4 研究報告書の構成
(1)わが国および滋賀県の地域防犯に関する動向の概括(第1章)
第1章においては、本調査研究の前提として、文献調査、滋賀県の既往調査・現行計画の整理を行い、わが国の地域防犯に関する動向の概括、滋賀県の犯罪特性、滋賀県の地域防犯に関する動向の概括の整理を行った。
滋賀県の犯罪特性の整理では、第37回滋賀県県政世論調査結果から、侵入盗犯に対する県民の不安感が高いことから、滋賀県内15警察署に協力いただき、平成15年1月〜12月の間に滋賀県において検挙された侵入盗犯に関するアンケート調査を実施し、滋賀県における侵入盗犯特性の整理を行った。さらに、滋賀県が平成15年度の自主活動団体支援事業の対象地区の自主活動団体および自治体を対象としてアンケート調査を実施し、事業の成果と今後の課題について整理を行った。また、第37回滋賀県県政世論調査の結果をもとに、滋賀県民の防犯意識特性の整理を行った。
(2)モデル地区における地域防犯システムの検討(第2章)
地域特性および犯罪傾向の異なるモデル地区を設定し、各地区における各種統計データの分析による地域特性および犯罪特性の把握を行った。
また、各地区において警察と消防、児童・高齢者福祉、学校教育・生涯学習など、地域および行政関係機関において、それぞれ機能している組織および活動団体を防犯まちづくりの潜在的な資源として把握し、連携・協力による地域全体の活力向上の可能性を検討するための、各種地域団体へのインタビュー調査を行った。
また、「地域への関心向上」「防犯意識の向上」による地域自衛型防犯体制の確立に向けての当事者意識を醸成するとともに、滋賀県全域での展開を踏まえた課題等の抽出を行うことを目的として、地区住民や各団体の参加・協力を得て、「不安感マップ」(住民が不安に感じる場所を記入)、「ヒヤリハッとマップ」(住民が実際に危険な目に遭遇した、事件を目撃・伝聞した場所を記入)、「地域防犯対策マップ」(不安・危険な現状を住民主体で安全・安心に変えるための方策を検討)の作成(総称し、「地域自衛型マップ(なくそう犯罪マップ)」)を行うワークショップ、不安感アンケート調査、不安感ポイントの現地調査を実施し、さらに国内・国外における先行事例の整理を行い、各地区特性に応じた地域防犯のあり方についての検討を行った。
図表序−4 モデル地区における各種調査スケジュール
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(3)「地域自衛型防犯」(望ましい地域防犯システム)の構築に向けて(第3章)
以上の調査検討成果を踏まえ、地域の防犯上の課題を自らの手で解決する「地域自衛型防犯体制」を確立するために必要な地域防犯システムの構築に向けて、滋賀県の地域特性に応じた今後の地域防犯システムのあり方やその実現に向けた方策を検討し提示した。
今回の研究中、独自に調査を行って得たデータを元に分析整理したものについて、実施概略を整理俯瞰すると以下のとおりである。
調査の種類・名称 |
目的・主旨 |
実施方法 |
回収結果・実施実績等 |
侵入盗犯取調官アンケート |
侵入盗犯の属性、犯罪行動特性、犯罪被害に遭いやすい対象・地域の傾向特性を把握。 |
・調査対象:県内15警察署 ・調査期間:平成16年8月末〜9月末 ・実施方法:対象警察署に協力要請を行い調査票を配布・回収。対象警察署では、平成15年1月〜12月に発生した侵入盗犯罪について、検挙時の取調べ事項に関して調査票に回答。 ・配布・回収数:15警察署の侵入盗犯検挙人員数に対して傾斜配分し、97部を配布。 |
・回収数:86部 |
自主活動団体支援事業調査 |
県が平成15年度に実施した自主の活動団体支援事業が地域防犯活動、地域防犯に与えた効果を把握。 |
・調査対象:平成15年度支援対象地区全21地区自主活動団体および自治体。 ・調査期間:平成16年度8月下旬〜10月下旬 ・実施方法:対象市町村の所管課および自主活動団体に調査票を配布・回収。 |
