質問 私は今日、非常に感動をもって拝見しました。というのはオカジマツトムさんという懐かしい機関長でした。昭和29年(1954)4月29日の天長節でしたか、東京湾上で乗組員の健康のためにデンマーク体操をやられました。私たちは、そのデモンストレーションをしに行きました。初めて帆船に乗りまして、非常に感動をもって皆さんの前でデンマーク体操のデモンストレーションを披露しました。当時玉川学園がデンマーク体操の東洋分校になっており、そこのタカイズミという先生も、息子さんを連れて一緒に来てくれました。
そのときの言葉が、「原始力船」というのです。いわゆる本当の原始の船だということで、それで航海しているという言葉が非常に印象に残っております。
橋本 ありがとうございます。ご存知でしょうか。原子力船“むつ”があると思うと、本当の風を使って走る原始力船があります。当時、“むつ”がいろいろ問題になったときです。
司会 あまり時間もありませんが、もう一方どうでしょうか。
質問 先生は“海星”という帆船をご存知でしょうか。非常に残念なことに組織はつぶれてしまいました。私も退職後に航海訓練を楽しみに会員になりましたが、そういうチャンスがなくなって寂しい限りです。訓練が若い人にとって大切だということに共鳴感はあります。しかし、施設がないではないですか。たとえば“海王丸”とかそういう船も民間に開放していただけるようなことにはならないのでしょうか。そういう質問です。
橋本 ありがとうございます。実はあの“海王丸”というのは、役所だけの金ではありません。日本財団がありますが、あそこから金が出てできたものです。最初の“日本丸”は役所の金でできました。しかしこの“海王丸”は、民間の金も入っています。したがっていまあの船では、年間に何人か募集して乗せています。たとえばここからハワイに行くときなら、ハワイまで乗せる。ハワイで交替して帰って来る。そのように年間でやっております。実は今日も“海王丸”は、3時半まで子どもたちのためにオープンしています。これが終わるのが3時半だそうで、それと入れ替えにわれわれが入ろうと思っています。
“海星”もいまはアメリカに渡ってしまいました。あれも横浜市など、たとえばそういう受け皿を持っているところがあればよかったのかと思います。これからああいうものを立ち上げてやる場合には、必ず市民とかそういうグループでやっておかないと、お役所に頼んでおくと予算がなくなるとパーで、そのへんが問題です。ありがとうございます。それではぼちぼちいかがでしようか。
司会 橋本先生、どうもありがとうございました。(拍手)
※講演後、船の科学館前に停泊中の練習帆船“海王丸”の見学をしました。
平成16年9月26日(日)
於:“羊蹄丸”アドミラルホール
■講師プロフィール
橋本 進(はしもと すすむ)
略暦
昭和 3年(1928) 香川県に生まれる
昭和20年(1945) 高等商船学校 航海科入学
昭和24年(1949) 同校 同科卒業
同年 運輸省航海訓練所入所
昭和43年(1968) 航海訓練所 教授
昭和47年(1972) 船長
爾来、練習汽船「大成丸」、練習船「日本丸」、練習汽船「北斗丸」船長等を歴任
昭和51年(1976) ニューヨーク・ハドソン河におけるアメリカ独立200年記念パレードに日本丸船長として参加
昭和62年(1987) 東京商船大学 教授
平成 4年(1992) 定年退官
同年 医学博士(東京医科大学眼科)取得
(現在) (社)海洋会ボランティアクラブ代表幹事
著書
○航海図鑑:共著、海文堂、1969
○帆船図説―日本丸・海王丸の艤装と帆装―:海文堂、1979
○ボトルシップ―作り方・楽しみ方―:海文堂、1979
○船体関係図面の見方:共著、成山堂、1979
○国際航海のエチケット:共著、成山堂、1983
○漁船漁具避航図説:成山堂、1983
○操船の基礎:共著、海文堂、1988
○ロマンの海に漕ぎ出そう:舵社、1990
○視覚情報とヒューマンエラー:海文堂、1996
○咸臨丸還る―蒸気方・小杉雅之進の軌跡―:中央公論新社、2001
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