第3部 今後の推進事業の進め方と方針について
今後の酒害・薬害教育プログラムの推進方法について
我々は,平成15年度から3か年計画で,日本財団の全面的なバックアップを得て,これまでの医療・福祉のプログラム等を参考としながら,本事業において研究や検討会を繰り返し,更生保護施設に独自の効果的な酒害・薬害教育プログラムの確立を模索してきました。その途中結果が,本書で示されている10の活動実施施設の取組などです。
しかし,本書を見て,在所期間や職員体制が限定されており,自分のところの更生保護施設での実施は難しいと考えられる方もいらっしゃるでしょう。我々も議論の中で,医療・福祉機関の様な治療的措置を完全に行うことや,多大なコストを要するプログラムを確立しても現実的ではないという結論に至りました。つまり,各更生保護施設が置かれている状況に応じた複数のプログラムを用意し,できるところから実施するという方向で本事業を展開していくという結論となりました。
そこで,本事業の最終年度となる平成17年度は,モデルとなるプログラムの確立と,プログラムの普及を主眼として次の事業を展開していきたいと考えています。
(1)酒害・薬害教育プログラムのモデル施設数の拡大及びプログラムの普及
酒害・薬害教育プログラムを実施する更生保護施設をさらに拡大し,プログラムの中身をさらに充実させることに加え,これらの施設を同プログラムの全国普及の核としていきたいと考えています。
(2)酒害・薬害教育プログラムの導入用マニュアルの作成
酒害・薬害教育プログラム実施施設の検討結果をもとに酒害・薬害教育プログラムの導入用のマニュアルを作成し,未実施施設における円滑なプログラムの導入及び適正な実施を図っていきたいと考えています。
また,作成する導入マニュアルは,これまでの実施施設の研究等を踏まえて,更生保護施設での実状にあわせたプログラムが実施できるよう,複数モデルを提示するとともに,マニュアルには更生保護施設から退所した後に「つなぐ」ための社会資源の情報も掲載したいと考えています。
例えば,マニュアルの基本的な構成は,次のようなものを考えています。
○施設職員自らがアルコール依存・薬物依存についての知識や回復への措置についてただしく「知る」
○回復に向けての正しい動機付けを行い,本人に依存の問題があることを「気付かせる」
○本人に酒害・薬害の正しい知識を付与し,依存を断ち切るための手立てを「学ばせる」
○施設を退所した後に,本人が回復のための努力を継続させるために医療・福祉的措置が受けられるよう「つなぐ」
平成16年度の活動実施施設の職員の方々からは,「プログラム導入時には苦労したが,実施してみると明らかに効果が伺える」との話がよく聞かれます。また,実施コストを抑える様々な工夫もされており,対費用効果も上がっていると認められ,我々は,近い将来,この酒害・薬害教育プログラムが,SSTと並ぶ更生保護施設の処遇の目玉となるだろうと実感しています。
本書を読まれ,少しでも関心を持たれた方は,まず試しに実施してみることを是非お勧めしたいと思います。また,これから策定作業に入るマニュアルについても御期待いただきたいと思います。
|