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引用 荒川義子 他
介護保険時代の医療福祉総合ガイドブック第3版
医学書院 2003年
 
A 全国共通の制度
国民健康保険一部負担金減免制度
低所得の人の医療費が無料になる制度
(内容) 医療費の支払いが困難な低所得者は手続きをすれば医療費が無料になります。
(利用できる人)
 国民健康保険に加入している世帯で、収入が生活保護基準の1.3倍以下の場合。
(利用の方法)
 申請書(医師の証明が必要)、申立書、収入を証明できるもの(たとえば通帳のコピーなど)、印鑑を持って市(区)役所または町村役場へ。
(その他) 食事療養費の自己負担額は減免の対象になりません。
(コメント)
 医療費は無料となります。この制度を実施していない市町村もあり、事前に市(区)役所または町村役場へ問い合わせてください。所得によっては一部負担金が生じます。
 
高額療養費 高額に支払った医療費が手続きにより戻ってくる制度
(内容) 医療機関に支払った医療費が、1か月に一定額を越えた場合、越えた額が戻ってきます(表1)
 
表1 高額医療費の負担額
・一般 72,300円+(総医療費−241,000円)×1%
 総医療費が241,000円を超えない場合は、負担額が72,300円となります。
・上位所得者(基礎控除後の総所得金額が等が670万円を超える世帯)
 139,800円+(総医療費−699,000円)×1%
 総医療費が699,000円を超えない場合は、負担額が139,800円となります。
・非課税世帯 35,400円
【例】1か月入院して医療費が100万円(食事負担額は除く)かかり、その3割の30万円支払ったとしますと、保険者から払い戻される額は、次のようになります。
・一般 300,000-{72,300+(1,000,000-241,000)×0.01}=220,110円(自己負担額79,890円)
・上位所得者 300,000-{139,800+(1,000,000-466,000)×0.01}=154,860円(自己負担額145.140円)
・非課税世帯 300,000-35,400=264,600円(白己負担額35,400円)
 
(利用できる人) 表2に示すように、いずれかの医療保険に加入し、自己負担がある人です。
 
表2
 
図1 高額療養費の例(一般の所得区分の場合)
(この後、1年間以上病院にかからなかったときは、自己負担額は72,300円+(総医療費−241,000円)×1%戻ります)。
 
表3 70歳未満の高額療養費算定基準額
*1)基礎控除後の総所得金額などが620万円を超える世帯
 
(その他)
(1)同一世帯(同一加入保険者)のうち、同一月内に2人以上(または入院と外来)がそれぞれ21,000円を超えたとき、それを合わせて高額療養費の計算をします(合算対象)。同一世帯に高齢者受給証を持っている人がいる場合、合わせて高額療養費の計算ができることもあります(表2)。
(2)同一世帯で1年間の高額療養費の支給回数が4回以上になったとき、4回目からは一般所得者40,200円、上位所得者77,700円、非課税世帯は24,600円を超えた額が戻ってきます(多数該当)(図1、表3参照)。
・高額養費の計算方法は、入院・外来別、医療機関別、月別(1日〜末日まで)で計算されます。
・高齢者受給証を持っている人の計算方法は、高額医療費と同じです(147頁参照)。
・保険外の医薬品、差額ベッド料、食事療養費、おむつ代などは高額療養費に含まれません。
・高額療養費が戻るのに通常2か月程度かかります。支払いが困難な場合には、高額療養費分を無利子で貸し付けてくれる「高額療養費貸付制度」があります。
 
老人医療―高額医療費 高齢者の支払った医療費が手続きにより戻ってくる制度
(内容)
 高齢者の医療費が高額になったとき、払い戻しを受ける方法が変わりました。外来と入院でその取扱いが異なります(表1)。
 
表1 高額医療費の取扱い
(医療費が一定額よりも高額になったとき、払い戻しがあります)
項目 外来窓口にて 外来
個人ごとに計算
入院等自己負担限度額(同一世帯で入院と外来が複数あった場合、合算されます) 入院時の給食費1日あたり
一定以上所得者*1) 2割 40,200円 72,300円+(総医療費−361,500)×1% 780円
一般 1割 12,000円 40,200円
市区町村民税非課税世帯の人 II*2)   8,000円 24,600円 650円。90日越えると500円
I*3) 15,000円 300円
[注]  
*1) 一定以上所得者とは各種控除後の課税所得が年額124万円以上で、かつ年収が夫婦2人世帯で637万円以上の人、および同じ世帯の対象者をいいます(対象者1人の場合は年収が450万円以上)。ただし課税所得が年額124万円以上でも、年収が基準額未満の人は、市区町村担当窓口ヘの申請により、1割負担となります。
*2) 低所得IIとは、世帯主および世帯全員が住民税非課税の人をいいます。
*3) 低所得Iとは、世帯主および世帯全員が住民税非課税で、かつ、各種所得等から必要経費・控除(年金の所得は控除額を65万円として計算)を差し引いた所得が0円となる世帯に属する人をいいます。
 
外来の場合:医療機関に支払った医療費が一定額を超えた場合、各保険者に手続きをすると払い戻されます。在宅末期医療総合診療を受けている人は要件を満たせば、自己負担限度額を超えた分については支払いは不要です。
入院等の場合:1か月の自己負担限度額を超えた金額については、それ以上窓口での支払いはありません。
(利用の方法)
 各市(区)町村役場の窓口に、領収書・印鑑・本人の銀行口座・保険証を持参して申請します。
(その他)
 一定以上所得者の人で、年4回以上高額な医療費を支払った場合、4回目以降の自己負担は40,200円となります(多数該当)。
(アテンション)
 70〜74歳の高齢者受給者証を持っている人は同じ条件ですが、「高額療養費」として払い戻し手続きをします(146頁参照)。
(コメント)
 具体的に該当する例として、二つあげてみました。
・同一月内に入院と外来でそれぞれ自己負担を支払った場合、手続きをすれば外来の自己負担分が戻ってくることがあります。
・同一世帯に同じ老人医療を持っている夫婦などで同一月内に共に入院と外来で自己負担を払った場合、手続きすれば自己負担分が一部戻ってくることがあります。
 これらの場合、まず外来について払い戻される額を計算し、次に世帯全体の入院を含めた自己負担の金額合計から払い戻される額を計算します。
 制度を理解して利用するのは困難なので、支払った領収書を手元に置いて市(区)町村役場へ相談してください。







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