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表1 臨死期における患者の変化
週単位 日単位 数日 数時間
腫瘍の進行による症状の増強 痛みをはじめ、症状がさらに増強 悪液質や臓器不全が進行

るい痩が日々進行
全身衰弱
食事摂取量の低下
全身倦怠感を自覚し、訴える
浮腫が出現まはた増強
口腔内乾燥が出現
せん妄が出現
ほとんど水分のみ
倦怠感が増強
浮腫が持続
口腔内乾燥が増強
せん妄が悪化
ごく少量の水分のみ
強い倦怠感が持続
浮腫は軽減するか持続
口腔内乾燥が持続
せん妄が持続
水分摂取も困難

浮腫は消失することがある
呼吸の苦しさを訴えることがある
発熱が認められる
呼吸の苦しさが持続

発熱が持続
喘鳴の出現

発熱があり、解熱しないこともある
努力呼吸、下顎呼吸

高熱が持続することがある
傾眠となる

室内のトイレ歩行が困難になる
声が弱くなる
終日眠っていることが多い
トイレに介助が必要となる
声が出にくくなる
呼名への反応がほとんどない
床上での排泄


声がでないことがある
昏睡

便失禁がみられる
 
表2 臨死期における患者と家族への対応
対応を変更する時期 患者と家族への対応
全身倦怠感に対するコルチコステロイドの効がなくなり、食欲不振、全身倦怠感が強くなったとき ・残された時間が、週単位となってきた可能性を伝える
・これからの過ごし方、症状の変化、入院する時期、在宅でみとるかどうかを検討する
・内服薬の整理(最低限必要なもののみ)をする
・鎮静の可能性があることについて説明する
・水分補給、今後のケアについて説明する
・家族に看取りに対する助言をする
食事摂取が困難となり、傾眠が強くなったとき ・残された時間が、日単位となってきた可能性を伝える
・内服薬を見直し、投与経路の変更を検討する
・看取りのことについて確認する
緩和困難な症状による苦痛が強度となってきたとき ・苦痛緩和のための鎮静を検討する
呼吸状態が悪化し、呼名反応がなくなってきたとき ・残された時間が、時間単位になってきたことを伝える
・家族が心残りのない看取りができるように配慮する
・聴覚は残っていることを説明し、声をかけられるように援助する
臨終時 ・家族を中心に静かに看取れる環境をつくる
・臨終が近づいていることを説明する
 
 
最期の数日・数時間の理解とマネジメント
 
表3 臨死期に見直す必要のある治療・薬剤
見直す治療・薬剤 見直す方法
水分と栄養補給 ・経口摂取が可能な場合:経口摂取ができる量だけとする
・経口摂取が不可能な場合:
輸液、経管栄養については、必要最小限とする。尿量を観察しながら、浮腫、喘鳴、喀痰、腹水が出現または増強しないことを目安とする
・浮腫、喘鳴がある場合:週単位と予測される場合は、輸液、経管栄養は減量する
日単位と予測される場合は中止する
利尿剤 利尿剤を使用するより、輸液、経管栄養を中止する
コルチコステロイド コルチコステロイドによる効果が期待できなくなれば中止する
脳圧亢進症状に対して使用している場合には、意識低下があれば中止する
薬剤の投与経路 確実に内服することが困難になった時点で、経口投与を変更する。必要な鎮痛剤、鎮痛補助薬、制吐剤、鎮静のための薬剤は持続皮下注とする。NSAIDs、睡眠薬は経直腸または経静脈投与とする。
 
がん患者の家族がたどる「心理的変化と援助モデル」
Barbara Giacquinta
がん患者の変化 家族のプロセス 家族の段階 乗り越える障害 看護の目標
がんと診断を受ける

家族とともに自分の役割や義務を遂行しつづける

家族の一員としての機能を、それぞれのやり方で果たす
ステージI
がんとの共存
衝撃 絶望 希望をはぐくむ
家族としての機能の崩壊 孤立 団結力を養う
がんについて知識の収集 弱く傷つきやすい 安心感を育てる
他の人々へ知織の伝達 引きこもる 勇気を養う
情緒的動揺 無力感 問題解決力を高める
患者の日常生活行動の縮小

