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(5)当協会機関誌「海と安全」
 
バラスト水問題を考える
 バラスト水とは、空荷のときの船体バランスを安定させたり、航行中にプロペラが海水面上に出たりしないよう、船体内のバラストタンクに入れる海水のこと。原油タンカーやコンテナ船など、さまざまな物を運ぶ船舶にとって必要不可欠なものとなっている。
 バラスト水は荷を積み込む港内で排出されるが、この時に移動してきた細菌や水生の生物なども一緒に排出され、これが周辺海域の一部生態系に悪影響や漁業被害を与えたりすることから問題視されてきた。そのきっかけは、1989年6月にスウェーデンで開催された国際会議で、オーストラリアの博士が「タスマニアでの麻痺性貝毒の原因となる有毒プランクトンは日本船のバラスト水によって運ばれたもの」として、適切な管理を求める研究を発表したことに始まる(後に、問題のプランクトンは日本産のものとは異なることが証明された)。
 さまざまな課題への国際的ルール作りで大きな役割を果たしている国際海事機関(IMO)では、10年以上の歳月をかけて対策を検討してきた結果、2004年2月に「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)を採択した。今後は、2005年7月までに管理条約を実施するための具体的規定を定めるガイドラインを取りまとめるという。
 バラスト水に対する初の国際的規制の枠組みが作られた意義は大きいが、管理条約はさまざまな問題を抱えている。今号では、2001年の6・7月号に続いてバラスト水問題に焦点をあて、国際問題となった背景、管理条約の内容と問題点、処理装置やノンバラスト船の開発研究などを中心に探ってみた。
 


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