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4. その他の設備
乗組員
 238名におよぶ乗組員にも、かなりのスペースが提供されています。
 船長室は一番上の航海船橋甲板にあり、居間・寝室・浴室と特別室並です。
 その下のサン・デッキ前半部には、航海および無線の士官室と無線通信室があります。
 機関士の居室は事務員とともにBデッキの左舷にあり、業務用通路(Working Passage)に平行して機関士専用の通路が設けてあります。
 なお業務用通路は船の前後に通じる船員用の通路で、パイプや電線も通る重要な道なのです。この通路に面して士官食堂があり、ボート・デッキからは士官用エレベーターが通じています。
 普通船員の居住区は、甲板部はBデッキの船首部に、機関部と事務部(ボーイとコック)は1つ下の中央部にあり、10人程度の部屋で、各部ごとに食堂があります。
 
共通設備
 旅客および乗組員の共通設備として、医療・理容・洗濯設備があります。
診察室(Consulting Room):薬局が付属、簡単な手術もできます。
理髪室(Barber)
美容室(Beauty Parlour)
 ※Aデッキの一等と二等の中間部
病室(Hospital):男女別6床、船員用1床、バストイレ付。
 ※Bデッキ前部右舷
隔離(かくり)病室:伝染病用
 ※Aデッキの船尾
洗濯室(Laundry):乾燥室付
 ※Bデッキの船尾
 
供食(きょうしょく)設備
 糧食(りょうしょく)庫→厨房(ちゅうぼう)(Galley)→配膳(はいぜん)室(Pantry)→食堂という供食系統の連絡は、省力化の上から重要なものです。
 「精密解剖図」にもあるように、機関室後部の糧食庫からエレベーターで、必要な食料をBデッキの和食用厨房とAデッキの洋食用厨房に運びます。各厨房で調理された料理は、配膳室を経て食堂へ配られます。一等の配膳室は厨房の1つ上ですが、広い階段と料理用リフトがあります。
 
冷房など特殊設備
 今では冷房のない船などありませんが、当時は少なく、一等客室全体に冷房を施したのは航洋船としては“新田丸”が最初でした。インド洋や紅海など暑さに苦しむ航路のためです。
 そのため、煙突基部に空調機室があり、背の高い船になったのです。なお冷房のない区域は、船員室を含めて従来どおりの機械通風でした。
 公室では、一等食堂、二等食堂、理容関係室だけに冷房がありました。一等食堂には映写室があるのがわかります。
 また“新田丸”には国際無線電話の設備があり、各等に電話室がありました。
 
貨物および荷役設備
 欧州航路船は貨物輸送にも重点を置いているので、“新田丸”には約13,000立方メートルの貨物用スペースがあり、「精密解剖図」に見られるように、機関室前後のBデッキ以下はほとんど貨物倉で5つの水密区画に分かれています。
 貨物倉には絹物室(Silk Room)や冷蔵貨物室もあり、そのほか郵便物室(Mail Room)や手荷物室(Baggage Room)があります。
 荷役は計16本(うち1本は28トン用)のデリックブームとウインチによって、ハッチを通して行われます。
 
ボート・デッキ中央部に設けられた水泳場 三菱重工業
 
キャンバス製の臨時水泳場を設けることができる第5貨物倉のハッチ 縮尺1/50精密模型
 
ボート・デッキ後端の一等スポーツ・デッキで、小川清初代“新田丸”船長らを囲んでの一等船客の記念写真 日本郵船歴史博物館


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