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3.1.3 数値計算による海浜流予測
(1)数値計算の目的及び手法
1)数値計算の目的
 前述の実測結果等によると、離岸流が発生する原因は、構造物や海底地形である場合が多い。特にlarge cuspのような沿岸方向の水深の非一様性が局所的な波の集中を発生させ、結果的に海水の循環系を発生させる原因となる。そこで様々な規模の波状汀線を有する海底地形を人工的に形成し、海浜流を発生させ、入射波や地形がどのような条件の時に特に強い循環流が得られるのかを検討することを目的とする。
 
2)初期地形の作成方法
 数値計算は、まず非定常緩勾配方程式に基づき波浪場の変形計算を行い、radiation stressを計算し、海浜流基礎式を解くという従来の方法を用いて行った。
 また、実測を行った浦富海岸などのように現地の海底地形は、その変化速度が非常に速く、時々刻々変化するため、詳細な深浅測量を行うことが難しい。したがって、計算で与える海底地形は、汀線がいくつかの振幅と波長を有する正弦的に変化す看仮想的なモデル地形(図3.1.44)を作成した。モデル地形は式(5.1)に示す関数によって作成した。
depth =
max
((d1(平均地形)+ d2(鉛直方向波状地形), d3(沿岸砂洲))
max(x, y)はxとyのうち大きい方を値にとる関数
a)平均地形
 2/3乗則を用いて海底地形を作成する。
d1=Ax2/3 (x≧0)
ただし、Xは汀線からの離岸距離である。また、X<Oの時は
d1=0.186x (x < 0)
を使用した。
 
図3.1.44 波状汀線初期地形
(a)波状汀線
 
(b)代表断面形状
 
(c)平面形状(barなし)
 
(d)平面形状(barあり)
 
b)沿岸方向波状地形(図3.1.44(a))
 large cuspを模して波状汀線を作成する。
 
 
c1:波状汀線振幅
xw:汀線からの波状地形影響長
λ:波状汀線波長
 
c)沿岸砂州(図3.1.44(b))
 武田ら(1984)によるとメガカスプに対応するbarは全て波状汀線の凹部で分断し、汀線凹部でしか離岸流が発生しないことになっている。しかし、2003年の浦富海岸における現地調査では図3.1.32に示したように汀線凸部でbarの切れ目が形成され、そのrip channelによって汀線凸部から離岸流が発生している状況がビデオ画像により観測されている。
 そこで汀線凸部(apex部)から発生する離岸流を再現するために、汀線凸部にrip channel(ここだけ砂州が存在しない)を有した砂州を設ける。
 
 
b:barの高さ
xb:bar設置位置の汀線からの離岸距離
bw:barの幅
 
2)基礎式
a)非定常緩勾配方程式
 非定常緩勾配方程式として、これまでに西村ら(1983)、および渡辺ら(1984)により、2種類の方程式が提案されている。西村らは,はじめに線流量から方程式に相当する式を導き、これを緩勾配方程式に代入することにより連続式に相当する式を導いた。
 
 
η:水面変動量
Q':海底勾配の0次のオーダーを満たす線流量ベクトル
c: 波速ベクトル
n: 浅水度係数
 
b)海浜流基礎方程式
 海浜流の計算は、流体運動の連続方程式およびNavier-Stokes方程式を水深方向に積分し、時間平均をとって得られる基礎方程式に基づいて行った。静水面汀線方向にy軸、汀線直角沖方向にx軸、鉛直方向にz軸をとった座標系において水深をhとすると、数波にわたって時間平均された平均水位変動量および海浜流のx軸、y軸方向流速成分UVに対する基礎式は以下のようになる。
 
 
 渦動粘性係数は、Longuet-Higginsらに倣い次式を用いる。
 
 
 ここに、tanθは海底勾配、Nは無次元定数で0 < N < 0.016の値をとるといわれている。また、底部せん断力は、椹木らによって提案されている次式を用いる。
 
 
 ここに、Uwは波による底部水粒子速度振幅、fwは摩擦係数で、Swartによる次式を用いる。
 
 
 式中のamは水底での水粒子軌道の最大振幅、ksは粗度高さである。
 
4)諸元
 数値計算の諸元として、まず表3.1.1に示すような水深データを作成した。ここで波数とは波状汀線の沿岸方向の波の数である。また、水深10mの地点で海底勾配(tanβ)が0.01になるように格子点間隔を2.5mの等方格子に設定し、barを設置する場合はその水深hbを0.77mとなるように設定した。波状汀線の影響範囲XWついては入射波高1m、周期6.0sの時の砕波水深を基準として約1.36m以深が沿岸方向に対して一様水深となるように50mに設定した。そして、その地形それぞれに対して表3.1.2に示す波を入射させ、波浪場の変形計算および海浜流の計算を行った。
 
表3.1.1 初期地形条件
地形条件
λ
(m)
η
(m)
波数 bar λ
(m)
η
(m)
波数 bar
depth1 100 5 5.5 なし depth17 100 5 5.5 あり
depth2 10 depth18 10
depth3 150 7.5 3.5 depth19 150 7.5 3.5
depth4 15 depth20 15
depth5 200 10 3.5 depth21 200 10 3.5
depth6 20 depth22 20
depth7 250 12.5 3.5 depth23 250 12.5 3.5
depth8 25 depth24 25
depth9 300 15 3.5 depth25 300 15 3.5
depth10 30 depth26 30
depth11 350 17.5 3.5 depth27 350 17.5 3.5
depth12 35 depth28 35
depth13 400 20 3.5 depth29 400 20 3.5
depth14 40 depth30 40
depth15 450 22.5 3.5 depth31 450 22.5 3.5
depth16 45 depth32 45
)bar頂部の水深は0.77m
 
表3.1.2 入射波条件
入射波条件
Ho
(m)
To
(s)
Ho
(m)
To
(s)
Ho
(m)
To
(s)
case1 50 3.0 case16 100 3.0 case31 150 3.0
case2 3.5 case17 3.5 case32 3.5
case3 4.0 case18 4.0 case33 4.0
case4 4.5 case19 4.5 case34 4.5
case5 5.0 case20 5.0 case35 5.0
case6 5.5 case21 5.5 case36 5.5
case7 6.0 case22 6.0 case37 6.0
case8 6.5 case23 6.5 case38 6.5
case9 7.0 case24 7.0 case39 7.0
case10 7.5 case25 7.5 case40 7.5
case11 8.0 case26 8.0 case41 8.0
case12 8.5 case27 8.5 case42 8.5
case13 9.0 case28 9.0 case43 9.0
case14 9.5 case29 9.5 case44 9.5
case15 10.0 case30 10.0 case45 10.0


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