日本財団 図書館


3. TACLETs
 TACLETsとは、Tactical Law Enforcement Teamsの略で、和訳すると「戦術的法執行部隊」となり、麻薬取締りを主任務としている特殊部隊のことで、その秘匿性は高い。学生の調査・研究という目的で訪問したため、調査内容として情報量は十分とは言えない部分があるが、以下に調査結果を記す。
(1)業務内容
 TACLETsは、USCGに所属しているが、USCGの他の部署とは異なり、独自には船を持たず、US.NAVYの軍艦の上乗りとして乗船し、麻薬取締りを行うという特殊性をもっている。彼らの活動海域は、自国の領海、公海及び二国間条約を締結した国の領海であり、他国領海内で活動する際は当該国の船舶に乗船する。二国間条約を締結している国としては、コロンビア等がある。
 TACLETsは、Joint Inter Agency Task Force(麻薬取締任務部隊)が探知し、監視する情報を受けて、先述のような船舶で容疑船に乗り込み、臨検を実施し、犯人の検挙及び麻薬の押収等を行う。
(2)組織構成及び管轄地域
 TACLETsにはPacific TACLETs及びTACLETs Southの2つがあり、全米をミシシッピ川で2つに分けて、西側をPacific TACLETs、東側をTACLETs Southが管轄している。Pacific TACLETsはカリフォルニアに、TACLETs Southはマイアミにある。
 今回私達が見学してきたTACLETs Southでは、123人の隊員が9つのチームを編成しており、組織は、司令官、行政官に続き各士官、その下に各隊員という形で構成されている。昨年、全米で押収された麻薬の約30%がUSCGによるもので、そのうちの約20%がTACLETs Southの押収したものだということであった。つまり、全米で押収された麻薬のうちの6%をTACLETs Southで押収したことになる。
(3)訓練
 訓練には特殊訓練と月別訓練がある。今回の見学では、SurvivalSwim、Range2000を見学してきた。以下、各種訓練について説明する。
イ 特殊訓練
 これにはSWATの戦術訓練、逮捕術訓練、近接戦闘訓練、ラペリング訓練等がある。また、今回見学したSurvivalSwim、Range2000も特殊訓練に含まれる。
(イ)SWATの戦術訓練
 SWATで行われている戦術的な訓練を基本から応用まで幅広く行うものである。写真17は特殊武器訓練の模様であり、写真右上の的の位置と写真の隊員の位置から近距離からの射撃を想定した訓練を行っていることがうかがえる。
 
写真17: 特殊武器訓練
 
(ロ)逮捕術訓練
 徒手対徒手、徒手対刃物を想定した制圧訓練を行うものである。
(ハ)近接戦闘訓練
 船内という狭い場所を想定しての戦闘訓練のことである。
 
写真18: 近接戦闘訓練の様子
 
(ニ)ラペリング訓練
 ヘリから索を降ろして地上に降下するための訓練のことである。
 
写真19: ラペリング訓練の様子1
 
写真20: ラペリング訓練の様子2
 
(ホ)SurvivalSwim
 重い装備をつけたままで海中に転落した際に、船まで泳ぎ自らの安全を確保することを目的とした訓練である(写真21、22)。この装備は2〜3kg程度であるが、これに加えて現場では銃を携帯しているので、その銃の代わりにさらに10kgの重りを背中に入れて訓練を行っていた。
 
写真21: SurvivalSwimの訓練の様子
 
写真22: 訓練時の装備


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION