日本財団 図書館


別添2
中国の大学からの声 2005
黒龍江東方学院図書館
劉 頴
寄贈図書管理についての所感
 日本科学協会からの寄贈図書を我が大学図書館に受入れて以来、これらの図書は学内の教員や学生達によく利用されております。寄贈図書の活用効果の初歩的なものは既に教育上に現れておりますが、今後、更に深い効果が発揮されるものと考えております。寄贈図書により私達が獲得した成果として、次の5つのことを挙げることができます。
1. 日本語学習意欲の高揚
 現在、我が図書館には、日本科学協会から寄贈された合計5万冊の日本語版図書があります。日本語版蔵書の増加に伴い、これらの図書を利用するために来館する人も次第に増えております。ここ1年間における日本語学部の学生と教員の入館数は、延462人です。日本語専攻のある1年生が図書館を初めて訪れた時、斬新な装丁で内容豊かな多岐に亘る日本語版図書を目の当たりにするや、嬉しさに心躍らせ、「外国語は科学の最高峰へと登りつめるための手段だから、絶対に日本語をマスターしてみせる。」と嬉々として語っておりました。これらの図書は日本語学部の教員や学生達に大いに歓迎されております。
2. 日本語に関する基礎知識の習得
 「新訂国語図説」、「新総合図説国語」、「新国語要覧」、「級別漢字学習」、「光に向かって100の花束」等は、多く学生によく利用されております。利用後の感想として「日本語学習に大いに役立った。」、「とてもためになった。」等、異口同音の声が届いております。
 また、「新潮日本文学アルバム」(叢書)、「本文芸鑑賞事典」、「小論文問題集」、「日本の名随筆」(叢書)、「英文手紙の決まり文句」、「手紙の基礎知識」等の本も比較的良く学生に利用される本です。利用後の感想として「文章力の向上に大いに役立った。」という声があります。
 「川端康成集」、「夏目漱石集」、「志賀直哉集」、「谷崎潤一郎集」、「太宰治」、「日本語以前」、「日本を知る105章」、「慶弔のエチケット」等の本を講義に利用している教員もおります。これらの本を参考文献として講義に臨むことで、教育の質の向上(内容の充実)に繋がったということです。
3. 広範な知識の蓄積
 学生の劉月陽さんと李月涛さんは合わせて18種類の日本語の本を読みました。この2人は非常に勉強熱心で、よく図書館を訪れては本を閲覧したり借りたりしていますが、良質の本にめぐり会うと、本に対する愛着が湧いてきてなかなか手放せなくなってしまうようです。彼らはかなり幅広く読書しており、非常に広範な知識を蓄積しています。このことは、就職後の彼らの活躍に大いに繋がるものと考えています。
4. 卒業論文のレベルアップ
 寄贈図書の年間利用者数は延289人で、年間貸出図書数は延576冊です。利用者の約60%は論文執筆のための参考資料としての利用です。2005年度卒業生の卒業論文には様々なテーマと多くの内容が含まれています。例えば、呉東元さんの卒論のテーマは「川端康成と『雪国』」、張微微さんのテーマは「夏目漱石と『吾輩は猫である』」、王洪波さんのテーマは「森鴎外と『舞姫』」です。また、言語、経済、文化教育、茶道文化等に関する論文を書いた学生もおります。卒論のテーマは学生により様々ですが、これらの図書資源を有効に活用すれば、教員も学生自身も充分に満足のいく論文を完成させることができると思います。
5. 日本語図書資源の共同利用
 日本語学部学生の外にも、他の学部や他の専攻の学生達もこれらの日本語図書を利用しております。特に、インテリア・デザイン、建築装飾デザイン、コンピュータ・デザインなどを専攻する学生達は、芸術関係の図書や広告関係の雑誌をよく利用しております。大学外では、ハルビン税関署が「貿易と関税」(1998年1月号〜12月号)を利用しております。このように寄贈図書が広く利用されていることをとても嬉しく思っております。
 
