(2)情報(知識・ノウハウ)の共有・発信
(1)STEP1(新団体設立、既存団体による個別活動)
●地域犯罪、危険・危機情報の把握
●地域実態、地域特性の把握
●地域団体等の資源の把握
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
地域における犯罪発生情報および安全対策情報(防犯知識・安全情報)を共有化(基本情報の所在と内容の把握)するため、地域自衛型マップづくりなどの取組を通じて、地域の実態および特性、情報伝達ツールなどの資源を把握したうえで、公共セクターと住民をつなぐ情報連絡網構築を行い、住民防犯意識の向上をはかる。
イ 具体的取組内容(例)
行政、警察公表データを中心とした犯罪発生情報、安全対策の基礎知識、地域における自主防犯活動内容(パトロール実施日の掲載等)について、自治会、PTA等の団体を活用し、広報の回覧を行う。
ウ 行政・警察支援
既存自治会間での連絡網構築にあたっての調整支援(連絡網必要性、方針理解の説明等)を行うほか、情報発信に関する先進事例や活用すべきツールなどの情報提供を行う。また、犯罪情報・安全対策情報の定期的な情報発信を行うとともに、効果的な取組については他の地域に発信し紹介する。
(2)STEP2(地域団体の連携による自主防犯組織設立)
●地域犯罪、危険・危機情報の迅速・定期的な把握、共有
●対外PRの強化
●活動実績の記録(ノウハウの蓄積)
●“住民⇔自主活動団体⇔行政・警察”という情報の双方向発信体制の確立
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
地域犯罪発生情報、安全対策情報について、迅速かつ定期的な把握と共有化が行われるよう、情報発信媒体の工夫、行政・警察との情報連携の強化を行う。
また、行政・警察から犯罪発生情報や安全情報を受けるだけでなく、住民のニーズや地域の犯罪情勢に関する情報について、行政・警察に発信(情報の受け手から情報発信者へ)する体制の確立を目指す。
情報の双方向発信を目指すため、地域内外へのPRによって認知度を高め、情報収集に必要なネットワークを地域に構築することが重要である。
また、プライバシー保護、犯罪被害者に関する情報に対して適切な管理・情報発信を行うことが可能なメディアリテラシーの向上も必要となる。
イ 具体的取組内容(例)
各地域内での防犯広報誌の定期発行を行うことで地域住民全体の防犯の連帯を保つ。また、携帯電話・インターネット等の情報インフラを活用したリアルタイムまたは双方向型の危険・危機情報の伝達機能の構築を目指す。これらの取組については、地域住民の情報ニーズを踏まえた上で安全対策情報の公開を行っていく必要がある。
ウ 行政・警察支援
定期的かつ効果的な地域自衛型の情報共有が行われるためには、地域のニーズに合致した犯罪情報・防犯知識情報が行政・警察から提供されることが必要である。新たな犯罪の出現に対してはいち早く防犯対策も含めて情報が提供されるよう、HP、携帯電話メールでの情報発信などの支援システムを構築する。
地域に対しての情報提供と並行して、個人情報・プライバシーの保護(犯罪被害者に対する配慮)に関する基礎的な知識を学ぶ機会(セミナー、講習会等)を設けること等により、地域において適切な情報管理・運用が行えるよう支援する。
<活動例>希望ヶ丘自警団(甲賀市)
甲賀市の希望ヶ丘地区では住民が空き店舗に詰め所を構え、自家用車によるパトロールや通学児童の見守り活動を行っている。
活動経過は団体内で共有できるように巡回日誌で記録しているほか、活動のノウハウをまとめた「自警団活動のしおり」を警察署の協力によって作成、メンバーの意識啓発を図っている。
住民向けには「自警団ニュース」を回覧して地域の防犯情報を周知しているが、表面と裏面でレイアウトを変えるなど、読み手に伝わりやすい表現の工夫がみられる。
地域におけるネットワークこそが活動の基軸と捉え、日常のコミュニーションを重視して活動を展開している。
(空き店舗を活用した自警団詰め所)
(出典:04/12/15 京都新聞)
(3)STEP3(地域課題を自律的に解決するまちづくりの組織化)
●地域の総合的な情報流通拠点としての機能
●地域防犯とまちづくりに関するノウハウの発信
ア 基本方針・目指すべき姿(達成目標)
地域における情報発信だけでなく、これまで蓄積してきた地域自衛型防犯およびまちづくりに関するノウハウを対外的に(他地域を含めて)発信していく。
さらに、地域の総合的な情報流通拠点として、防災、福祉、環境などさまざまな地域課題に関する情報(ノウハウ・知恵)をあわせて収集し、地域に構築したネットワークを生かし、地域で活動する他の団体や住民、行政に向けて発信していくことが望まれる。
イ 具体的取組内容(例)
自主活動団体で発行する広報誌の情報発信内容を充実させるため、広報委員会や担当者を指定するなどする。また、ホームページの開設による広範囲への情報提供を行うとともに伝言板・フォーラムの開設などで住民ニーズの収集での問題解決型の情報発信システム構築をめざす。取組の地域内外への広がりのため、警察署連絡協議会、PTA等さまざまな会合への定期的参加を通じて、活動の紹介や情報の発信、収集を行う。
ウ 行政・警察支援
