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6 技術要件
6.1 油排出監視制御装置
6.1.1 油排出監視制御装置は、油タンカーの運航上の要求を完遂するため主官庁が必要と考える第18規則により許される船外排出口を通しての海中への流液の排出を有効に計測し、かつ、制御することができなければならない。
6.1.2 油排出監視制御装置により制御されない排出口を通しての海中へのダーティ・バラスト水、その他のカーゴ・タンク・エリアの油濁水の排出は、条約違反となる。
6.1.3 油排出監視制御装置は、油タンカーが通常遭遇すると想定される全てのガイドラインの付属書第2部に定める環境試験の基準を満たすよう設計・製造したものでなければならない。その他次の各号の規定によるものとする。
.1 油排出監視制御装置は、当該装置が通常の運転モードになく、また関係サンプリング箇所の選択が正しく行われていないときは、ダーティ・バラストその他のカーゴ・タンク・エリアからの油濁水の排出が生じないよう設計したものでなければならない。
.2 できるだけ、油排出監視制御装置は、排出流液の試料採取取出口の必要数が最小限度の数ですみ、かつ、船外排出口の数が常に1つであるよう措置したものでなければならない。
.3 同時に排出するため2本以上の管を用いることとなるものについては、油分濃度計1個と流量計1個を各排出管に設けなければならない。この場合、油分濃度計と流量計は共通のプロセッサに連結しなければならない。
.4 高瞬間排出率の指示を生ずる原因となる短時間高油分濃度信号(尖頭値)による警報を防ぐため、短時間高ppm信号は最大10秒抑制することができる。ただし、これに代えて、瞬間排出率をその前20秒以内にわたり、5秒を超えない間隔で得られる油分濃度の瞬間油分濃度(ppm)から算出して連続的に平均することとすることができる。
6.1.4 油排出監視制御装置の構成は、次のとおりでなければならない。
.1 油分濃度計
 流液の油分をppmの単位で計測する。油分濃度計は、このガイドラインの付属書中の規定に従って承認を受け、かつ、輸送する貨物の範囲についての証明を受けたものとしなければならない。
.2 流量指示系統
 海中に排出する流液の量を計測する。
.3 船速計
 船舶の速力をノットで示す。
.4 船舶位置表示装置
 船舶の位置を緯度及び経度で示す。
.5 サンプリング系統
 流液の標準的試料を油分濃度計に送る。
.6 船外排出制御装置
 船外排出停止を起こさせる。
.7 始動インターロック機構
 油排出監視制御装置が完全に作動状態となっていない限り流液の船外排出を阻止する。
.8 コントロール・セクション
 次のものの構成とする。
.8.1 流液の油分濃度信号、流液の流量及び船速を受け、かつ、これに基づき1マイル当たりの排出油量(リットル単位)及び排出油の全量を計算するプロセッサ。
.8.2 警報を発し、指令の信号を船外排出制御装置に送る装置
.8.3 6.9.2項の規定に従ってデータの記録を掌るデータ表示機構
.8.4 6.10項の規定に従って現状の運転データの表示を掌るデータ表示機構
.8.5 油排出監視制御装置が不良の場合に使用する手動オーバーライド系統
.8.6 油排出監視制御装置が完全な作動状態となる前に流液の排出を防止するため始動インターロック機構に信号を与える装置
6.1.5 油排出監視制御装置の各重要部は、その図面番号、型式番号及び製造番号を適宜表示し、そのもの自体を明らかにするための銘板を取付けたものでなければならない。
6.1.6 油排出監視制御装置の電気的部分は、これを危険な場所に設置する場合、当該場所に適用となる安全要件に適合するものでなければならない。
注 安全要件:IEC刊行物92の規定のもの又はこれと同等のもの。
6.2 油分濃度計
6.2.1 油分濃度計は、このガイドラインの付属書第I部「試験及び性能基準」を満足し、かつ、サブセクションの通則に適合しなければならない。
6.2.2 油分の広範囲を監視する設計の油分濃度計は、その指示が±10ppm又は試験サンプルの実際油分の±10%のいずれか大なる方を超えない値を表示することができるものでなければならない。当該精度は液中の空気、さび、泥、砂等油以外の汚染物があっても上記の限度内に収まらなければならない。
