5. 保守整備
5.1 概要
救命設備はSOLAS条約III章第20規則により、出航前及び航海中常に、良好な状態にし、直ちに使用することができるようにしておくと規定されている。
救命艇、進水装置及び離脱装置については同第20規則により、第36規則に規定された手引書に従った週ごと及び月ごとの点検が要求されており、さらに、MSC/Circ.1093(救命艇、進水装置及びオンロード離脱装置の定期整備及び保守に関するガイドライン)により、より詳細な手順や点検項目が規定されている。
本マニュアルはこれらの規定に従い、主務航海士監督の下で、船上において毎週、毎月及び日常点検として行われる保守・整備内容の一例を記述したものである。
5.2.1 保守点検計画
救命艇の週毎及び月毎の保守点検は、以下により行う。
5.2.1.1 船体部
保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
艇体外面 |
外観 |
変形等異常のないことを確認
再帰反射材の剥がれ等の異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
キャノピー外面 |
外観 |
変形等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
救命索 |
外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
天幕構造 |
外観 |
天幕の損傷等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
部分閉囲型救命艇の場合に限る。 |
艇内構造物 |
FRP部 |
外観 |
変形等異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
木部 |
外観 |
割れ、腐食のないことを確認 |
○ |
○ |
金属部 |
外観 |
腐食のないことを確認 |
○ |
○ |
ドレン弁 |
外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
離脱装置 |
外観 |
リセット状態の確認
可動部にゴミ、異物等の付着のないことを確認 |
○ |
○ |
スケーター離脱装置も同様に行う。 |
ペインタ離脱装置 |
外観 |
リセット状態の確認
可動部にゴミ、異物等の付着のないことを確認 |
○ |
○ |
全てのハッチ |
外観・作動 |
開閉の容易なことを確認
パッキンの状態確認 |
○ |
○ |
|
採光装置 |
外観 |
ガラスの割れのないこと
ガラスの清拭 |
|
○ |
|
操舵装置 |
外観 |
舵板、舵柄、応急舵柄に異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
作動 |
作動が良好であることを確認
応急舵柄の接続の確認 |
○ |
○ |
|
船尾管 |
外観 |
シール(水漏れ)状態の確認 |
|
|
着水時 |
プロペラ及びプロペラガード |
外観 |
損傷等異状のないことを確認 |
○ |
○ |
|
自動呼吸弁 |
作動 |
作動することの確認 |
|
○ |
|
散水装置 |
クラッチ
V・ベルト |
外観 |
ベルトの張り具合が良好であることを確認
ベルトに異常のないことを確認 |
|
○ |
|
作動 |
嵌脱確認 |
|
○ |
散水管 |
外観 |
腐食等異状のないことを確認 |
|
○ |
散水ノズル |
外観 |
塩分付着物、目詰まり除去 |
|
○ |
|
空気供給装置 |
高圧配管 |
外観 |
異状のないことを確認 |
|
○ |
|
圧力調整器 |
外観 |
異状のないことを確認 |
|
○ |
|
高圧空気容器 |
外観 |
発錆のないことを確認 |
|
○ |
|
|
5.2.1.2 機関部
保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
機関全般 |
外観 |
現状が良好であることを確認 |
|
○ |
|
作動 |
始動試験及び運転
スロットルレバーの作動
クラッチの嵌合 |
○ |
○ |
|
潤滑油 |
エンジン潤滑油 |
外観 |
潤滑油の油量を確認 |
|
○ |
該当する場合はクラッチ潤滑油も点検 |
性状 |
指で粘度を確認 |
|
○ |
|
燃料 |
燃料タンク |
外観 |
取付状況に異常のないことを確認
燃料が規定量あることを確認 |
|
○ |
|
燃料油配管 |
外観 |
接手等に油漏れがないことを確認 |
|
○ |
|
冷却水 |
清水クーラー |
外観 |
清水が規定量あることを確認 |
|
○ |
|
冷却水配管 |
外観 |
水漏れ等の異常のないことを確認 |
|
○ |
|
計器盤 |
キースイッチ |
作動 |
良好に作動することを確認 |
○ |
○ |
|
グローランプ |
作動 |
予熱時点灯することを確認 |
○ |
○ |
|
回転計 |
作動 |
指針は適切に動いていることを確認 |
○ |
○ |
|
油圧警報ランプ
チャージランプ |
作動 |
点灯、消灯が正常であることを確認 |
○ |
○ |
|
ストップワイヤ |
作動 |
機関が停止することを確認 |
○ |
○ |
|
|
5.2.2.3 電気部
保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
蓄電池等 |
外観 |
接続電線の点検 |
|
○ |
|
測定 |
電圧計測 |
|
○ |
電圧低下が認められた場合は所定電圧まで充電する |
室内灯 |
作動 |
正常に点灯することを確認 |
|
○ |
|
キャノピー灯 |
作動 |
正常に点灯することを確認 |
|
○ |
|
探照灯 |
外観 |
正常に点灯することを確認 |
|
○ |
|
電気配線 |
外観 |
電線に異常の無いことを確認 |
|
○ |
|
|
5.2.1.4 艤装品部
保守対象 |
点検 |
点検要領 |
保守計画 |
備考 |
週毎 |
月毎 |
1 |
オール |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
2 |
オールクラッチ |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
3 |
ボート・フック |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
4 |
