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3 滋賀県の地域防犯に関する動向のまとめ
(1)滋賀県の犯罪特性概要(滋賀県の犯罪統計分析より)
(1)急増傾向にある刑法犯認知件数。非侵入盗犯の発生割合が高い
 滋賀県の刑法犯認知件数は全国動向と同様に急増傾向にある。人口1万人あたりの犯罪率は、平成14年には全国平均を上回っていたが、平成15年には減少に転じ、全国平均の犯罪率を下回った。ただし、全国都道府県別の犯罪率と比較すると、滋賀県の犯罪率は全国でワースト15位にあり、依然、高い水準にある。
 平成15年に発生した刑法犯認知件数の約8割は窃盗犯であり、約5割が乗物盗等の非侵入盗犯罪である。
(2)他県居住者、来日外国人による犯行の割合が高い
 検挙人員に占める他県居住者の割合は8.7%で、全国平均(7.7%)を1ポイント上回っており、他県居住者の県内犯行が多くなっているが、このことは滋賀県の交通利便性の高さ等が背景にあるものと思われる。
 また、平成15年の来日外国人検挙人員は検挙人員総数の約3.4%を占め、全国平均(約0.7%)を2.7ポイント上回っており、来日外国人による犯行がやや多いといえる。
(3)少年による犯行の割合が高い
 平成11年以降、刑法犯少年(14歳以上20歳未満)検挙人員数は増加傾向にある。刑法犯検挙人員に占める割合は年々減少しているが、平成15年には49%と全国平均(38%)を11ポイント上回っている。特に、発生割合の高い非侵入盗犯(乗物盗等)に占める少年の割合が高くなっている。
 
(1)滋賀県に土地勘のある者の犯行が多い。遊興費欲しさの軽はずみな犯行動機
 土地勘を有していることで滋賀県を犯行地に選定したとする侵入盗犯人が7割を占め、県内居住者は6割弱となっている。また、犯行の動機をみると、生活に困窮しての犯行が半分と遊興費欲しさからの軽はずみな動機による犯行も半分見られる。また、土地勘のある侵入盗犯が多いということは、犯罪者に対して「犯罪を犯しにくい建物(まち)だ」と思わせる日頃からの地域の連携や取組が重要であるといえる。
 また、犯行動機の半分が遊興費欲しさという比較的軽はずみなものであるということは、ふとしたはずみで犯される衝動的な要素が強いという特徴があることから、防犯環境設計(CPTED: 犯罪を犯しにくい環境づくり)による取組が抑止に有効であると考えられる。
(2)監視性が低い地域、防犯性能の低い建物が被害に遭いやすい
 周辺地域の監視性が低い(人通りが少ないなど)」「建物の防犯性能が低い(無施錠、普通ガラス窓など)」といった特性のある地域・建物が被害に遭い易くなっている。
 居住者側の防犯意識の向上、施錠の徹底、各種防犯機器設置等による「被害対象の強化」、声かけ運動や防犯パトロールの実施による「監視性の確保」、落書き消し、環境美化等による「領域性の強化」等の防犯環境設計(CPTED)に基づく取組が重要である。
(3)10分未満の犯行時間。一度犯行を行った地域での連続犯行の傾向
 侵入時間は5分以内、侵入を諦める時間は10分が目安となっている。また、一度犯行を行った地域(ねらいやすい地域)での連続犯行の傾向がある。
 このことから、建物個別の「被害対象の強化」を実施するだけでなく、地域全体での取組として「監視性の確保」、「領域性の強化」を実践することによる、犯罪者に狙われにくい地域づくりが必要であるといえる。
 
(1)犯罪遭遇不安感が高い
 犯罪遭遇への不安は県民の約半数が感じていると回答しており、不安感の高い状態にある。特に、「空き巣・忍込み」に対しての不安が高い。
(2)積極的な防犯対策への取組は低い
 日頃から防犯に気を配っているとの回答が大半であるが、「施錠を確実に行う」といった取組がほとんどであり、「ひったくり防止ネット」、「防犯ブザーの携行」等の積極的な防犯対策への取組は低い。
(3)地域の防犯活動が必要との認識が高い
 地域防犯活動への参加経験者は約3割を占めている。今後望まれる防犯活動としては、「警察パトロールの強化」が最も多く、次いで「外灯・防犯灯の設置」といった行政主導の防犯活動が上位に挙げられているが、「地域防犯活動」、「自主防犯組織の結成」についても必要性認識は高く、治安の悪化に伴い、防犯活動へ参加の必要性が認識されつつある。
 