黒龍江東方学院ビジネス日本語学科
3年 劉月陽
 黒龍江東方学院ビジネス日本語学科(2002期生)の劉月陽と申します。3年間の大学生活を通して多くの専門知識を習得しました。そして、図書館を利用することにより、知識の幅を広げることができました。私にとって、図書館は頭脳開発のための「新しい武器」です。
 外国語を専攻する私には、外国語資料閲覧室を利用することの重要性がよく理解できます。特に、2004年に日本科学協会から寄贈された1万冊の図書は非常に有益なものです。3年になると授業の内容はより広範になり、異国の文化、人情・風俗、歴史、社会等の分野に関する知識の乏しさを痛感するようになりました。そうした時、日本科学協会から大学図書館に図書が寄贈されたのです。これらの分類された日本語図書は大いに役立っております。
 県別に分類されている本で、地理、社会、環境、資源等の角度から日本各地の概要を紹介している本がありますが、これは「日本の概況」を学ぶための参考資料として私たちの知識の補完と充実に役立つものです。また、この本には大量のカラーの挿図があるため、閲覧する際に理解しやすいし、とても覚えやすいと思います。
 「図解 国語」には日本の文学史上の重要な事件、文学の流派、文学理論とそれに関する歴史的背景が記載されています。特に、作家の名文に対しては世間的な評判の受け売りではなく、独自の優れた評論がなされております。見るものも聞くものも非常に新鮮であり、日本の近代文学作品への学習意欲を掻き立てられました。
 日本文化には沢山の中国文化が紹介されています。日本語に翻訳された名作については、枚挙に暇がありません。翻訳文には中国の古人の精練な筆致や駢(注)散共存の文体等、原作の真髄を完全に反映することはでませんが、冷静に分析すれば、これはこれで独特な趣が感じられます。
 中文の図書が「墨を注ぎ、水をかける」のように大胆な描写と軽快洒脱の感を与えてくれるとすれば、外国語の図書は、色濃い油絵のように重々しい荘厳さや他とは一線を画する独創の感を与えてくれます。私たちが自由に泳ぐことができる図書の海原を我が大学に与えてくれた日本科学協会に衷心より感謝いたします。私は、深い友情を満載して遥かなる大洋の彼方から送られてきたこの「重厚な階段」を登り、更に高い殿堂に向かって邁進しようと思います。
(注)「駢文」は散文と異なる中国古代の文書体の一種で、文書に対偶の文があることが特徴。
 
黒龍江東方学院日本語学部
4年  艶平
 私の卒論のテーマは「<佐助犯人説>について論じる」です。論文を執筆する過程で、図書館の資料を大いに参考にしました。中でも、私にとって最も役立った本は、福田清人と平山城児の共著本「谷崎潤一郎」です。この本は、とても分かりやすい言葉で書かれており、この本を通じて谷崎先生の人生―家庭環境、学生時代、親友、結婚、そして衰えることのない作家生活―について理解することができました。谷崎先生の人生の旅路を理解したうえで、彼の作品を読み、彼の耽美主義を理解しようとすれば、新たなヒントが得られると感じました。
 文学作品の文章表現が如何に美しいものであっても、私たちの日本語のレベルでは限界があるので、その美しい表現をあまねく鑑賞できるものではありません。そういう訳で、暫くはこうした簡潔な表現の本を好んで読んでいるのです。
 また、「日本現代文学鑑賞8 谷崎潤一郎」という本も、卒論を書く際に非常に参考になりました。さらに言うなら、この本からインスピレーションが湧いたのです。
 この本の162頁には、熱湯で春琴の顔に火傷させた犯人に関する文学論争について触れているところがあります。1つの説として「佐助犯人説」があります。しかし、私の個人的な考えを言うと、この説が成り立つとすれば、佐助と春琴の愛の物語が今日まで伝わることはなかっただろうし、谷崎の耽美主義も耽美とは言えなくなるのではないかと思います。こんな訳で、「佐助犯人説」に反論することが私の卒論のテーマとなったのです。
 更に、この本の157頁〜167頁には「春琴抄」についての鑑賞解説がありますが、これは私が「春琴抄」を理解する上で大いに役立ったところでもありますし、作品への愛着にも繋がったところでもあります。
 
