日本財団 図書館


ウ 行政の地域防犯取組動向
 現在の行政の地域防犯に関する主な取組の概略は以下のとおりである。
 
≪大津市生活安全条例(平成12年12月20日制定)≫
・すべての市民が安心して生活することができる安全な地域社会を実現することを目的とする。
≪大津市生活安全推進協議会≫
・条例に基づく生活安全推進機関(平成15年2月発足)
・大津市、大津市教育委員会、大津・堅田警察署、自治会連合会、防犯自治会、市社協、市P連、商店街連盟、老人クラブ連合会など、自主的に生活安全活動を行う団体の連携、防犯活動の推進、情報交換等を行う(事務局:自治振興課)。
≪その他主な活動≫
・自主防犯活動団体(小学校区域単位)の育成・支援
・防犯自治会の支援
・広報・ホームページによる情報発信・職員による出前講座の実施
・生活安全庁内連絡会議等の設置 等
 
エ 主な地域防犯団体の活動概要
≪西大津駅周辺防犯推進協議会≫
【防犯活動への取組の背景、経緯】
 平成14年3月にJR西大津駅前に竣工した高層マンション「大津MARY」は、1階部分のエントランス周辺と街区を結ぶスペースがバリアフリー・開放形であったこともあり、マンションサイドの植え込みのアプローチライト等が相次いで割られたり、駅前ロータリーや大規模小売店およびその周辺で深夜徘徊する若者、暴走族の車道・歩道の区別ない暴走行為に悩まされた。マンションの住民の体感治安の不安が高まり、駅から当マンションまでの徒歩1分の距離でも「帰宅が怖い。」という住民が多かった。
 この状況に対して当マンション住民の自治会の有志が集まり自主防犯活動を開始し、地元の大津警察署、大津市役所自治振興課からも立ち上げや活動に関して積極的な支援があった。また、現在の当協議会会長が、周辺の自治会、JR西大津駅、大規模小売店、コンビニエンスストア等も参加した活動に広げるきっかけづくりに奔走し、平成15年10月に協議会が発足した。
 当初段階での活動は、事務局が参加8自治会等に対して「毎月第2、第4土曜日を夜間巡回活動日とし、当日午後9時の時点で雨なら中止。不定期活動については事前に郵送で連絡する。」というルールを決めて発表しておりこのルールは現在も継続している。
 初期段階の活動に要する資金は、当マンションの管理組合が補正予算を組んで確保し、備品は「大津MARY防犯防災委員会」所有のものを借りて確保していた。
 当協議会は、平成16年7月15日にNPO法人の申請をし9月末に認証され、協議会発足当初からの課題であった専用事務所(拠点)も1部屋を賃貸契約で確保した。
 
【主な活動組織の概要、活動内容・成果】
 現在、当協議会の組織は(1)会長、(2)事務局長、(3)会計から構成している。毎月1回、事務局主導で役員会を実施し、事務局からの提案、役員からの要望・意見を集約し、具体的な内容を決定している。
 なお、会長と事務局は、ほぼ毎日、携帯電話、電子メール、FAX等あらゆる手段で協議している。
 年間の活動資金は約100万円。主な財源は県・市の補助金であるが一部分は「大津MARY防犯防災委員会」より補助を受けている。
 主に、ユニフォーム等の購入、防犯(監視カメラ)の購入、啓発品(立て看板)の購入に活用している。
 現在、活動の会議場としては「大津MARY」2階のミーティング室を利用している。また不定期のミーティングには当協議会会長の清水さん宅を利用している。
 現在の主な活動は(1)夜間巡回活動、(2)JR西大津駅構内設置防犯掲示板の更新、(3)護身術教室、(4)行政・警察との連絡・調整である。巡回活動の参加は構成8自治会の裁量によっている。各自治会は毎回最低5名の夜間巡回活動員を参加させる努力をしている。
 活動を開始して以来、深夜徘徊、たむろ、暴走行為、器物損壊や落書きが激減し、犯罪発生件数が減少し、住民の体感治安も向上してきた。
 現在、活動的でパトロール上効果的なデザインのユニフォームを逐次整備中である。このユニフォームはメンバー間の帰属意識向上に効果を発揮している。
 
【今後の活動発展の課題、地域での役割の方向性・展望】
 17年からは専従の事務職員が活動拠点に常駐する。これに伴い、市役所や警察その他間との電子メールや携帯電話で連絡・調整の面で、より綿密な連携がとれるようになる。
 また、NPO法人取得によって、地域の連合自治会の認知度が高まったという成果があった。
 今後は、次頁の点を重点的に推進する意向である。
 