 滋賀県は、「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり条例の施行に伴い、地域で防犯活動を行う自主活動団体の立ち上げに対する各種支援事業を展開しているが、これにより地域住民の防犯意識の向上や自主防犯活動の活性化が図られるなど、支援事業の有効性が確認される結果となった。これは、自主活動団体への支援事業実施後の刑法犯認知件数の減少という点でも、数字によって具体的な効果をみてとることができる。
 特に注目すべきことは、立ち上げ支援による制服・腕章などの防犯装備の充実によって活動が目に触れるようになり、犯罪者を地域に近づかせない効果が生じた一方で、支援がメンバーの意欲を生み、活動が認知されるに伴って、地域の連携に広がりが生まれていくという好循環を形成した点である。
 なお、地域の団体側では、組織基盤の強化による活動の継続性確保(メンバーの意欲や人材確保、地域連携)が課題となっており、経済的支援に限らず、団体発展段階に応じた支援メニューが必要とされている。
 
 滋賀県の犯罪統計の分析結果から、犯罪発生件数の増加と検挙件数の横ばいの傾向が明らかとなった。このことは、「検挙が最大の防犯」とされてきた警察依存型の防犯体制による犯罪抑止が限界に来ていることを示している。
 県政世論調査結果では「地域による防犯活動の必要性」が県民から指摘されており、今回調査研究で実施した「取調官アンケート調査」の結果からは、「『犯罪者に狙われにくい地域づくり』の必要性」が示唆された。また、自主活動団体への支援事業から、活動地域では防犯活動に好循環が生まれ、刑法犯認知件数が減少し防犯に関しての連携が高まっている。これらの結果から、今後は「犯罪が起きたら警察に対応してもらう」という警察依存型の意識から、「自分の身の回り、周辺地域で犯罪が起こりにくい環境をつくる」といった地域自衛型防犯への意識転換と防犯環境設計の考え方に基づいた取組の展開が求められているといえる。
 その際、単に防犯まちづくりの取組を立ち上げることだけでなく具体的な活動が展開し地域に定着するためには、立ち上げの段階から、住民自ら「防犯対策の検討」(Plan)、「防犯対策の実施」(Do)、「評価」(Check)、さらには「改善」(Action)のPDCAサイクルの視点をもち、参加する住民の意欲や活動成果が持続的に達成できる好循環の活動システムを構築することが重要である。
 また、地域自衛型防犯を推進するためには、住民を中心とする地域関連主体が協働して、(1)取組の方向性、(2)段階的な取組イメージ、(3)行政・警察・関係機関と地域との役割分担・連携、(4)効果的な支援(防犯マニュアルの作成、防犯セミナーの開催、活動に対する補助金等)のあり方などについて検討することが必要である。
 これらのことを勘案し、県内3地域(大津市西大津駅前周辺地区・草津市玉川学区・長浜市長浜駅前および第6連合地区)の地域特性や犯罪傾向の異なる地域を選定し、関係機関、地域住民の協力のもとに防犯まちづくりの課題抽出に向け、地域住民の不安感等をマップ化し、地域防犯に関する議論や参加者の防犯意識を啓発するワークショップを開催することとした。
 
1 モデル地区における検討の基本的考え方
(1)モデル地区の設定の考え方
 本調査研究では、県内市町村の協力を得て、地域特性および犯罪傾向の異なる代表的な3つの地域をモデル地区として設定し、地域住民の参加・協力により防犯まちづくりの課題抽出や取組方策の検討を行った。
 地域特性および犯罪傾向に違いの見られる3市(大津市、草津市、長浜市)内の特定地区に調査対象エリアを絞り、防犯活動ネットワーク形成状況等の実情把握をし、全県への事業展開につなげることを目的とした。
 
市町村名
地区名
地域の特徴等
(地域特性および特徴的な犯罪パターン)
主要な防犯まちづくりの状況等
大津市
西大津駅周辺地区
・駅前高層マンション建設により、新住民(比較的若い世代)の増加
・従来から駅前を中心に少年たむろ等の迷惑行為、車上ねらいなどが頻発
・高層マンション自治会および周辺自治会が連携し、住民主導による積極的な自主防犯活動を実践
草津市
玉川学区
・JR南草津駅の新設、立命館大学立地による大学生数の増加
・自転車泥棒、深夜騒乱など大学生が被害者となり加害者となる犯罪が多発
・平成15年度に地域防犯まちづくりの横断的な連携組織を設立
長浜市
長浜駅前および第6連合地区
・秀吉ゆかりの地として400年の歴史と伝統を持つ、県内湖北地域の観光まちづくりの中心地
・観光地化による商店街の構成員の変化に伴い地域連帯が希薄化
・二次産業の進展による外国人労働者の増加
・防犯自治会により、警察指導のもと、防犯パトロール、広報活動を展開
 
