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全米里親フロリダ大会と日本の里子たち
 5月中旬に行われたフロリダでの全米里親大会参加は、アン基金プロジェクトとして初めての里子海外派遣であった。これは過去3回に渡って行われた、全国里親会主催の里子海外研修を引き継ぐ気持ちが強かった。
 その3回とは、1999、2000、2001年と続けて行われた国際里親大会、アメリカ里子大会などへの参加であったが、アン基金プロジェクトはいずれの場合も、少額ではあったが助成金を出し支援してきた経緯がある。その後の彼らの成長振りは、全国里子会結成、各地域ブロックでの里子交流となって、全国里親会、県里親会の後ろ盾を得てではあったが、その成果を表した。もちろん子どもの踏んでいる人生のステージがそれぞれ違うので、里子会に参加しない場合でも、各自の人生に多大な良い影響を与えている。
 何が彼らを動かしたのであろうか?―派遣直後のアン基金プロジェクト主催の報告会とその後から見えてくるのは次の様なことである。
1 自分達の仲間が世界中にいる、私達はひとりぽっちじゃないんだ、という広い連帯感
2 海外の子どもたちの生き生きした発言、態度から、里子・養子であることは何も恥ずかしいことではない、堂々と生きていっていいんだ、という自信への目覚め
3 何より約1週間、行動を共にする同じ立場の子ども達と深く知り合うことによる、仲間意識
 
 ここ5年間に渡って彼らを見守り続けてきた者として、この海外派遣は何者にも代えがたい貴重な経験・学習を里子達に残し、記すことを知って、3回で打ち切られてしまったのは残念でならない。今回小さいながらも里親子支援団体として、海外派遣を実施できたのは、ひとえに過去の豊富な経験を持つ全国里親会の指導・協力とアン基金プロジェクト里子海外派遣事業への支援金を寄せてくださった多くの皆様方のお陰である。
 今回は、高校生男女2名、OB(社会人)男女2名の4名を派遣でき、里親参加者は全国里親会長夫妻ほか2名、アン基金側4名の合計12名という陣容であった。フロリダ大会内容の詳細については、広報誌アン基金通信16号やホームページ http://ankikin.hp.infoseek.co.jpと、日本子ども家庭総合研究所のホームページ「愛育ねっと」子育て支援の実践・トピックス http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyou/contents/topics/ をご覧いただきたい。また、10月9日の全国里親大会50周年記念大会に付設して開かれる全国里親研究協議会の分科会にて、参加した子ども達により直接報告が行われました。
 
NPO法人里親子支援のアン基金プロジェクト
副理事長 坂本 和子
 
 今年で2回目となるキャンプは、平成16年度日本財団助成事業里子会「全国集会」を併設して行われ、昨年の倍のたくさんの参加者が全国から集まりました。
 正面に富士山をのぞむロッジは、島津邸別荘跡の敷地内に森と湖に囲まれていてとても素晴らしい舞台となりました。
 食事は節約型でちょっぴり足りなめでしたが、湖上花火大会、樹海ハイキング、夜の講演と、盛りだくさんでした。大切なセッションではお互いに仲良くなり、体験などを話しあうことができました。食事後、歌の好きな人が朗々と歌い始め三線、ピアノも加わって、にぎやかになりました。
 年齢が14歳から25歳と巾がありましたが、リーダーたちの陰ながらの努力の甲斐あって、無事に終えることができました。
 
 里親さんから、こんなことがやってみたいという声を拾い、疑問に答えてみました。参考になれば幸いです。また、難しい場合でも「こんな工夫をすれば可能です」などのご意見がいただければ歓迎です。
 
〈ファミリーグループホームを始めたい〉
Q: 複数の子どもを預かるようになって、ファミリーグループホームというものに興味をもちました。でも里親仲間から聞いただけで、どんなものかよく分かりません。どうしたらファミリーグループホームを始めることができるのですか。またそのメリットはなんですか。
A: 「子ども大好き!」という里親さんから、同様のお話をよく聞くことがあります。でも、まだ一部の地域での取り組みで、実際にはよく分からない、という里親さんが多いですね。
 子どもの養育を目的にしたグループホームには里親型と施設型があって、ファミリーグループホームとは里親型のグループホームのことです。児童養護施設と里親制度の中間的なものとお考えください。一般に養育里親の制度を活かして4人から6人の子どもを預かる仕組みになっています。ファミリーグループホームに認定されると、一般の里親以上の各種助成が受けられます。
 この制度はまだ全国的な制度にはなっていません。地方自治体単位で制度を作っていますので、内容も地方自治体によって異なっています。この辺に、ファミリーグループのことがよく分からない原因があるのでしょう。
 把握している限りでは茨城県(2)、千葉県(2)、東京都(11)、横浜市(9)、川崎市(6)、群馬(2)の合計32箇所(横浜にはファミリーグループホームに似た施設分園型のホームがありここには含んでいません)。と、なぜか関東エリアに限られています。
 この地域に在住の方は「ファミリーグループホームをやってみたい」ということを最寄りの児童相談所に話してみてください。養育経験など資格要件があると思います。なお部屋数などについても定めがあり、「制度の実施要綱」を確認してみましょう。
 上記エリア以外に山梨県と千葉市が要望中とのことです。まだ計画のない地方自治体では、ぜひ里親会などを通じて行政に強く要望していきましょう。
 なおファミリーグループホームに認定されると、さまざまな名目で助成が受けられますが、これについても地方自治体によって大きく異なり、一概には言えません。
 なお蛇足になりますが、ファミリーグループホームと言った場合には、心身障害者や高齢者のファミリーグループの方が一般的で、必ずしも児童養護のためにだけ使われるものではありません。
 
