(2)計算結果
1)流況に及ぼす入射波特性や地形形状の影響
a)barが存在しない場合
表3.1.1におけるdepth10の地形上に表3.1.2のcase26(Ho= 1.0m, To=8.0s)の波を作用させた時の海浜流ベクトル分布を図3.1.45(a)に示す。また、その時の波高分布と平均水位分布も(b)および(c)に示す。これによるとbarが存在しない場合は汀線の凹部から離岸流が発生し、汀線凸部で向岸流が発生する様子が分かる。これは入射波が水深約1.5m付近でほぼ一様に砕波し、その後wave setupによって平均水位上昇が発生するが、波状汀線の影響により沿岸方向の水位の勾配が生じ、汀線凸部から凹部にかけての沿岸流が発生し、凹部で両端からきた沿岸流がぶつかり、それが沖方向に向かうために生じるものである。
b)barが存在する場合
一方、表3.1.1におけるdepth20の地形上に表3.1.2のcase26(Ho= 1.0m, To=8.0s)の波を作用させた時の海浜流ベクトル分布を図3.1.46(a)に示す。図3.1.45と同様にその時の波高分布と平均水位分布も(b)、(c)に示す。これによるとbarおよびrip channelが存在することによって汀線の凹部から離岸流が発生していることが分かる。これは波がbarの手前付近で一様に砕波し、barを通過することによる波の減勢のためにbar内の水位上昇度が非常に小さく、それによって沿岸方向の水位勾配が発生しないためbar内に海水が溜まり、逃げ場を失った海水がbarの切れ目(rip channel)を通って沖に流れ出ていくためである。入射波がcase26の時のbarが存在しない場合と存在する場合の汀線凹部における平均水位上昇の違いを図化したものを図3.1.47に示す。横軸は汀線からの離岸距離を表しており、図3.1.45、図3.1.46の離岸距離と対応している。この結果からもbarによる波の減勢によってbar内部における平均水位上昇の違いが明らかである。
また、図3.1.48にdepth20、case11(Ho= 0.5m, To= 8.0s)の時の数値計算結果を示す。この場合はcase26(Ho=1.0m, To= 8.0s)の結果と比較して明らかなように、汀線凸部からの離岸流の流速は小さく、汀線凹部から比較的強い離岸流が発生している。
これはcase26の時の入射波高1.0mに比べて0.5mと小さく、そのために1.0mの時にはbar上通過による波の減勢による影響が大きかったのに比べ、0.5mの時はその減勢が小さいことによりbar内部でのwave setupによる平均水位上昇が大きく、波状汀線の影響による沿岸方向の水位勾配が大きくなり汀線凸部から凹部に流れる沿岸流が発生したためであると考えられる。そこで図3.1.49にcase26(Ho= 0.5m, To= 8.0s)とcase11(Ho= 1.0m, To= 8.0s)の時の汀線から22.5mの地点の沿岸方向平均水位を示す。これから明らかなように波高が0.5mの時に比べて1.0mの時のほうが沿岸方向の平均水位勾配が大きいことが分かる。これによる沿岸流の大きさの違いにより汀線凹部で離岸流が発生するのか汀線凹部と凸部の両方で離岸流が発生するのかどうかが決定することが分かる。
図3.1.45 計算結果
(depth10, case11) |
図3.1.46 計算結果
(depth20, case11) |
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図3.1.47 barの有無による平均水位の違い(汀線凹部、case26)
図3.1.48 計算結果(depth26, case11)
(a)海浜流ベクトル
(b)波高
(c)平均水位
図3.1.49 沿岸方向平均水位(汀線から22.5mの地点)
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