 本調査では、モデル地区周辺住民を対象にした住民懇談会およびワークショップを開催し、「不安感マップ」、「地域防犯対策マップ」の作成を行った。ワークショップでは、マップの作成を通じて、各地区のどのような場所で危険に遭遇しているか(不安を感じているか)の実態把握と、その対策の検討を通じて、地域の防犯まちづくりの現状と課題の抽出とともに、参加者の防犯意識の向上、地域自衛型防犯体制の確立へ向けての当事者意識の醸成を図った。
 
(1)ワークショップ参加団体
 
市町村名
地区名
主な参加団体
大津市
西大津駅周辺地区
西大津駅周辺防犯推進協議会
草津市
玉川学区
玉川学区地域安全連絡協議会
長浜市 長浜駅前および第6連合地区 長浜第6連合自治会
 
(2)各回開催概要
≪「まちの安全を考える」住民懇談会概要≫
○本調査の趣旨説明
○地区の犯罪動向
○地区の防犯活動状況
○フリーディスカッション(参加者住民)
−地区内での不安(場所、内容、時間等)
−不安を解消するための対策 等
※ワークショップ実施の案内
※不安感アンケート実施の案内
 
≪第1回ワークショップ:「不安感マップづくり」≫
○WS主旨説明
○まちの情報提供
 
まちの地理的・空間的な特性/まちの社会的な特性/防犯に関連する行政の取組/まちの防犯活動状況/犯罪の発生状況(統計データ分析、マッピング分析)
 
○本日作業要領の説明
・不安感マップ作成の要領、ワークショップにおけるルール等について説明を行う。
○不安感マップの作成作業
・まちなかの不安感を感じる場所について「ピンク色の付箋」内に、実際に犯罪に遭いそうになった、目撃した場所等について「黄色の付箋」内に、意見を書き込んでもらう。
 
暗くて不安/見通しが悪くて不安/雰囲気が悪くて不安/落書きがある/ごみが散乱している/地域モラルが低下している雰囲気がある/夜中に青少年が溜まっている/事件を目撃した/事件に遭遇した(未遂含む)など
 
≪第2回ワークショップ:「地域防犯対策マップづくり」≫
○WS主旨・前回WS結果の説明
○本日作業要領の説明
・地域防犯対策マップ作成の要領、ワークショップにおけるルール等について
○不安感地点現地調査の結果説明
・不安感マップの結果を元に、事前に「まち歩き」を行った結果(ルート設定、調査にあたっての視点(防犯診断項目の例示等)、各ポイントの検証結果(写真等))の説明
○地域防犯対策マップ作成
・不安感マップの現場検証を踏まえて、地域防犯対策マップ(不安感や課題に対して、どうしたら安全になるか、何が必要か、をプロットしたもの)を作成。
○地域自衛型防犯体制のあり方について検討
・地域防犯対策マップに記載された取組を、地域防犯体制あり方検討のマトリクスに整理
 
 犯罪はその動機、原因、被害、行為の遂行過程、行為の手口等の点において多種多様であり、その発生要因も複雑であることから、全ての犯罪発生を地域防犯システムの構築により予防することは困難である(例えば、横領や詐欺、偽造等はまちの構造や地域社会とは関係性が少ない。)。
 そこで、ワークショップにおける議論においては、「まちの構造やコミュニティと関係があると考えられる犯罪」である『機会犯罪』と呼ばれる犯罪を対象として絞り込むものとする。具体的には侵入盗、乗り物盗、車上ねらい、痴漢、ひったくり、放火等である(これらの犯罪は場合によっては強盗や強姦、殺人等凶悪な犯罪に発展しかねない犯罪でもある)。
 
【機会犯罪とは・・・】
 場の状況に応じて機会があれば遂行される犯罪。機会を捉えて犯行に及ぶことから、被害者(被害物)という対象の存在と、目撃者の有無を含めた「場」の状況が重要な要素となる。
 
(1)不安感マップアンケート調査
(1)調査目的
 ワークショップ参加者だけでなく、地区内のより多くの住民から「地域防犯対策マップ」作成のための情報収集を行うことを目的として実施した。
(2)調査対象
 調査対象としては下表のとおりである。
 
市町村名
地区名
調査対象
大津市
西大津駅周辺地区
皇子が丘1〜3丁目、桜野町1〜2丁目、松山町、山上町
草津市
玉川学区
野路町、野路小林町、桜ヶ丘町、ローレルコート南草津町、立命館大学、玉川小学校
長浜市 長浜駅前および第6連合地区 元浜町、北船町
 