6.2.3 油分濃度計は、その動力供給(電気、圧縮空気等をいう。)に設計値の10%変化を生じても前記の限度内の精度を保持する設計のものでなければならない。
6.2.4 油分濃度計の指示は、油種により影響を生じないことがのぞましいが、かかる影響のある場合には、船内での較正が製造者の指示書に従って所定の切替式にて行うことができる設計のものについては、船内の較正は差し支えない。
 このただし書きの場合においては、対象の油に対し正しい較正が選択されていることを確認する手段がなければならない。指示の精度は常に6.2.2項に定める限度内になければならない。
6.2.5 付属書の第I部1.2.8項に定義した油分濃度計の応答時間は、20秒を超してはならない。
6.2.6 油分濃度計は、その設計された用途に対し適切な数種のスケール(尺度)を適宜備えることができる。スケール(尺度)の全指示範囲は、1,000ppm以上なければならない。
6.2.7 油分濃度計は、その全スケール指示の約半分に相当する擬似信号を用いて油分濃度計の電気的回路及び電子的回路の機能調査を船員がすることのできる簡単な手段を備えたものでなければならない。油タンカーにおいて有資格者が油分濃度計を再較正することもできなければならない。
6.2.8 引火性雰囲気のおそれのある場所に備える油分濃度計は、当該場所の関係安全規則に適合するものでなければならない。油分濃度計の部分を成す電気的装備品は、非危険区域に設けるか、又は危険区域での使用が安全であると主官庁が証明したものでなければならない。危険区域に設ける稼動部分は、静電気発生を防ぐ措置を施したものでなければならない。
6.2.9 油分濃度計は、危険性のある物質を含み又は使用するものであってはならない。ただし、かかる構造に伴う危険性を排除するため主官庁が認める適切な措置を施したものについてはこの限りではない。
6.2.10 油分濃度計は、海洋環境の条件において腐食に耐えるものでなければならない。
6.2.11 油分濃度計は、試験水に対し問題の無い材質から製造されなければならない。
6.3 サンプリング系統
6.3.1 試料採取点は、管系試料が6.1.1項の規定により運航上の排出に当てられる出口から採取し得るような場所に設けておかなければならない。船外排出管に設けられるサンプリング・プローブと当該サンプリング・プローブを油分濃度計に接続する管系統は次の要件に適合しなければならない。
6.3.2 管系及びサンプリング・プローブは火、腐食及び油に耐える材料で作り、かつ、適当な強さ、接手及び支持を備えたものでなければならない。
6.3.3 当該系統は、各サンプリング・プローブに近接して止め弁を備えたものでなければならない。そのサンプリング・プローブが1つのカーゴラインに設けられた場合は、2つの止め弁を直列にサンプルラインに取付けなければならない。これら2つの止め弁の1つは、遠隔制御のサンプル・セレクター弁で差し支えない。
6.3.4 サンプリング・プローブは、容易に取り出せるように設置し、かつ、できるだけ排出管の垂直部分の近接可能な場所に取付けなければならない。サンプリング・プローブを排出管の水平部分に取付ける必要があるときは、設置に係る検査に際し、当該管が流液排出の間常に流液で満たされる位置に設置しなければならない。サンプリング・プローブは、通常排出管の直径の4分の1の距離だけ排出管の内方に位置させなければならない。
6.3.5 サンプリング・プローブ及び管系統を永久的な清水フラッシング設備又は同等の方法により洗浄する手段を設けておかなければならない。油、油性残留物その他の物質によりサンプリング・プローブ及び管系統ができるだけ詰まらないよう設計しなければならない。
6.3.6 管系統内の流体の速度は、管系の長さを考慮に入れた上で、ボンプで送入される混合物中の変化と油分濃度計の表示の変化の間の全体の応答時間ができるだけ短いものでなければならず、かつ、いかなる場合にも油分濃度計の応答時間の合計が40秒以内としなければならない。
6.3.7 スロップ・タンクヘ流れを変える点に対応して、サンプリング・プローブを設置する場所の選択に当たっては、再循環モードにおいて油混合水を採取する必要があるのでその点につき考慮を払わなければならない。
