%、台湾4.5%、マレーシア2.0%と続く。(中国、韓国、台湾で82%を超える。)
これらの留学生の日本での12年留学地域は、大学の数が多く、アルバイトし易い大都会に集中しがちで、関東が全体の49.5%の47.282人、近畿が17.3%の16.493人、3位の九州が9.9%9.456人となっている。
日本語能力試験と日本留学試験
1984年開始の「日本語能力試験」は、日本語を母語としない人を対象に日本語能力を測定・認定する目的で、毎年1回、日本国内19都道府県と海外38ヶ国・地域の89都市で実施され(2003年度予定)、国内は(財)日本国際教育協会が、国外は国際交流基金が行っている。1級〜4級のどれも「文字・語彙」「聴解」「読解・文法」の3科目あって、合計点で合否が決まる。
この「日本語能力試験」のほかに「私費外国人留学生統一試験」があったが、この「私費外国人留学生統一試験」は廃止され、2002年度から「日本留学試験」が始まった。(財)日本国際教育協会によって、国内15ヶ所と海外10都市(2003年度は11都市)で6月と11月に実施される。試験は日本語力のほか、理科(物理、化学、生物)、数学、総合科目で、希望大学の指定科目を受験する(試験の成績は2年間有効)。これを受ければ「日本語能力試験」を別に受けなくてもよくなったが、中国国内では未だ、この試験は実施されていない。
就学生と留学生
日本語学校に通うときの在留資格(ビザ)は「就学」。大学へ入学すると「留学」ビザになる。英語表記では、就学はPre-college Student、留学はCollege Studentになる。
就学ビザは1990年6月施行の改正入管法で新設された在留資格。高等学校、専修学校の高等課程や一般課程、各種学校などに通う場合のビザで、日本語学校のほとんどは各種学校。日本語学校では出欠が厳しい。特に(財)日本語教育振興協会認定の適正校である日本語学校では80%以上の出席率を基本にしている。出席率が悪いとビザの更新ができない。
留学ビザは、大学、短期大学、大学院、専修学校の専門課程、高等専門学校などで教育を受ける場合の在留資格。つまり、12年以上の学校教育修了が入学要件にあっている高等教育機関に通う場合だが、私立大学が設置している日本語別科や日本語学校の準備教育課程でも留学ビザが出る。準備教育課程を設けているところは全国で16ヶ所あって、母国での学校教育課程が12年に満たない場合、そこで学べば高等教育機関への入学資格が得られる。
留学ビザの更新は1〜2年ごとで、大学生の場合、普通は2年のビザが貰える。更新時は在籍証明書のほかに成績証明書も必要で、取得単位数があまり少ないと更新ができない。
奨学金
私費留学生にとって、物価水準の高い日本での留学生活では「奨学資金」は大きな存在である。大学によっては「留学生授業料免除制度」があって、学費のうち、授業料の部分が3割減免される。文部科学省から補助金が出るので、この制度を設けている学校が多い。なお、大学独自の奨学金制度を持っている大学も多い。
文部科学省給付の「私費外国人留学生学習奨励費」は毎年募集があり、学部生は月52,000円、大学院生は73,000円(2003年度)。全国で1万人強の留学生に給付されている。
ほかにも一般の私費留学生が応募できる奨学金としては、(財)日本国際教育協会が実施している「冠留学生奨学金」、地方自治体や国際交流団体が支給している奨学金、民間企業や民間奨学団体が支給している奨学金などがある。指定校制度があるもの、大学の推薦が必要なもの、自由に個人で応募できるもの、国籍や専攻や学年指定、年齢制限の有無など応募条件はいろいろである。
一方、いわゆる国費留学生は、経済的にはかなり恵まれているようだ。「日本政府(文部科学省)奨学金」は学部生が月139,200円、大学院生が180,300円(2003年度)で、学費もほとんどが国費で賄われる。2003年度支給人数は約5,200人で、多くが海外採用(来日前採用)でその大部分を大学院生が占めている。国内採用は、私費留学の4年生及び大学院生が対象だが、採用人数はずっと少ない。
アルバイト
私費留学生の殆どが、アルバイトをして学費と生活費を賄っている。在留資格は勉学のためのものだが、「資格外活動許可」を取れば、アルバイトができる。日本語学校のときは一日四時間で一週間二八時間が上限。大学に入り留学ビザになると週二八時間の上限は同じだが、一日の制限はなくなる。夏休みなどの長期休暇中は一日八時間まで働いていいことになっている。
ただし、どんなアルバイトでも良いと言うことではない。風俗営業やバー、パチンコ店、ゲームセンターでのアルバイトは禁止されている。(焼鳥屋や飲食店は可。利点は夕食付きと言われる)。発見されると、場合によっては国外退去(退去強制)になり、最低5年間は日本に入国できない。強制退去にならなくても、ビザの更新ができなくて、結局、学校を辞めざるをえなくなる。
関連して「身元保証」
派遣中の教師から「身元保証について」の問い合わせがあった。いろいろ調べたところ下記のことがわかった。
留学生への身元保証人の件、日本入国の際、入管が求めていた身元保証は、現在は廃止されている。しかし、(財)日本国際教育協会、(財)日本国際教育協会留学情報センター(電話03-5520-6111)に問い合わせたところ、大学側や民間住居を借りる際には、連帯保証や身元保証を求められるようである。授業料を滞納したり、トラブルを起こしたりした場合に、金銭的賠償や、身元引き取りを求められることになる。借家・借間の場合も同様。
なお、ついでまでに、「私費外国人留学生のための大学入学案内 2004年度版」が販売されていることを紹介しておく。注文は「株式会社 大学通信」(電話03-3291-3591)日本に留学する場合は、大学によって違いがあるが、入学時に要求する書類のなかで、「身元保証」を求めている大学があるのかも知れない。全国640の大学のデーターが掲載されていると言う上記「入学案内」で志望校ごとに調べるしかない。
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