病院または家庭でケアを受ける
ステージII
生と死の間における再編成
立ち直り 張り合うこと 協力感を育てる
思い出を作る 全人的認識の喪失 Identityを養う
本来の人格の認識
患者の死 ステージIII
死別
分離 自己没頭 親密さを育てる
悲嘆 罪悪感 慰めを与える
ステージIV
再興
社会的つながりの拡大 孤立 親しい人々との関係の回復
 
<悲嘆のプロセス> A. デーケン氏の分類
1. 精神的打撃と麻痺状態 愛する人の死という衝撃によって、一時的に現実感覚が麻痺状態になる。防衛規制の一種
2. 否認 相手の死という事実を否定
3. パニック 身近な死に直面した恐怖による極度のパニック
4. 怒りと不当感 不当な苦しみを負わされたという感情からの強い怒り
5. 敵意とルサンチマン
(恨み)
周囲の人々や個人に対して、敵意という形で、やり場のない感情をぶつける
6. 罪意識 悲嘆の行為を代表する反応で、過去の行いを悔やみ、自分を責める
7. 空想形成 幻想〜空想の中で、故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞う
8. 孤独感と抑うつ 健全な悲嘆のプロセスの一部分。早く乗り越えようとする努力と周囲の援助が重要
9. 精神的混乱とアパシー
(無関心)
日々の生活目標を見失った空虚さから、どうしていいかわからなくなる
10. あきらめ 受容 自分の置かれた状況を「明らか」に見つめ、現実に勇気を持って直面しようとする
11. 新しい希望 ユーモアと笑いの再発見 ユーモアと笑いは、健康的な生活に欠かせない要素で、その復活は、悲嘆プロセスを乗り切りつつあるしるし。
12. 立ち直りの段階
新しいアイデンテイテイの誕生
以前の自分に戻るのではなく、苦悩に満ちた悲嘆のプロセスを経て、より成熟した人格者として生まれ変わる。
 
<在宅ホスピスケアが実践できるようにするための条件>
 
専門性を補完するための連携
 
★「在宅ホスピスケア」であるとする‘質的条件’の規定が何もない。
 
 
緩和ケアは:看護の視点を生かせるケアの領域(生理的生命力↓ 看護の役割↑)
 
緩和ケアでは:看護職の全人格(人間性・人生観・死生観・価値観)を問われる
  (関わる人が成長させてもらえる)
 
 「二人称の死」に直面する人は、死にゆく人に寄り添い、その人の美学を完成するための「よりよい死」を完成するための支援者としての役割を担っているということだ。死にゆく人のケアをするだけでなく、死にゆく人のリビングウイルを生かすように医療者に働きかける役割を果たさなければならない。
(柳田邦男)
 
求められる‘看護の専門性’
1. 生理的生命力の低下に即した「暮らし方をデザイン」できる。
(QOLを高める)
 
2. 心身の安楽保持(Total Pain 緩和)のための対応が適切に行える。
 
3. 圧迫感を与えない‘存在のし方’、自由に感情を表出できる‘コミュニケーション’ができる。
(自分の気持ちと向き合い、自己の変革、人生の完結 について考えられるように)
 
(おわりに)
Extra shoulder としての関わり 存在 ができるように
 
背負いきれない荷物(苦痛)を、力をとりもどすまで ちょっと
一部分背負ってあげる(サポート・見守る)
 
参考文献
 
1. 死の変容(現代日本文化論)、柳田邦男、河合隼男共同編集、岩波書店
2. ホスピスケアのデザイン、季羽倭文子監修、ホスピスケア研究会編、三輪書店
3. 癌の痛みからの解放とパリアテイブ・ケア、世界保健機関編、武田文和訳、金原出版
4. 末期癌患者の診療マニュアル、武田文和訳、医学書院
5. ガン告知以後(岩波新書)、季羽倭文子、岩波書店
6. がん家族はどうしたらよいか、季羽倭文子、池田書店
7. ナースのためのホスピス・緩和ケア入門、ターミナルケア編集委員会、三輪書店
8. 訪問看護のアセスメント(下)―がん・ターミナルケアの基礎知識と訪問看護過程、季羽倭文子監修、中央法規
 
グループディスカッションについて
平成16年7月15日
 
1. ビデオ鑑賞
 
2. グループディスカッション その1
死生観について
 
3. グループディスカッション その2
緩和ケアについて
 
4. 発表とまとめ
 
関連ホームページ:http://www.jvnf.or.jp/







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