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本報告書について
 この報告書は、日本財団の補助金を受けて、社団法人日本青少年育成協会が、平成16年度事業として実施した「不登校生の進路相談情報センターの確立」の実施過程と結果をまとめたものである。
 この事業は、近年深刻度を深めている不登校生の進路問題を解決するべく、訪問調査と言う方法で全国各地の情報を収集し、是を提供すると共に、その場で相談に応ずることを目的として実施している。
 12万7千人の不登校生への対応として、当協会では今までに「もうひとつの進路相談会」「不登校生の進路と社会参加のネットワークづくり」という事業を行い、全国各地で彼等の相談にのってきた。しかし情報収集という点でまだまだ不十分なことと、各地でいつでも相談にのり、情報提供が出来る場が必要と考え、3年間の事業として、本年度は2年目を迎えたものである。
 本事業実施にあたっては、1年間に渡り多大なご支援をいただいた各地の民間施設の方々、本事業を逐次報道してくださったマスコミ各社、事業の実施から本報告書への資料提供までご協力くださった各地のプロジェクト委員の方々に厚く御礼申し上げる次第である。
 地域のネットワークを形成するのは、社会に対する影響力の強いマスコミ各社のご協力次第といっても過言ではない。マスコミを通じて、全国の方々がこの活動に興味を持ち、本報告書が活用されることを切に願っている。
 最後に、この事業を支えてくださった近藤専務理事と事務局の加藤氏、各地の相談情報センターのボランティアの方々、理事・支部長、相談室のカウンセラー、会員と相談ボランティアの方々、研修でご指導くださった上石、上薗、小林、蜂屋、柳澤の各先生方とAPLピアカウンセリング研究会の皆様に心から感謝するものである。
平成17年3月
社団法人 日本青少年育成協会
会長 田中 潤治
 
はじめに
社団法人 日本青少年育成協会
専務理事 近藤 正隆
 
 文部科学省発表の学校基本調査によれば、全国の不登校生は12万7千人を数え、平成14年度調査以降は減少となったが、それを実感するには至っていない。
 本協会では10年前から「もう一つの進路相談会」という形で、全国各地で不登校生、高校中退者の進路の相談にのってきた。当初は学校に行けなくなった人の進学相談が中心であったので、不登校生、中退生を受け入れている教育機関の先生方に呼びかけ、相談にのっていただいた。
 ところが5年程前から相談内容が変わってきた。第1に相談者の年齢が小学生から40代までと拡がった。第2に、これに伴う「ひきこもり」「大学生の不登校」「出社拒否」「卒業後、退職後のニートの問題」など相談が複雑になった。第3に自閉症、強迫神経症、摂食障害、対人恐怖、LD、ADHD、アスペルガー症候群等かなりの専門的な領域が増加し、社会参加が困難となる人の相談が激増した。
 これら全てが不登校と因果関係があるとは言えないが、その多くは不登校の原因となるか、あるいは不登校の結果、その延長線上にあると思われる。
 そこで本協会では、平成12年度から3年間日本財団の支援を受けて、「不登校生の進路と社会参加のネットワークづくり」というテーマで、ネットワークづくりのシンポジウム、社会参加希望者の相談会と研修を行ってきた。
 一昨年6月これらを基に「もう一つの進路と社会参加全ガイド」を出版した。
 更に本書には、不登校経験者による「相談ボランティア」の今年度応募者の研修の様子を収録している。この方々はかつて不登校で苦しんだり、何らかの形で不登校に関わった人たちであり、現在苦悩の真只中にいる人達の相談にのってほしいと思い、公募した結果ボランティアとして集まってくれたものである。この方々に、不登校であった当事の状態と、ボランティアとして活動する場合の可能な相談方法などのアンケートにも協力していただいている。
 この方々にカウンセリング技法を学んでもらうために、名のボランティアが全国5ケ所で研修を受けた。この20時間の研修後、更に高度のカウンセリング技術を身につけたいというボランティアに対し、3月まで期間を延長して計64時間の研修を行った。この研修を指導していただいた柳澤先生に深く感謝するものである。
 また沖縄では今年度の研修の予定はなかったが、ボランティアさんたちが大変熱心で、自分たちで研修費を集めて上石先生を呼び、スキルアップ研修を受けた。
 文部科学省も昨年度から「スクーリング・サポート・ネットワーク(SSN)」という不登校対策の新事業をスタートさせ、10月18日には全国の教育委員会関係者187名が参加して連絡協議会が開かれた。私も当日は「NPO・民間施設を含めた地域との連携」の指導助言協力者という形で参加したので、その内容も本書で若干触れている。
 SSNは主に公的機関のネットワークづくりを目指しているが、私どもでは民間施設の情報収集とその提供を目指している。そこでこの両者が連携することで、不登校生に対する支援が可能になると考え、当協会では報告会当日、昨年度作成した地域版パンフレットを全参加者に配布した。今年度も文部科学省を初め、各県・市の教育センター約200箇所すべてに本書とパンフレットを送る予定である。
 全国300箇所の訪問調査を行い、10ヶ所の相談情報センターを設置することは、今まで手がけられていない大掛かりな事業である。しかし誰かがやらねばならない。それだけに我々のこのプロジェクトは重要である。2年間ではまだ道半ばである。しかし少なくともそのきっかけを作ったと確信している。
 上記の報告会に民間から唯一参加し、今年2月28日には文部科学省主催事業の「全国不登校フォーラム」にもパネリストとして招かれた。更に本書で紹介するように、東京都、京都府、沖縄県からも様々な依頼を受けた。これは正にこのプロジェクトから生まれたものであることを報告しておきたい。
 以上、1年間の活動を極力お伝えしようと考え、まとめたものである。







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