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“新田丸(にったまる)”を知っていますか?
 “新田丸”という船を知っていますか?
 今から70年程前、欧州(おうしゅう)(ヨーロッパ)航路に就航する外航客船として、太平洋戦争前のわが国の最新技術を結集して、昭和15年(1940)3月に完成した当時の最優秀客船です。
 それまで、とかく欧米に頼ってきた客船建造技術、鋼材、艤装(ぎそう)品、家具調度(ちょうど)品などのほぼすべてを国産化、世界で初めて一等客室の全室に冷暖房を完備するとともに、船内装飾を現代日本様式とも言うべき独自のものにするなど、欧米の一流客船に負けない外航客船として完成させました。
 この“新田丸”、ドイツ軍がポーランド侵攻を開始して欧州で第二次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)したことにより欧州航路に就航することができず、太平洋航路に就き(つき)ますが程なく海軍に徴用(ちょうよう)、後に買収(ばいしゅう)されて改造の後“冲鷹(ちゅうよう)”という航空母艦に生まれ変わりました。戦時下、前線への飛行機輸送などに使われましたが、完成からわずか3年9カ月後の昭和18年(1943)12月、魚雷攻撃で沈没し短い生涯を閉じてしまいます。
 短命だったとはいえ戦前日本の最優秀客船だった“新田丸”のすべてを、一緒に探ってみることにしましょう!
 
“新田丸”(縮尺1/50)精密模型のブリッジ付近をクローズアップしたところ
 
船内装飾には、現代日本様式とも呼べる「和」のデザインを大幅に取り入れた(特別室)
 
“新田丸”の精密模型
(縮尺1/50)
 
 昭和15年(1940)3月、竣工時の“新田丸”の姿を忠実に再現した縮尺1/50の精密模型です。
 戦前に建造された艦船の竣工模型を多く手がけた、籾山(もみやま)艦船模型製作所の作品で、実船が失われているのでこの精密模型が“新田丸”の姿を今日に伝える最も貴重な資料といえます。
 この模型は、東京丸の内の日本郵船本社ビルのロビーに置かれていたもので、船の科学館の建設に際して昭和48年(1973)4月同社より寄贈していただいたものです。
所蔵:船の科学館


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