(3)調査方法
 各モデル地区の協力団体代表の方にご協力いただき、地域住民の方々へアンケート調査表を配布、回収した。
(4)調査項目
ア 地域の安全性に対する評価、危険だと感じる理由
イ 地域連帯感(近所づきあい)に対する評価
ウ 地域で行われている防犯活動の認知度、参加経験、不参加理由
エ 今後の地域防犯活動のあり方について
オ 犯罪不安感マップの作成、不安感内容
カ ヒヤリハッとマップの作成、犯罪遭遇内容
(5)実施時期
 平成16年8月下旬〜9月中旬
(6)回収結果
 
市町村名
地区名
配布 回収 回収率
大津市
西大津駅周辺地区
200 132 66%
草津市
玉川学区
300
(+100は大学・小学校配布)
276 92%
長浜市 長浜駅前および第6連合地区 200 116 58%
 
(1)調査目的
 第1回ワークショップ結果および不安感アンケート調査結果より作成された各モデル地区の不安感マップを元に、不安感が高い地点を抽出し、現地調査を行うことにより、不安感を高める環境条件について検証を行い、地域防犯対策マップ作成のための基礎情報を得ることを目的として実施した。
(2)調査対象
 調査対象としては、各モデル地区における不安感件数の高い地点を10箇所程度抽出した。
(3)調査方法
 各不安感地点において、昼(14:00〜17:00)、夜(19:00〜21:00)の現地写真撮影を行い、不安感地点周辺の環境条件について以下調査項目に示すような共通の点検項目を設定し、不安感を高める環境条件の検証を行った。
(4)調査項目
(1)道路
 
交通量・人通り 人通りが少なく、路上からの自然監視が期待できない
高速で走りやすく、犯罪企図者が接近、逃走しやすい
歩車分離がなされていない
地下道、高架周辺道路で、照明が暗く、人通りも少ないため、自然監視が期待できない
沿道の状態 沿道に住宅・店舗等の有人施設がなく、自然監視が期待できない(駐車場等、夜間無人施設、空き地等)
植栽管理が十分でなく、うっそうとして見通しが悪くなっている(街灯の遮断など)
街灯 夜間の照明が十分でなく、見通しが利かない
モラル・マナー 路上駐車・駐輪が多く、管理が行き届いていない印象がある。死角が多い
ゴミが放置されており、管理が行き届いていない印象を与える
落書きがされており、雰囲気が良くない。
 
(2)街並み
 
塀・柵・垣 見通しの利きにくい高い塀・柵・垣、壁が連続しており、沿道建物からの路上への自然監視、路上から建物への自然監視が期待できない。
住宅・居室 住宅街であるが、路上にいても人の気配が感じられず、居住者からの自然監視は期待できない
路上に面して開口部(ドア・窓など)が少なく、自然監視は期待できない
店舗 商店街に活気がなく、道路に面して閉鎖的であり、自然監視は期待できない
空き家 空き家が多く、管理が行き届いていない印象を与える
 
(3)公園・緑道等
 
出入口 出入口への見通しが悪く、自然監視が期待できない(犯意者が接近しやすい)
境界部 見通しの利かない塀や樹木に囲まれており、周囲の建物からの自然監視が期待できない
照明 夜間の照明が十分でなく、見通しが利かない
利用状況 周辺住民の利用が少なく、自然監視が期待できない。
管理状況 樹木が十分に剪定されておらず、見通しが利きにくい。管理が行き届いていない印象を与える
ゴミが放置されており、管理が行き届いていない印象を与える
 
(4)駐車・駐輪場、空き地等
 
出入口 誰でも入ることができ、周辺道路や建物との位置関係から出入口周辺の見通しが悪い
境界部 見通しの利かない塀や樹木に囲まれており、周囲の建物からの自然監視が期待できない
照明 夜間の照明が十分でなく、見通しが利かない
管理状況 植栽の剪定が十分でない、入場管理者の目がないなど、管理が行き届いていない印象がある
 
(5)実施時期
 平成16年10月中旬
 
 ワークショップ参加者への事例紹介で用いるとともに、望ましい地域防犯システムの構築に向けたシーズと示唆を抽出するため、文献調査等により、特に以下の取組分野別に全国各地の先行事例を抽出し整理分析を行った。
 
(1)犯罪予防の取組
(2)犯罪発生時の対応・取組
(3)持続的・継続的な発展のための仕組みづくり







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