はじめに
我が国の航路標識に対する各方面の要請に応えるべく、航路標識の国際的動向等の把握を行い、我が国の航路標識事業の発展を図り、海上交通の安全と効率化に寄与するため、平成16年9月及び平成17年3月、パリの国際航路標識協会(IALA)本部において開催されたIALA第15回AIS委員会及び第16回AIS委員会に、当協会から理事佐藤辰雄が出席しましたのでその概要を報告します。
平成17年 6月
財団法人 日本航路標識協会
第I部 IALA第15回AIS委員会報告書
2004年8月30日(月)から9月3日(金)まで
IALA本部(フランス国パリ近郊サン・ジェルマン・アン・レイ)
41名(詳細は別添資料1のとおり、他にIALA事務局1名)
(開始当初は35名で始まったが、最終的には41名まで参加者が増えた。IALA AIS15の後半にIEC TC80 WG14が同時開催されたため、それによる参加者が増加した。全体としてはAIS14から参加している中国、上海からの参加者を除いては従来どおりの状況であった。)
5日間の委員会は次の日程により進められた。
月日 |
午前 |
午後 |
8月30日 |
事前準備 |
全体会議 |
8月31日 |
全体会議 、作業部会 |
作業部会 |
9月1日 |
作業部会 |
作業部会 |
9月2日 |
作業部会 |
作業部会、全体会議 |
9月3日 |
最終全体会議 |
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(1)委員長(ニック・ワード トリニテイハウス)から開会の宣言の後、事務局から会議運営にあたり無線LANシステム導入の説明とその活用要請と、会議場の安全確保のための留意事項及び会議スケジュールなど会議運営上必要な事項の説明がなされ、引き続き事務局長からAISの普及に関連して、AIS SOLAS 条約以外のAIS装置には国際特許IPR(International Property Rights:)問題が存在していることを含め、会議の成果を期待している旨挨拶があった。
(2)事務局長の挨拶の後、IALAが新たに制作したプロモーション用DVDビデオを併用し、IALAの役割やどのようにIALAが国際的に活躍し、将来の発展に貢献していくべきかをPRした。
(3)参加者全員の自己紹介が行われた後、今回参加の出来なかった関係者の紹介が行われ、特にリハビリ中の副委員長ベニ−氏は、かなり回復している状況が報告され、次回の会議には出席できるであろうとのことであった。
(4)先週、8月22日の週にカナダのモントリオールで開催された、IEC TC80 WG8A において検討されているCSTDMA方式のクラスB AISの規格化進捗状況について、アラン・スチュアートから概要が報告された。
また、その実証試験が38週目(9月20日の週)にドイツのBSHで、42週目(10月18日の週)に米国とスコットランドで実施予定であること、2005年1月末のWG14にてCD(Committee Draft)を完成予定されているとのことであるが、SOTDMAについても検討が行われているとのことである。次回は、11月中旬ハンブルグで開催予定とのことである。
(5)前回会議での活動項目の進捗と先回理事会からの検討要請事項の確認
項目に従ってその進捗状況を確認するとともに、先回第34回理事会からの検討要請事項の確認を行った。
AIS委員会の将来像に関しての報告は特になし。少なくともAIS17までは継続が成される模様である。(2006年5月のIALA総会で決まるのではないか)
(6)入力文書の確認と事業計画の見直し
リストに従い入力文書を確認した。また、作業計画では、ITU-R M.1371-1の改訂予定を2005年のITU-R会議で実施を予定しているため、必要な改訂提案項目の完了を次回のAIS16で完了することでスケジュールを計画することとなった。
(7)各国の管理官庁からAIS整備の現状が報告され、日本からは別途用意していた資料(ppt)をもとにAIS陸上局の整備計画を紹介し、また、東京湾海上交通センターが本年7月から業務を開始した事を紹介した。
各国のAIS整備の現状は次のとおり。
オランダ・・・既存のGMDSSネットワークとは別にAISネットワークを整備しデータ交換を試行中、また、隣国ベルギーとの間のネットワークを構築。
ドイツ・・・既設のVTSにAISを組込み、外洋/内陸を統合した海事関係業務の運用を2005年から開始する予定。
ロシア・・・・バルト海に6局、フィンランド湾に5局、カスピ海に1局、黒海に2局、極東に6局のAIS陸上局を整備、このうちフィンランドとのネットワークは2004年中に完了する予定、また、2005年7月運用開始のHERICOMネットワークに参加。
オーストラリア・・・グレートバリアリーフを対象としたAIS陸上局を2005年7月までにあと2局増設予定。
フィンランド・・・国内29局のAIS陸上局のネットワークを完了、また、2005年7月のHERICOMネットワークに参加。
スコットランド・・・灯浮標にAISを搭載し実運用を実施中。
カナダ・・・カナダ沿岸警備隊管理のAIS陸上局は16局が運用中、セントローレンスは民間管理で運用中。
フランス・・・フランス沿岸を対象としたAIS陸上局の置局調査設計を2005年に実施予定。(軍関係)
ノールウェー・・・国内14局のAIS陸上局のネットワークを2004年中に完了予定、また、2005年7月のHERICOMネットワークに参加。
南アフリカ・・・ケープタウン等で2局のAIS陸上局の増設計画があるが、既設のVTSとは連携していない。
イギリス・・・ドーバー海峡を対象に4局のAIS陸上局で2006年に運用開始を予定。
中国・・・上海港を対象とした2局のAIS陸上局の増設を2004年中に完了、合計6局で運用中。参考として500km離れた韓国からのAISを受信することがある。
デンマーク・・・5局のAIS陸上局を整備、2005年中旬までに表示、AIS管理システムを完成予定、また、2005年7月のHERICOMネットワークに参加。
スペイン・・・ポルトガルとの間で大西洋側を対象としたAIS陸上局ネットワークシステムの開発を推進中。
なお、今回は本委員会に引き続き、AIS・クラスB局、AIS陸上局、航路標識AIS局等の技術関係を検討するIECのTC80WG14が8月4日から9月6日まで開催された。
(8)作業部会設置と作業部会議長の選出
次の2つの作業部会が設置されました。
* 技術的な作業部会(TWG)議長、ヴィムバン、デ、ハイデン氏
* 運用作業部会(OPsWG)議長、マヘッシュ、アリムチャンダニ氏
(9)プレゼンテーション
ドイツから「New Generic System Architecture for Marine Traffic Technology」と題したプレゼンテーションのほか、2件の発表があった。
各プレゼンテーションの概要は、次のとおりである。
イ New Generic System Architecture for Marine Traffic Technology
ドイツのオルトマン氏から、既設のVTSを含めた海事関係業務にかかるシステムリニューアルの考え方、情報の収集、処理、利用者への航行支援情報の提供の各プロセスにおいて、AISが如何に機能するかについて発表があった。(資料添付なし)
ロ Safe Sea Net(SSN)European Maritime Sefety Agency(EMSA)
EUのバーガンダー氏から、海上の安全、公害の防止、運航効率の向上を目的とし、ヨーロッパを5つの地域に分割したSafeSeaNet(SSN)なる情報交換網についての発表があり、2005年中には関係各国で運用を開始するとのことであった。
ハ Helcom-Helsinkini Commission
スウェーデンのゼッターバーク氏から、バルチック海沿岸10カ国(オランダ、デンマーク、ドイツ、ポーランド、リトアニア、エストニア、ロシア、フィンランド、スウェーデン、ノールウェー)が参加して構築するAIS情報のデータ交換網(HELICOMネットワークシステム)についての発表があり、2005年7月1日からの運用開始を目途に整備を進めているとのことであった。
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