犯罪情報・安全対策情報の提供内容の充実のため、携帯電話やインターネットなどのツールを活用したリアルタイムの情報発信を行う。また、地域自衛型防犯への取組を支援するため、自主活動団体の地域エリアごとの犯罪発生情報・統計データが速やかに活用できる地理情報システム(GIS)を構築する。
なお、自主活動団体の成熟度に応じ、防災、福祉分野の活動団体などとの有用な連携が図られるように、情報提供支援を行う。
<活動例>「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり大賞(滋賀県内)
滋賀県では、長年にわたって活動を継続している団体や、ユニークな活動で防犯の実績を上げている個人・団体のうち、とりわけ、活動が際立っている人たちを選考し、「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり実践県民会議において知事による表彰を行っている。
平成16年度は小学校・幼稚園・保育園で手作りの大型絵本を使って誘拐防止教室を開催している“高島おでかけ隊”や、自動販売機への簡易警報装置設置推進によって自販機荒らし対策のモデルケースとなった“坂田郡たばこ小売振興会・税連絡協議会”など、9団体および1名に対して大賞が贈られた。
【選考対象】
(1)地域の防犯パトロールを積極的に続けている個人または団体
(2)学校の登下校時に通学路で児童の安全確保を行っている個人または団体
(3)安全なまちづくりのため、落書き消しや防犯灯の修理などをボランティアで行っている個人または団体
(4)少年の非行防止または非行少年の立ち直り支援に貢献のある個人または団体
(5)防犯機器の開発や発明を通じ犯罪抑止に顕著な業績のある個人または団体
(6)これまでの防犯活動の概念にとらわれないユニークな取り組みで犯罪抑止に貢献のある個人または団体
(7)その他、知事が表彰に値すると認める個人または団体
(出典:「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくりホームページ
<参考>自立的な地域防犯システムを構築するための基盤としての自主活動団体による情報マネジメントの重要性
ワークショップでは、地域防犯活動の取組の前提として、防犯情報も含めた地域情報の把握、発信・伝達のしくみが必要という意見が示された。また、本委員会においても、防犯意識の啓発や、いたずらに不安感を煽るのではなく犯罪抑止や具体的な活動展開につながる、情報提供・共有の重要性についての指摘が多くみられた。そこで、本県における防犯関連情報の流通状況を調査し、その現状と課題を整理しつつ、自主活動団体が地域の課題解決に向けた情報拠点として機能していく中で、求められる役割・機能について検討した。
まず、地域における防犯関連情報の流れは、大別すると県警本部からは各種犯罪発生(交番統計)および防犯関連情報について、県県民生活課からは犯罪発生情報(市町村統計)や防犯啓発、被害対処方法や連絡先など、県教育委員会は不審者出没情報などを、電話、FAX、紙(チラシ、冊子、広報誌など)、ホームページ、ビデオなどのさまざまな媒体を通じて提供している。また地域(各世帯)からの情報は、不審者情報を中心にPTAや自治会、子ども安全リーダーなどを通じて収集、周知を図っている(詳細については図表3-3、簡略化したものについては図表3-4参照)。
現状においては、県警察、県、県教育委員会などがそれぞれ個別に市町や警察署、自治会、小中学校、PTAなどに発信しており、自治会やPTAなどの地域のコミュニティに加入している住民はそれらを通じて断片的な情報を入手することができるが、新興住宅街・マンションで自治会町内会がない地域や、学生や単身赴任者など自治会やPTAに加入していない住民はそれらの情報に接する機会が少ない。防犯関連情報の収集機会は個々の住民に依存しており、地域の犯罪状況や防犯活動などの地域特性に応じた住民間および、住民、各種コミュニティ、行政・警察間の連携・協力による効果的な犯罪抑止への取組が困難な状況にある。
そこで、自主活動団体が既述のような発展段階別に犯罪・防犯・地域情報などをマネジメント(把握、発信・伝達)し、住民と、警察、県、教育委員会などの公共セクターを有機的につなぐ情報拠点(結節点)として機能することが望まれる(図表3-5参照)。情報拠点として自主活動団体が具備すべき機能は、(1)住民と行政から収集した情報を整理し、発信する流通機能、(2)住民が抱える問題を解決するきっかけとしての総合相談窓口機能、(3)地域課題を自立的に発見・解決できる問題解決機能などである。
まず、防犯活動団体設立当初の段階(STEP1)では、基本情報の所在と内容把握と、公共セクターと住民をつなぐ連絡体制の構築、次いで地域団体の連携による自主防犯活動団体が設立された段階(STEP2)では、犯罪予防に関する地域情報の流通、さらに地域課題を自立的に解決するまちづくり組織化へと展開する段階(STEP3)では、防犯分野に限らず防災、福祉、環境などさまざまな地域課題解決に向けての情報(ノウハウ・知恵)を蓄積、発信することが求められる。
図表3-3 地域における防犯関連情報の流れ
(拡大画面:177KB) |
|
図表3-4 防犯関連情報流通モデル(現状と課題)
図表3-5 自主活動団体による防犯関連情報マネジメントモデル
|