〈専門里親になりたい〉
Q: 被虐待児童とみられる子どもを受託しました。この機会に専門里親として勉強してみたいと思うのですが、どうしたら専門里親になることができるのですか。
A: 多くの里親さんが被虐待児を受け入れていると思います。育てにくい子どもをみていて、専門的な知識があったら、と思う里親さんも多いことでしょう。現実に、専門里親を志す人のなかに「被虐待児とみられる子どもを受託しているので」という人が多くいます。本来は、新しく被虐待児を受け入れるための制度なのですが、なかなかそのようには機能していないようです。
 専門里親の制度は一昨年の省令で、被虐待児の養育などを行なうために作られたものです。養育経験3年以上というのが資格要件で、通信教育、スクーリング、児童養護施設などでの実習が義務づけられています。認定後2年間で更新する制度となっています。都道府県市から研修費など助成される場合がありますから、最寄りの児童相談所に相談してみてはいかがでしょうか。また、もし専門里親に認定された里親さんが近くにいる場合は、研修や実習がどうだったのかなど、聞いてみることをお勧めします。
 すでに被虐待児と見られる子どもを受託しているということですが、場合によっては追認されるケースはあるものの、その判定は児童相談所が行なうものです。受託人数に制限があり、実子、受託児童を含めて2人以内となっていますし、受託期間も原則2年までとなっています。まだスタートしたばかりで、全国で100余名の専門里親が認定登録されているのですが、受託数は十数人にとどまっています。制度はできたものの、適切な制度運営にはまだ時間がかかるものと思われます。
 
〈自立支援ホームを作りたい〉
Q: アパートを経営していたので使っていない部屋が数部屋あります。年をとってきたこともあり、今後は里親として子どもを受託するより、成人して児童養護施設や里親から巣立った若者たちの自立支援をやってみたいと思います。そうした場合、行政から何か支援はあるのでしょうか。
A: 国の制度としては「自立援助ホーム」に対して助成があります。「児童自立生活援助事業実施要綱」によると、運営主体は地方公共団体及び社会福祉法人となっていて、法人格を必要とするようです。里親が自立援助ホームを立ち上げられた例もあるようですが、法人の運営が前提になるようです。
 それはともかくとして、児童養護施設などを退所して自立していく青少年のアパート探しはとても困難で、大変貴重な活動と言えます。
 
〈里親サロンを開きたい〉
Q: 里親同士が相談しあったり息抜きをする場として、我が家を利用して里親サロンを開きたいと思っています。今年から里親サロンに対して助成があると聞きました。助成を受けるにはどうしたらいいのですか。
A: いろいろな悩みを理解してくれるのは同じ苦労をしてきた里親さんであり、気軽に仲間が集まって話し合える環境があるといいですね。国の今年度の里親支援事業として、新しく里親養育相互援助事業が作られました。ピア・カウンセリング(仲間で相談しあう)とも呼ばれていて、里親が児童相談所などに集まって、児童福祉司OB等の援助のもとで子どもの養育について話し合い、里親自身の養育技術の向上を図ることを目的としています。場所は必ずしも児童相談所でなく里親家庭でも問題はありませんが、やはり認定をするのは地方自治体になります。
 今年度、国の予算はついたのですが、残念ながら地方自治体が里親養育相互援助事業をやらなければ予算を活用することはできません。60都道府県市のうち地方自治体として予算措置をしているとしているのは15程度です。予算措置をしていない地方自治体の場合、里親会などから補正予算でなんとか予算措置をしてほしい、と要望してみてください。活用されなければ、せっかくの国の予算もなくなってしまいます。
 里親養育相互援助事業が自分の住んでいるエリアの地方自治体で取り組まれているか、児童相談所で確認するのが第一です。取り組まれている場合は、この事業の一環として認めてもらえるよう働きかけてみましょう。
 
