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平成16年度 日本財団助成事業
在宅終末期看護セミナー 前期
日時:平成16年7月15日(木)〜17日(土)
会場:東京グランドホテル
 
<研修の目的>
(1)訪問看護ステーションで在宅終末期ケアを実施できる要件と体制を理解することができる。
(2)在宅終末期(緩和ケア)開始のための必要な準備ができる。
(3)痛みや苦痛な症状のアセスメントとその緩和方法を実施できる。
 
日程 研修内容 担当
7月15日・木 9:00〜9:30 受付
●研修オリエンテーション
●日本訪問看護振興財団挨拶
財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●在宅終末期ケアの現状と課題
●療養者へのケアのあり方
・患者の心理プロセス
・臨死期のケア・看取
ホスピスケア研究会
顧問 季羽倭文子
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●死生観と緩和ケアについて(グループディスカッション) ホスピスケア研究会
顧問 季羽倭文子
白十字訪問看護ステーション
所長 秋山正子
16:30〜16:40 休憩
16:40〜17:00 ●演習・自己学習
7月16日・金 9:00〜9:30 受付 財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●在宅終末期ケアに関連する制度・社会資源の活用
・特殊な医療機器のシステム
・保険制度の活用
・法的問題
・死亡確認・死亡診断書・葬儀等
新座病院訪問看護ステーションあおば
室長 中島朋子
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●薬物による疼痛緩和
・疼痛緩和治療法の原則と使用薬剤
・疼痛緩和治療法の実際
・モルヒネ製剤の種類と管理方法
・麻薬についての本人および家族への指導
東京厚生年金病院 緩和ケア病棟
医長 川畑正博
16:30〜16:40 休憩
16:40〜17:30 ●演習(疼痛緩和のための特殊な医療機器)
7月17日・土 9:00〜9:30 受付 財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●症状アセスメント
・苦痛の概念
・身体的痛みの評価と心理・社会的側面
・スピリチュアルペイン
県立広島病院
緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長 阿部まゆみ
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●症状マネジメント 県立広島病院
緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長 阿部まゆみ
16:30〜17:00 ●まとめ(自己学習)
注)プログラムは変更になる場合もございます。予めご了承ください。
 
H16年度 在宅終末期看護セミナー・前期
講師名簿
氏名 所属・役職 〒・住所 電話・FAX番号
秋山正子 白十字訪問看護ステーション
所長
162-0845
東京都新宿区市谷本村町3-19 千代田ビル4F
03-3268-1815
03-3268-1629
阿部まゆみ 県立広島病院緩和ケア支援センター
緩和ケア支援室
室長
734-8530
広島県広島市南区宇品神田1-5-54
082-252-6262
082-252-6261
川畑正博 東京厚生年金病院緩和ケア病棟
医長
162-8543
東京都新宿区津久戸町5番1号
03-3269-8111
03-3260-7840
季羽倭文子 ホスピスケア研究会
顧問
179-0072
豊島区南池袋3-18-34-601
03-3984-3291
03-3984-3292
中島朋子 医療法人社団青葉会 新座病院訪問看護ステーションあおば
室長
352-0033
埼玉県新座市石神1-4-9
048-481-1647
048-479-0572
 
 
 
 
●在宅終末期ケアの現状と課題
●療養者へのケアのあり方
2004年7月15日(木)
ホスピスケア研究会
顧問 季羽倭文子
 
在宅ホスピスケア・がん終末期の看護
 
 
WHOの緩和ケアの定義(「痛みからの解放とパリアテイブケア」世界保健機関編、武田文和訳 金原出版)
(1)生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れることとして、死に行く過程にも敬意を払う
(2)死を早めることにも、死を遅らせることにも、手を貸さない
(3)痛みのコントロールと同時に、痛み以外の苦しい諸症状のコントロールを行う
(4)心理面のケアやスピリチュアルな面のケアも行う
(5)死が訪れるまで患者が積極的に生きていけるよう支援する体制をとる
(6)患者が病気に苦しんでいる間も、患者と死別した後も、家族の苦難への対処を支援する体制をとる
<狭義の緩和ケア>
喪失に直面し、喪失を重ねる状況 におけるケア
死が近いうちに訪れることを前提 にしたケア
 
緩和ケアの目的
1. 十分に生き抜けるように援助する(生活の質 QOLが少しでも高い日々を過ごせるよう)
2. 平安な死(Peaceful death)尊厳を保持した死を迎えられるようにする
 
 がん終末期の状態にある患者が、生活の場のなかで、トータルペイン(特に身体的苦痛)が可能な限り緩和された状態で暮らすことができるように援助することである。また限られた時間を、家族と密接な関係を保持しながら、自分の望む生き方ができるよう、援助することである。さらに死の訪れが近いことを認職し、家族や親しい人々との喪失予期悲嘆を共感しあいながら、人生の締め括りができるように在宅看護を行うことである。
 