6.3.8 サンプリング・ポンプ又はサンプリング系統で使用するその他のポンプを駆動するための施設の設置に際しては、そのポンプが設けられる場所の安全要件に考慮を払わなければならない。危険区域と非危険区域との間の隔壁の貫通は、主官庁の承認する設計のものでなければならない。
6.3.9 フラッシングするための施設は、必要に応じ試運転、油分濃度計の安定及びゼロ点調整ができるようなものでなければならない。
6.3.10 スロップ・タンクヘ戻されたサンプル水は、当該タンクヘ自由落下しないようにしなければならない。IGSを備えたタンカーにあっては、適当な高さのUシールを、スロップ・タンクヘ達する管系に設けなければならない。
6.3.11 サンプリング・ポンプの下流又は主官庁が適当と認める同系の場所に、油分濃度計に至る入口管系からサンプルの手操作による採取ができるよう弁が取付けてなければならない。
6.4 流量指示系統
6.4.1 排出率を測定するために排出管の垂直部分又は排出管のその他の部分であっても排出流液が常に充満しているため適当と思われる箇所に流量計を設けなければならない。
6.4.2 流量計は、船内の使用に適し、かつ、大口径管があるときはそれに使用しうる作動原理のものでなければならない。
6.4.3 流量計は、通常の使用に際し生ずる流量の変化範囲全部にわたり適するものでなければならない。ただし、異なる測定範囲のものを2個使用する等の装備方法又は使用上流量の制限負荷をもって代えることができる。
6.4.4 流量計は、これを設置した場合、流液を排出するときの使用範囲全域にわたり、瞬間排出率につき±10%以内の精度がなければならない。
6.4.5 流液と接触する流量計の部分は、適当な強度を備えた耐食性があり、かつ、耐油性のある材料で作ったものでなければならない。
6.4.6 流量測定関係施設の設計は、当該設備が設けられた場所の安全要件を考慮に入れたものでなければならない。
6.5 船速指示系統
6.5.1 油排出監視制御装置に要求される自動船速信号は、レピータ信号により船速指示装置から取り出さなければならない。使用する船速信号は、船内設置の船速測定装置いかんにより対地速度でも対水速度でも差し支えない。
6.6 船舶位置表示装置
6.6.1 船舶位置表示装置は、グローバルナビゲーション衛星システム、又は陸上の無線ナビゲーションシステムの受信機、又は他の手段から成り、全航海を通じて常時使用するのと自動的に最新の船舶位置を示すのに適したものとする。
6.7 船外排出制御施設
6.7.1 船外排出制御施設は、全ての関連船外排出弁の閉止又は全ての関連ポンプの停止により海中への流液の排出を自動的に停止することができるものでなければならない。排出制御施設は、油排出監視制御装置が運転していない場合、警報状態にある場合又は機能を損なっている場合に全ての流液排出が停止となるよう安全側に作動するものでなければならない。
6.8 プロセッサ及び伝送機器
6.8.1 コントロール・セクションのプロセッサは、油分濃度計、流量指示系統及び船速指示系統からの信号を5秒以内の時間間隔で受け、かつ、自動的に次の事項を計算するものでなければならない。
.1 1マイル当たり油の瞬間排出率(リットル単位)及び
.2 1航海における排出全油量(立法メートル又はリットル単位)
6.8.2 MARPOL 73/78条約付属書規則9(1)(a)(IV)及び(V)に定める限度を超える揚合、プロセッサは警報を発し、かつ、流液の排出を停止させる船外排出制御施設への指令信号を発する機構を備えたものでなければならない。
6.8.3 プロセッサは、通常、日時の情報を連続的に発する機構を備えたものでなければならない。これに代えて、外部からの日付と時刻の情報を自動的かつ連続的に受けるように設計してあればこの方法でも差し支えない
6.8.4 電力喪失の際は、プロセッサは、排出全油量及び日付と時刻に関係するメモリーを維持し得るものでなければならない。油排出監視制御装置がマニュアル・オーバーライドで作動しているとき、データのプリントアウトは得られなければならない。ただし、電力喪失した場合に油排出監視制御装置が流液の排出を停止するよう船外排出制御を働かせるときは当該プリントアウトは必要としない。


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