(1)地域の各種事業所や自治会の協力を得てNPO法人の賛助会員になってもらい資金面の基盤を充実させる。
(2)当会のインターネットのホームページを開設し、特に、自治会に加入していない住民層も含めた住民各層にも情報提供し参加しやすいきっかけづくりを整備する。
(3)新聞の折り込み広告を使って、月1回の西大津の治安情報と啓発を図る(要員募集も含め)。
(4)地元の防犯機器メーカーと立命館大学研究室との共同により行っている防犯機器の協同開発を推進する。
(5)防犯はまちづくりにも直結するテーマであり、地域の当会に対する期待も高まってきていることから、「防犯+まちづくり」のバランスを図りながら活動を発展させる。
 防犯については、「防犯は住民ひとりひとりの心がけから」を具現化するため、当会が保安官、自警団的なリーダーシップを一層発揮し、より積極的な治安向上に取組みたい。
 また、「まちづくり」の面からは、商店街に若者のチャレンジショップを導入することを通した地域の犯罪抑止効果の向上等提案していきたい。
(6)他の防犯協会等の活動の研修に積極的に参画し協同連携を推進する。
(7)防犯活動が研修できるような受け入れ体制をつくり、大学の社会学部系の大学生等の研修の機会づくりに協力する。
(8)安全マップを活用し立体的な地区模型を作成してよりわかりやすい安全情報を地区の住民が共有化していく。
(9)今後も継続して当会の活動記録を作成し蓄積保存を図っていく。
 
オ 今後の地域防犯活動の発展・定着に資する地域資源例の概要
≪ジャスコ西大津店≫
【防犯の取組、地域活動団体との連携等の実績】
 西大津駅周辺防犯推進協議会の幹事として参加している。店舗内では防犯カメラを設置しており、今後増設を予定している。
 また、制服の警備員を配置巡回し、犯罪企図者への威圧効果を発揮している(警官も巡回している)。
 協議会との連携は、(1)幹事として参加、(2)月1回の定例会で、店内での犯罪発生状況の情報を提供(犯罪種類、犯罪を起こす子どもの特性)、(3)協議会が店舗来店客にアンケートをする際などの場所の提供、(4)防犯標語を書いた垂れ幕を下げる協力等がある。
 
【今後の連携促進の可能性、障壁】
 地域での催し、イベント活動で場所が必要な際には、1階店舗休憩スペースを貸し出すなどの協力が考えられる。「活動の認知」は同協議会の今後の課題であり、人の集まるスペースを活用することは重要な意味を持つ。当店舗でイベントを開催することによって、認知度向上が期待できる。
 
≪JR西大津駅≫
【防犯の取組、地域活動団体との連携等の実績】
 駅階下に関しては当駅の駅員が若者のたむろに対して注意することもあるが、若者たちが駅員の顔を見慣れているため十分な駅員の抑止効果は発揮されていない。若者たちが駅員の注意を受け入れない場合等に警察に通報するケースが月に2回程度発生している。
 また、駅周辺での変質者出没情報に対応し、日中、駅から少し離れた地域を駅員が巡回するようにしている。
 団体との連携については、西大津駅周辺防犯推進協議会の依頼により、平成15年2月以降、構内の掲示板の一部を同協議会に提供しており、月に1回程度の頻度で提供される防犯関係の原稿を駅で拡大し掲示している。
 駅としても駅階下での若者のたむろに対応した同協議会の駅前パトロールの取組によって、周辺住民の苦情が減少し、同協議会の活動に大変感謝している。なお、防犯カメラについてはJR本社の独自の検討を経た決定により設置している(同時期並行して、同協議会から設置する旨の要請がされている。)。
 同協議会との連携が順調に推移している大きなポイントは、当駅と本社、同協議会間に課題の共有があるという点にある。
 
【今後の連携促進の可能性、障壁】
 掲示板の利用許可や看板設置等は、駅長権限で協力可能とのことである。その他の協力については原則、本社に申請し許可を得るという手順が必要である。
 この手順を踏めば住民による地域防犯活動の活動にかかわるPR活動などのために駅構内のスペース等を不定期に提供することは可能とのことである。ただし、活動団体が駅敷地内で定期的にイベントを開催する等に協力することは、仮に本駅から本社に申請したとしても、「乗降客の通行の妨げになる」との社の判断がされるものと思われるため困難とのことである。
 
(2)住民の、地域の安全性に関する認知状況および防犯活動への参加意向
 今回実施した「不安感マップアンケート」回収結果から、主に以下の点が明らかになった。
 
ア 地域の安全性に対する評価
 安全側の評価が3割強となっており、危険側の評価が2割強となっている。理由としては、「外部から見知らぬ人がやってくるから」「不安に感じる場所が多いから」とする回答が多い。
 
イ 地域連帯感(近所づきあい)に対する評価
 「少数の親しい人はいるが、あくまで個人的な付き合いに過ぎない」とする回答が4割強を占めている。平成14年以降人口が急増し、20代〜40代の比較的若い世代が多いことから地域コミュニティの熟度が低いことがうかがえる。
 
ウ 地域で行われている防犯活動の認知度
 「防犯パトロール」、「夜回り(夜間の防犯活動)」が約7割の人に認知されている。
 
エ 地域で行われている防犯活動への参加経験・不参加理由
 「参加したことがない」人は5割弱となっており、不参加理由としては「参加方法が分からない」「仕事が忙しく参加する時間がない」とする意見が約3割を占めている。防犯活動の情報発信の工夫が必要である。
 
オ 今後の地域防犯活動のあり方について
 「セキュリティシステムの強化」、「警察警備体制の強化」、「防犯情報発信の強化」が上位を占めている。「地域防犯の担い手の発掘・育成」が重要であるとする割合も高く、地域自衛型防犯意識の高まりがうかがえる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION