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I 米国における海事セキュリティの研究
第4学年第II群  関 恒明
第4学年第III群 瀬野悠希
第4学年第I群  高嶋修平
第4学年第I群  中嶋良明
 
指導教官 海上警察学講座 村上暦造 教授
 
1. 実地調査について
 研究テーマである船舶等を利用した海上からのアプローチによる国際犯罪やテロリズムの脅威に対する海事セキュリティについて、9.11テロ事件を契機として米国政府が新たに創設した国土安全保障省にも組み込まれ、その主導機関として海事セキュリティの確保に務めるアメリカコーストガード(以下「USCG」という。)において、実地にてその状況の調査を行った。
 本調査研究では、テロリズムの防除・拡散防止や港湾における対策等も視野に入れた海事セキュリティの調査・研究を、関係諸機関の体制や法制度と、実際に現場に配置されている職員や船艇の活動内容の両面から、実地調査等を行うことにより、海事セキュリティの現状を把握し、当庁の海事セキュリティ業務の検討に資することを目的として実施した。
 調査期間は平成16年7月25日〜31日で、対象機関はUSCG Maritime Safety and Security Teams(以下「MSST」という。)オフィス及び基地(ニューヨーク)、USCG Tactical Law Enforcement Teams(以下「TACLET」という。)オフィス及び基地(マイアミ)である。
 主にMSSTにおいては、組織の性質や勢力、業務上の想定脅威と使用船艇及び装備について調査し、TACLETにおいては組織の性格上、取得できる情報に制限はあったが、任務内容や訓練内容及び勢力等について調査した。
 
2. MSST
(1)組織の性質及び業務内容
 MSSTは9.11テロ事件以来、テロリズムに対抗し、犯罪行為やテロ行為によって損害を受けやすい海港や港湾設備及び重要構造物を守る為に、国土保安政策上必要と考えられ設立された組織である。組織としての性質は、USCGや、NYPD等が行う一般的業務を行うのではなく、より専門的な業務を行う為、特殊な装備や設備を有している。言うなれば海上におけるSWATのような存在で、重要な海港や港湾設備及び重要構造物をテロリストの脅威及び他の犯罪行為から守る業務を行っている。
 業務内容には以下に挙げるものがある。
イ 経済的、軍事的に重要な港及び港湾施設の保安、警備、法執行能力の増強
ロ オリンピック等において国家レベルで行われる警備の支援
ハ 麻薬取締りや、密入国者の取締り、その他国土保安に必要とされる業務
ニ 港や水路におけるテロ行為や犯罪行為への対応
ホ その他
 業務内容の根拠となるUSCGによるミッションステイトメント(業務目標)
イ 世界の主要な海事保安勢力の即応能力及び全国的な海事交通システムの警備の強化。
ロ 特殊な技能、能力、専門技術を有し、広い範囲で国内及び国外の港湾警備を実施する事で、潜在的な脅威を阻止し、無効にする為の専門的なチームの養成。
ハ 違法行為や壊滅的大事件が米国沿岸を脅かす前に事前に発見し、阻止する事で米国内外の治安を保障する。この無類の法執行が国益や重要な経済基盤を保護する。
(2)船舶の配備及び管轄地域
 管轄地域は、シアトル・チェサピーク・ロサンゼルス(ロングビーチ)・ヒューストン(ガルベストン)・ニューヨーク(ニュージャージー)・セントメリー・ボストン・サンフランシスコ・ニューオーリンズ・アンカレジの10箇所を管轄している。
 USCGの組織の一部であるが、行っている業務は異なり、各管轄地域において一般のUSCG職員が巡視する海域より狭い海域を集中的に巡視し、専門的な訓練を行う事で有事に備えている。
 


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