 
ホスピス・緩和ケアにおける看護援助の視点
<看護独自の方法による援助の視点>
 
 ホスピス・緩和ケアにおける看護援助の目的は、QOLが少しでも高まるよう目指し、その人らしく日々を過し、人生の締めくくりができるように環境を整えることにある。
 
1. あるがままの患者の状態を基盤にして援助のあり方を考える
 
 本特集で対象とするホスピス・緩和ケアを受ける患者の場合、「問題解決」という視点は適切ではない。終末期の病状であること、また残された時間の余裕がないことを考えると、問題解決を図れないことが多い。(中略)
 
 「できないこと」を問題視するのではなく、その状態のなかで、どうすれば患者の満足感を高められるか、またどのように患者が一日を過したいと思っているかを知り、患者ができることを見つけることで、QOLを高めるようにするという考え方を援助の視点とする。(中略)
 
 患者が保持している能力を最大限に活用することで、「問題を取り除けないが、その中で可能性を見つけ、生活の質を高めるという援助の視点」を基本的な考え方にする。
 
2. 基本的ニードを満たすという点で援助方法を考える
 
 問題解決というアプローチをしないのなら、何を看護援助の視点にすればよいかという疑問が出てくるであろう。本特集の執筆者間で共有した考え方は、「基本的ニードを満たす」という視点である。(ヘンダーソンの「基本的看護の構成要素」)
 
3. 患者が望む過ごし方が実現することを目指して援助する
 
 大半の患者は、今日の一日をどんな日にしたいか、どう過したいか尋ねれば、自分の考えを話す。考えるのも煩わしいという状態になっていなければ、問いかければ気持ちを話すであろう。
 「短期間に実現できる目標を設定し、その目標実現に向けて努力する」ことで、気分転換ができるし、目標を達成できたときには満足感や充実感を持つことができる。そのような一日一日の積み重ねにより、QOLの高い生活を送ることができるのである。
 
「ホスピス・緩和ケア入門―援助の視点と実際 季羽倭文子
ターミナルケアVol.12 Suppl. Oct. 2002 三輪書店)より抜粋」
 
緩和ケアの三原則
1. 適切な症状コントロール
 
2. コミュニケーション(含:告知・インフォームドコンセント・精神的サポート)
 
3. 家族のサポート(含:喪失予期悲嘆、死別後のサポート)
 
<看護婦に求められる‘役割’>
 
1. 限られた時間を「‘こう生きたい’と本人や家族が望む生活」が実現するよう援助する (多様な「人々の考え方・価値観」を受け入れる「柔軟な考え方」ができる)
 
(1)本人・家族のニードを知って、そのニードに添うかかわり
 
★コミュニケーション・スキル
★看護婦の価値観をもとにした決めつけ・押しつけをしない
(バイアスをかけないで、ニードを知るようにする)
 
(2)どんな生き方も許される関わり
 
★死の受容を期待したり、押しつけたりしない
★泣きながら・・・、退行現象も・・・、受け入れられる
 
(3)限られた身体的機能、残された時間、その他の制約のなかで、苦痛が少なく(できるだけ安楽に)、満足度がよりたかい暮らし方ができるように工夫(看護計画)する
 
2. 喪失・死別の時が近づいている状況において
「本人・家族が問題解決能力を高め、成長できる」よう援助

 「ケアすること(Doing)だけでなく」「Beingの意義を認識」しBeingできる
 
(1)「問題解決の当事者は 本人 と その家族 である」
 
★自立・自律を高めるという関わり方(看護婦の考え方)
★Copingに関わる
 
(2)問題解決をしやすくする 環境 を整える
 
★症状コントロールを十分に行う
★Total painを認識して、苦痛の緩和に努める
★ハード面での整備(面会時間、家族付き添い時の配慮 他)
 
3. 「Total Pain」を緩和する

 (「がんの病態」「がんの治療法」「症状コントロール」の知識・技術がある)
 (「コミュニケーション・スキル」を習得している)
 
(1)身体的苦痛の緩和に積極的に取り組む
 
★各種の身体症状の適切なアセスメントができ、薬剤を中心にした苦痛緩和の対応ができる。
また薬剤以外の方法による症状緩和方法も実施できる
 
(2)精神心理的な苦痛の緩和につとめる
 
★生命飢餓感、絶望感、いたたまれない思い等、揺れる気持ちに理解を示したコミュニケーションができる
★精神科的対応を必要とする状態かどうかをアセスメントし、専門的な対応が必要な場合には適切に対処できる
 
(3)社会的な苦痛、家族関係に関する苦痛などに理解を示し、可能な場合には問題の解決にむけて援助する
 
(4)Spiritual Painにたいする正しい認識をもち、その緩和に協力する。
 
★本人が求める授助方法を提供できるよう、チームアプローチを行う
★Spiritual Painによる苦しみにつきあう関わりができる
 
 
在宅ホスピスケアの展開







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