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我が家の里親信条
 それぞれのご家庭での子どもの養育に対する信条はどんなことですか?
 我が家はこんな養育をめざしている、こんなことは絶対ゆずらない決まりがあるなど、心に決めていることについて投稿いただきました。
 
 私の子育ての基本は、「人生っていいなぁ」とか、「生きてるっていいなぁ」とか、「生まれてきてよかった」とか、実感できる瞬間を、できるだけ多く子供たちに与えたい、ということです。その経験の積み重ねが、子供たちの生きる力の貯金になると思っています。
 具体的には、積極的に、楽しい経験ができるよう企画するとか、普段の生活は質素でも、人生を楽しむことにはお金を惜しまないとか、子供がそういう瞬間を持てたときに、「良かったね」と一緒に喜んだり、誉めたりして、その経験が良い思い出として定着するよう努めたりしています。
 私は、3人の里子以外に2人の実子を育てていますが、この信条は、実子、里子の区別なく、子供を育てる上でもっとも大切なことだと思っています。
(京都市里親会 T. T)
 
 私の子育て信条は実子を育てているときから変わりません。
1. こどもが将来一人で生きていける力、知恵をつけてやること。
2. 他人に迷惑をかけないで生きていける躾をしっかりすること。
3. 心と身体が健康であれば生きていける。
が私の子育ての基本です。
 社会で生きてゆくためには信頼される、信頼することが大切です。そのために、約束は守る、嘘はつかない、さらにルールを守る、を重視して育ててきました。
 現在養育中のこどもはつらく悲しい環境で育ち、中学2年の冬に我家にきました。
 躾も、教育も実子のときのようにはいきません。すぐに固まってしまい何も受け付けてくれませんでした。それでも根気よく話し、態度で示しています。薄皮が剥がれるように少しずつ明るくなり話もできるようになりました。この正月は郵便局でアルバイトをしています。
 実子2人はすでに結婚し孫も5人おります。
 この子も立派な社会人となり、結婚し幸せな家庭を築いてほしいと願っています。そのためには、どんなに時間がかかろうと、私の子育て信条を貫くつもりです。
(岩手県里親会 T. T)
 
「まずい」は禁句
 7才と5才の姉妹を養護施設から受け入れて一週間目、妹の方が夕食の煮物を口にするや「まじっ」(まずい)とはき出した。その態度の横柄さに、夫も私も驚いた。
 私が育った家庭では「まずい」というのは、禁句であった。それを子どもが口にした時の叱り手は、祖母と父であった。そのことに口答えでもしようものなら大変だった。正座させられ謝るまでは、食事も与えられなかった。祖母と父と母に頭をさげて謝った。
 例えばご飯の、米一粒にどれほど多くの手にかかっているか。肉にしろ魚にしろ野菜にしても、私たちが口にするものすべては、それらの物の命そのものではないか。少しでもおいしく食べてもらいたいと、心をこめて料理してくださる人の気持ちも考えないで「まずい」とは何事かということであった。但し味付に関しての注文は小言と見なされず、「まずい」というのが禁句であった。
 夫もやはり同じような環境で育ち、実子を育てる過程でも「まずい」というのは、我が家では死語に近い言葉だった。
 私をにらむようにしていた子の手にとり、これらのことを話した。目をそらそうとする子も、何度も私の目を見てと促しながら、解ってもらいたい一心で話した。
 結果は、効果てきめん。食前と食後の挨拶も自然にできるようになり、嫌いだった食べ物も一ヶ月を経た頃には大好きになっていた。
(愛知県里親連合会 S. Y)
 
 意思表示が苦手な幼児がいます。最後まで要求を正確に言わないと何もしてもらえないというのがルールです。
 子どもがチョコレートが欲しいという場面がありました。大人として子どもの気持ちを推量できますが、先回りして「あなたはチョコレートが欲しいんだよね!」と言ってチョコレートを渡すことは決してしません。困ったときに、「泣けば誰かがやってくれる」というのも駄目です。里父が「コーヒー」と言ってもいれません。「コーヒーをいれてください」と言うように見本を示してもらっています。
 子どもが近所の方にお会いしたとき、自分から先に挨拶をさせるように教えています。普段から里父母が見本を見せています。里父母から子どもたちに対する挨拶も、返事が返ってくるまで何度でも繰り返して行います。
 大人が、いつも率先して子どもの手本となるよう行動をしています。
(川崎市あゆみの会 A)
 
皆様の「我が家の里親信条」の投稿をお待ちしています
 
〜送り先〜 〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7-856
(財)全国里親会 里親だより事務局宛
FAX03-3404-2034 e-mail: zenkoku-satooya@cnr.ne.jp
 
★海外里親事情
〜乳児に施設はいらない〜No babies in institutions 〜
 国際里親養育機構(International Foster Care Organization, 略してI.F.C.O)の理事長であるクリス・ガーディナー氏(President Chris Gardiner)が昨年9月ジュネーブで開かれた「児童の権利に関する国連会議」で首題の提言を行いました。
 その序文で彼は「家庭こそが全ての人々特に児童にとって基礎的な単位であり、人々の自然発生的な成長、幸福、理解を招く環境であります」「それなのに何故未だ乳児や幼児が世界のあちこちで施設にいるのでしょうか」「何故ヨーロッパの同じような背景や財政の事情があっても3歳未満児のあるパーセントの乳幼児が異なった処遇をうけているのでしょうか」
 「私達国際里親養育機構は国連に対しても加盟国に対しても、またユニセフに対しても、是非短期間のうちに、乳児院を脱却しファミリーグループホームや能力のある里親の許に乳児が送られるよう要請いたしました。」と、述べております。
 なお、国際里親養育機構は1979年世界各国の里親会をメンバーとして発足し現在の加盟国は約60国であり世界唯一の里親会組織であります。その定例大会は隔年開催され、本年はアメリカ、ウィスコンシン州において第14回大会が開催されます。
 
★各県里親会のホームページ 各地の里親会の活動がご覧いただけます。
埼玉県里親会 http://www.carinavi.org/satooya
長崎県里親会 http://www1.bbiq.jp/plum12/nsk/
 
編集後記
 児童福祉法改正によって里親制度が正式に認められることになりましたが、嬉しいと言うよりはあまりに遅すぎたのでは、という思いがあります。また、乳児院の存在を積極的に認めていく改正には問題があります。子どもが家庭的な環境で養育される日がくるのはまだ遠い先なのでしょうか。最も早く夜が明ける極東の国なのに。(K)
 
 昨年は、半世紀を迎えた全国里親大会、そして児童福祉法の改正と大きな出来事のあった1年でした。まだまだ問題は山積していますが、来年度も全国の里親会が連携して里親が多くの方に認知され、里子を取り巻く環境がよりよくなるよう願わずにはいられません。新たな一歩を踏み出した里親会にご協力をお願いします。(M)







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