黒龍江東方学院日本語学部
4年 張 微微
 2001年に日本語学科に入学した学生です。4年間の日本語の学習を通じて日本語と日本文化についてより深く理解し、日本語と日本文化に深い興味を持つようになりました。卒業を前にした私は、卒論を書くために参考となる適当な資料がないということで一時悩んでいたことがあります。幸い、大学に日本語図書館がオープンしたため、そこで沢山の日本語版の資料を見つけることができました。例えば、「漱石文明論集」を通して、自分の研究対象である作家漱石についてより広範な理解が可能になりました。作家を理解することが、私の卒論の基礎となります。大学図書館がこれらの資料を提供してくれたことに感謝しております。これからも私たち学生が利用できる良質な図書を数多く提供してくれるよう期待しています。
 
黒龍江東方学院日本語学部
4年 李 雲飛
尊敬する皆様へ
 こんにちは。2001年に日本語学科に入学した学生です。今年(2005年)卒業の予定ですが、卒業にあたって、大学における最後の課題である卒業論文を完成させなければなりません。日本語学科の学生は、卒論を日本語で書かなければなりません。私達学生にとって、それはちょっと難しいことです。特に、資料の収集はとても困難なことです。けれども、大学図書館がこの難題を解決してくれました。私の卒論のテーマは、日本の偉大な作家である夏目漱石の「こころ」に関する研究です。図書館で多くの関連資料を見つけることができ、卒論を執筆する条件が整いました。
 大学図書館の蔵書数が益々増加すること、図書の質がこれまで以上に向上すること、これらの図書を利用する学生がどんどん増えることを期待しています。
 
黒龍江東方学院ビジネス日本語学科
2年 董 成銘
 日本語を専攻する学生です。日本語関連の書籍を読むことが好きです。私は、本の1冊1冊から実に多くのことを学びました。例えば、『わかもとの知恵』という本の場合、この本を読むことにより、これまで生活の中で経験したちょっとしたトラブルや些細な問題を解決するためのヒントが得られました。知識が豊かになったばかりでなく、日本語に関する興味も深くなりました。他にも、「日本料理」という本を通じて日本の食文化に対する理解を深めることができました。私はこうした日本語の書籍が大好きです。
 
黒龍江東方学院ビジネス日本語学科
1年 周 可心
 2004年に入学したばかりの1年生です。大学の日本語図書館から大いに恩恵を得ていることに対して心からお礼を言いたいと思います。
 ビジネス日本語を専門にしているため、日本の歴史、地理等に関する履修科目は多くありません。しかし、私個人としては、これらの科目に対して大変興味があるのです。私は知識という養分を日本語図書館から十分に吸収することができたので、大いに充実感を得ております。
 先日、クラスで壁新聞を出すよう学部から通達がありました。私はデザインと編集を担当しました。これまで日本語版の壁新聞など制作するどころか、見たこともありませんでした。幸いにも、日本語図書館から多くの情報と資料を見つけることができました。例えば、「日本の地理」、「戦後50年」等の本は大変役立ちました。日本語はゼロからのスタートであり、しかも、日本語学科に入ってまだ数ヶ月ですので、読める日本語の本は多くありません。もし、本の中に絵や写真などが入っていれば、内容を理解するうえで役立つだろうと思います。
 とにかく、大学や寄贈してくれた方々に感謝いたします。日本語を専攻する初級レベルの学生にも適する良質な本が沢山あれば嬉しいと思います。
 今後、日本語図書館が更に素晴らしい図書館になるよう祈っています。
 
黒龍江東方学院日本語学部
2年 李 日涛
 2002年に日本語学部に入学した学生です。これ程多くの日本語の図書を図書館で利用出来ることを幸せに思います。日本科学協会からの寄贈図書に感謝します。放課後、これらの本を閲覧することにより、知識が豊かになったと同時に、日本の社会や文化についての理解も深まりました。このことは、今後、仕事や学問をしていく上で、かけがえのない財産になると思います。
 学んだ知識を用い、それを活かすことは、私の人生の信条です。これらの文献や資料を通して、自分に相応しい人生の貴重な経験や知識を見出し、将来は中日交流の仕事に従事したいと考えています。
 皆様の仕事にとても感謝しております。


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