 
〈主な事業〉
1 里親促進事業(国庫補助事業)
2 里親制度の普及振興事業(日本財団助成事業)
(1)機関紙「里親だより」の刊行事業(68号・69号各4万部作成配布)
(2)地区別里親研修会の開催事業(8地区で開催)
(3)全国里子会活動の支援事業
(1)里子活動支援研修会の開催事業(2地区で開催)
(2)全国集会の開催事業(1回開催)
(3)里子会通信の発行事業(2号・3号各8千部作成配布)
3 新しい里親制度の普及啓発事業(独立行政法人福祉医療機構助成事業:「資料で見る新しい里親制度」1万2千部発行・配布)
4 一般会計事業
(1)第49回全国里親大会の開催(平成15年10月26日(日)於 熊本県立劇場演劇ホール)
(2)「里親・里子」名称の誤用報道などへの申し入れ
(3)各県里親会に対する情報の提供(「お知らせ」で15回)
(4)日本財団へ助成金の申請
(5)理事会・評議員会の開催
(6)関係機関団体との連絡調整
 
 平成15年度においては、「里親・里子」名称の誤用報道に対し、次の申し入れを行いました。
(1)4月23日 東京都豊島区長 高野 之夫氏宛
(2)4月24日 日本たばこ産業株式会社社長 本田 勝彦氏宛
(3)5月21日 東京都荒川区長 藤澤 志光氏宛
(4)7月7日 中日新聞社長 大島 虎夫氏宛
(5)7月7日 日本テレビ放送網株式会社社長 萩原 敏雄氏宛
(6)7月7日 読売新聞東京本社社長 内山 斉氏宛
(7)10月29日 NPO法人日本レスキュー協会理事長 伊藤 裕成氏宛
(8)10月29日 株式会社講談社社長 野間砂和子氏宛
(9)10月30日 東京都八王子市長 黒須 隆一氏宛
(10)10月30日 毎日・朝日・日本経済・産経新聞・各八王子支局長宛
(11)11月12日 和歌山県すさみ町長 桂 功氏宛
(12)11月18日 毎日新聞社社長 斎藤 明氏宛
(13)11月27日 社団法人日本動物福祉協会 宛
(14)11月27日 社団法人日本動物病院福祉協会 宛
(15)11月27日 日本動物病院会 宛
(16)11月27日 産経新聞社社長 清原 武彦氏宛
 
〈機関紙「里親だより」の刊行〉
 日本財団から新たな助成事業である「里親だより」の刊行に際しては、全国の里親及び関係者などに里親に関する情報提供機関紙としてその目的を果たすことを目的として、次のメンバーによる「編集委員会」を設置し、リニューアル創刊号として第68号及び第69号を刊行しました。
 
編集長・若狭佐和子(東京都里親) 編集員・内田 和子(東京都里親)・久保田エミ(東京都里親)
 
 
 新しい里親制度の普及啓発事業として、里親及び里親関係者に解りやすく、正しく理解できるよう、次のメンバーによる「編集委員会」を設置し、「資料でみる新しい里親制度」を作成し配布しました。
委員長・網野 武博(本会理事・上智大学文学部教授)
委 員・大内 善一(福祉新聞社取締役総務部長)
〃 ・高瀬 礼子(東京都養育家庭連絡会々長)
〃 ・山田美和子(CVSアドバイザー・元全国社会福祉協議会部長)
〃 ・若狭佐和子(東京都養育家庭連絡会)
 
☆平成16年春の勲章・褒章において次の里親の方々が受賞されました。
心よりお祝い申し上げます。
旭日双光章 荒堀 喜代蔵様(大阪里親連合会会長)
同   齋藤 達雄様(元神奈川県里親会長)
藍綬褒章 日野 慶次郎様(埼玉県里親会理事長)
 
☆各県里親会事務局の住所が変わりました。
 
熊本県里親協議会
〒866-0884
熊本県八代市松崎町771-5
松田隆幸様方
熊本県里親協議会事務局
TEL 0965-33-4483 FAX 0965-33-4483
秋田県里親連合会
〒010-0922
秋田県秋田市旭北栄町1-5
社会福祉協議会内
秋田県里親連合会事務局
TEL 018-864-2711 FAX 018-824-2701
 
 『鏡の国のアリス』だったかに、いつも駆け足をしていないと現実にとどまれない話がありますが、本当に、さまざまな出来事がビュンビュン遠ざかっていきます。10月の全国里親大会ですらはるか彼方。それにしても、大会などで感じるのは里親の底力。里親制度の変革期にあって、その底力をさらに出し切らねば、という思いです。(木ノ内)
 
 この数ヶ月、記録的な台風や地震と、自然の猛威に驚かされました。しかしそのお陰で、人々のつながり・優しさを再認識することもできました。考えれば、里親と里子もそんな人と人とのつながりで成り立っているのではないかと思います。いろいろな困難に打ち勝っていく人間の力は、やっぱりすごいものなのですね。
 被災他の一日も早い再建をお祈りしています。(宮越)







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