さらに沖に向かうと、泥っぽい地面はだんだんと砂混じりの地面に変化します。地面にはたくさんの小さな穴が開いており、穴の中からゴソゴソと1cm位の小さなカニがたくさん出てきます。コメツキガニやチゴガニです。ハサミを使って砂を口に運び、口の中にあるブラシ状の毛を使い、砂中の有機物だけをこしとって食べます。付近には、大きな白いハサミを振りながらダンスをするハクセンシオマネキがいます。このカニは雄だけが大きなハサミを持ちます。ハサミをリズミカルに動かす行動は、ウェービングと呼ばれ、雌に対する求愛行動や縄張りを守るための威嚇行動と言われています。
泥っぽい砂の中には、白く柔らかな殻をもつエビのような生物がすんでいます。英名でゴーストシュリンプ(幽霊エビ)と呼ばれるニホンスナモグリです。よく似た種類のアナジャコもいます。どちらも砂泥中に巣穴を掘って暮らします。他にも砂泥の中からはゴカイの仲間が数多く出てきます。波打ち際に近づくにつれ、地面はさらに砂っぽくなります。所々にある潮溜りにはハゼの仲間がいます。また、死んだ魚の肉を好んで食べるアラムシロガイが餌を求めてはい回っています。貝殻や砂粒がくっついた太さ1cm程の砂から顔を出しているパイプはゴカイの仲間であるスゴカイイソメのすみかです。
丸い甲羅が特徴的なマメコブシガニ、貝殻を背負ったユビナガホンヤドカリ等いろいろな生物がいます。砂の中には、アサリやシオフキガイなどの二枚貝が生息しています。
また干潟では、シギ類やチドリ類等、多くの鳥にも出会えます。シギ類やチドリ類は、その長いくちばしを使い、底生動物をつかまえて食べます。
このように干潟にはいろいろな環境があり、いろいろな生物が生活しています。
ここに紹介した生物は、干潟で見られる生物のほんの一部です。実際に干潟に出て観察すれば、より多くの生物に出会えるでしょう。運が良ければ、カブトガニのような珍しい生物にも出会えるかもしれません。
しかし、このように豊かな生産力と優れた浄化力を発揮する干潟も陸地のそばにあり、埋め立てに便利であるということで埋め立てられて、その面積は近年急激に減少しつつあります。
瀬戸内海の干潟面積の変化(せとうちネットより)
|