・自治体向け調査票:配布21、回収20・自主活動団体向け調査票:配布21、回収17 |
住民ワークショップ「まちの安全を考える住民懇談会」の開催 |
各地区ごとに、地域住民の参加・協力により防犯まちづくりの課題抽出や取組方策を検討立案。 開催を通して、各地区住民の当事者意識の醸成をはかると共に、全県での展開を踏まえた課題等を抽出。 |
・参加・協力対象:各地区の地域防犯関連の団体メンバー、その他地区住民 ・設置・開催期間:平成16年7月〜10月 ・実施方法、実施した各種調査 ○「まちの安全を考える」住民懇談会:設置主旨説明、地区の犯罪および防犯活動状況説明 ○第一回ワークショップ:「不安を感じる場所」「犯罪に遭いそうになった場所」情報をマッピングし「不安感マップ」を作成 ○第二回ワークショップ:「不安感マップアンケート」、「不安感地点現地調査」の各結果を元に、参加者が「地域防犯対策マップ」を作成し、防犯体制について検討提案。 |
(1)各地区で住民懇談会を1回、およびワークショップを2回開催。 (2)地区住民対象の「不安感マップアンケート」回収票数:大津市132、草津市276、長浜市116 |
地域防犯組織調査 |
各地区の地域防犯組織の活動および組織概要を把握。 |
・調査対象:各地区の主な地域防犯組織 ・調査期間:平成16年度8月下旬〜12月下旬 ・実施方法:インタビューおよび紙面アンケート |
・実施団体:各地区1団体 |
地域資源発掘調査 |
各地区の今後の地域防犯活動の潜在資源を抽出。 |
・調査対象:各地区の主な地域資源組織、行政 ・調査期間:平成16年度8月下旬〜11月下旬 ・実施方法:インタビューおよび各市経由の紙面アンケート |
各地区とも今後一層の連携発展が期待できる団体を確認。 |
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(1)実施主体
本研究は、滋賀県と、財団法人地方自治研究機構との共同調査研究事業として実施した。
(2)実施体制
本研究を進めるにあたり、専門的、地域的観点から審議するため、有識者等による研究委員会を設置し、審議・検討を行った。
また、委員会のもとに事務局を設け、滋賀県県民文化生活部県民生活課および地方自治研究機構調査研究部が担当し、研究の具体的な推進に必要な事務、調査、調整を行った。
なお、具体的な調査の実施にあたっては、滋賀県県民文化生活部県民生活課職員および地方自治研究機構研究員が行うとともに、調査の一部を基礎調査機関に委託した。
(3)組織構成
委員会および事務局の構成は以下のとおりである。また、本研究委員会の委員名簿等については、巻末に掲載した。
第1章 わが国および滋賀県の地域防犯に関する動向
1 わが国の地域防犯に関する動向の概括
●刑法犯認知件数は昭和48年より増加に転じ、平成15年は昭和48年比2.3倍まで増加。検挙率は平成元年に5割を割り、近年では2割程度と低迷
●警察による取締り強化の限界が指摘されると共に、警察、自治体、住民、NPO等の地域関連主体が連携した地域防犯への取組が各地で展開
図表1-1 全国における刑法犯認知件数(交通関係業務上過失を除く)・
検挙件数・検挙率の推移
2 滋賀県の地域防犯に関する動向の概括
(1)滋賀県の犯罪特性
●平成14年度刑法犯認知件数が過去最悪を記録。平成5〜14年の犯罪増加率は1.78倍(全国平均:1.58倍)
●平成15年4月「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり条例を施行、同年10月基本方針策定。全県的取組開始
図表1-2
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滋賀県における刑法犯認知件致(交通関係業務上過失を除く)・検挙件数・検挙人員の推移
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