あかくみ |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
5 |
バケツ |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
6 |
生存手引書 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
7 |
コンパス |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
8 |
シー・アンカー |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
9 |
もやい綱 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
10 |
手おの |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
11 |
飲料水及び容器 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
12 |
ひしゃく |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
13 |
コップ |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
14 |
食糧及び格納庫 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
15 |
落下傘付信号 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
16 |
信号紅炎 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
17 |
発煙浮信号 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
18 |
水密電気灯 |
外観・作動 |
異常の無いことを確認
正常に点灯することを確認 |
|
○ |
|
19 |
日光信号鏡 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
20 |
救命信号説明表 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
21 |
呼笛 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
22 |
応急医療具 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
23 |
船酔い薬 |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
24 |
船酔い袋 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
25 |
ジャックナイフ |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
26 |
缶切 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
27 |
浮輪 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
28 |
手動ビルジポンプ |
外観・作動 |
異常のないことを確認
良好に作動することを確認 |
○ |
○ |
|
29 |
釣り道具 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
30 |
持運び式消火器
(泡・粉末) |
数量・外観 |
異常の無いことを確認
有効期限を確認 |
|
○ |
|
31 |
レーダー反射器 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
32 |
保温具 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
33 |
属具格納庫 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
34 |
雨水貯蔵タンク |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
35 |
乗込みはしご |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
|
○ |
|
36 |
座席ベルト |
外観・作動 |
異常のないことを確認
良好に作動することを確認 |
|
○ |
|
37 |
行動指導書 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
38 |
取り扱い掲示板 |
数量・外観 |
異常のないことを確認 |
○ |
○ |
|
|
5.2.2 船上における保守要領
5.2.2.1 一般的事項
点検によって発見された異常箇所は、次の手順によって補修されなければならない。数量の不足については、正しい数量に補充しなければならない。
下記以外の部分については、それらの詳細を記録して、製造者等に異常個所の点検整備あるいは修理を要請する。
5.2.2.2 船体部
(1)金属部
発錆の状況に応じて防錆処理をする。
(2)布部
損傷の程度に応じて、同種の材質で補修する。
(3)ハッチ部パッキン
損傷の程度に応じてシール剤で補修する。
(4)ドレン弁
ドレン弁の付近にゴミ等があれば取り除き、弁の作動を確認する。
(5)散水装置
散水ノズル
ゴミ、異物等を除去する。
配管からの漏れ
継ぎ手からの漏れは、締め込みその他の調整を行う。
動力伝達装置
Vベルトの張りを正常範囲に調整する。
5.2.2.3 機関部
(1)主機関
油塗布及び潤滑
発錆部分は、錆を除去し機械油を塗布する。又、回転部分は、潤滑油を充填する。
作動テスト
テストは格納状態でも実施するが、適切な機会(月1回或いは、3ヶ月に1回)に進水させ浮上した状態で走行状態を点検する。
作動テスト完了後、冷却系の弁を開け、清水で洗浄した後、完全に水を切っておく。
5.2.2.4 電気部
(1)蓄電池
電解液を表示線まで補充すること。
電気系端子が緩んでおればしっかりと固定しておく。
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