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9. 船体保全計画等のケーススタディ
 前章8.に示した船体・機関計画保全検査の方法(案)及び同解説(案)の作成に当たっては、机上の制度設計とならないよう、ケーススタディとして、内航大型旅客フェリーを運航中の旅客船事業者が船体・機関計画保全検査を実施する場合を想定し、同社において現在使用中の各種マニュアルをベースに、船舶安全管理規程、保全計画書、その技術的妥当性を示す資料(衰耗状態予測等)、保守管理記録様式等に関する試案を作成しつつ、検討を行った。
 実例に即して検討を行ったことにより、各種の有益な知見が得られたが、それらは既に前章8.の案に盛り込み済みである。
 検討の過程で作成された船舶安全管理規程、保全計画書等については、企業ノウハウも含まれているため、本報告書への掲載は割愛するが、同社の了解の下、下記の資料を参考資料として添付する。
 
・参考資料9.1: 船体保全計画の技術的妥当性を示す資料(衰耗状態予測等)の一例
・参考資料9.2: 船体保守管理記録様式の一例
参考資料9.3: 機関保守管理記録様式の一例
 
 なお、資料中の数値等を含めこれらはあくまでも一例であり、一般的な規範的意味合いは全くないので、その旨誤解がないよう留意されたい。
 
外板塗装仕様及び塗膜状態記録
 船体塗装の現状は次のとおり良好な状態を維持している。1999年に船体外板(船底部及び船底側外板)にサンドブラスト処理を行い、24カ月塗装仕様に変更したが、腐食等の発生は防止することが出来ている。
 
1. 入出渠記録
  入渠場所 入渠年月 出渠年月 船齢
前回 ○○造船所 2001/○/○ 2001/○/○ ○○年
今回 ○○造船所 2003/○/○ 2003/○/○ ○○年
 
2. 前回入渠時塗装仕様
箇所 下地処理 下塗塗料 膜厚 回数 上塗り塗料 膜厚 回数
船底平坦部
(1,487m2)
W DS SB AO( ) 80 TU(1)
S PB SS QD1号HB 70 TU(3) クォンタム20 65 AO(2)
船底垂直部
(2,288m2)
W DS SB AO( ) 80 TU(1)
S PB SS QD1号HB 70 TU(3) クォンタム20 80 AO(2)
外舷部
(4,820m2)
W DS SB TU( ) シーラバンマリンNO200 TU( )
S PB SS 他社 TU(1) パールホワイト T25-92B 35 AO(1)
上構部
( )
W DS SB TU( ) シーラバンマリンNO200 TU( )
S PB SS 他社 TU(1) パールホワイト T25-92B 35 AO(1)
記号 W: 清水洗い DS: ディスクサンダー SB: サンドブラスト TU: タッチアップ
S: スクレープ PB: ポワーブラシ SS: サンドスイープ AO: オールオーバー
 
3. 今回入渠時の塗膜状態評価
場所 さび ふくれ はがれ 生物(フジツボ等) 生物(アオサ等) 評価基準
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 5: 非常に良い
船底平坦部 4: 良い
船底垂直部 3: 普通
外舷部 2: やや悪い
上構部 1: 悪い
 
(特記事項)
船底平坦部 [防食性] 板木跡以外は良好でした。
[防汚性] 生物の付着もなく良好でした。
船底垂直部 [防食性] アンカーダメージ以外は良好でした。
[防汚性] ごく一部のクォンタム塗膜消耗した箇所にアオノリの付着が見られましたが、その他の生物の付着は認められず、良好でした。
外舷部
上構部
[防食性] フェンダーダメージ以外は良好でした。
 
4. 今回入渠時塗装仕様
箇所 下地処理 下塗塗料 膜厚 回数 上塗り塗料 膜厚 回数
船底平坦部
(1,487m2)
W.DS ニューフォルテ 250 TU(1) クォンタム20 80 TU(1)
QD1号HB 50 TU(1) 65 AO(2)
船底垂直部
(2,288m2)
W.DS.SS ニューフォルテ 250 TU(1) クォンタム20 80 TU(1)
QD1号HB 50 TU(1) 80 AO(2)
外舷部
(4,820m2)
W.DS.SS ニューフォルテ 250 TU(1) シーラバンマリンNO200
パールホワイト T25-92B
TU( )
AO( ) 35 AO(1)
上構部
( )
W.DS.SS ニューフォルテ 250 TU(1) シーラバンマリンNO200
パールホワイト T25-92B
TU( )
AO( ) 35 AO(1)
記号 W: 清水洗い DS: ディスクサンダー SB: サンドブラスト TU: タッチアップ
S: スクレープ PB: パワーブラシ SS: サンドスイープ AO: オールオーバー
 
5. 立ち会い所見
1. 下地処理 高圧清水洗浄後、各部の発錆箇所をディスクサンダー処理、防舷台はサンドブラスト処理が行われた。
2. 塗装条件 全工程中好天であった。
 
プロペラ軸軸受け、プロペラ各部間隙計測記録
 プロペラ軸のスリーブは5〜8年目で許容間隙限度前に交換している。FRP巻き部の海水浸入について軸抜き出し時、早期に発見し亀裂発生を防止している。プロペラ各部間隙は解放時に計測管理している。
 
1. 船尾管軸受け隙間
計測場所 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
左舷軸
1: 船尾シャフトブラケットA 2.8 3.3 3.5 4.2 4.7 5.1 1.5 2 2.4 2.4 2.6 2.9 2.9
2: 船尾シャフトブラケットF 2.4 2.4 3 3.3 3.9 4.3 1.5 1.6 1.8 2.7 2.9 3.6 3.6
3: 船首シャフトブラケットA 2 2.2 2.4 2.6 2.7 3 0.9 0.9 1.4 2.4 2.4 2.9 2.9
4: 船首シャフトブラケットF 2 1.9 2.1 2.4 2.8 3 0.9 0.9 1.2 2.1 2.4 2.8 2.8
5: 船尾管A 2 2.3 2.4 2.6 3.1 3.6 0.9 0.9 1.2 1.8 2 2.4 2.4
6: 許容間隙 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9
右舷軸
1: 船尾シャフトブラケットA 1.5 3 3.6 4.2 4.5 5.1 5.2 6 6.6 2 2 2.6 2.6
2: 船尾シャフトブラケットF 1.5 2.6 2.7 3.5 4 4.2 4.2 4.8 5.6 1.6 1.8 2.2 2.2
3: 船首シャフトブラケットA 3 2.2 2.4 2.6 2.8 3 3 3.4 3.8 1.2 1.2 1.8 1.8
4: 船首シャフトブラケットF 1.8 2.1 2.4 2.6 2.8 3.6 3.6 3.6 4 0.9 1 1.6 1.6
5: 船尾管A 2.1 2.1 2.4 2.7 3 3.6 3.8 3.9 4.2 1.3 1.5 2.2 2.2
6: 許容間隙 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9
 
 
 
2. プロペラ軸新替及びFRP部補修
 左舷軸は1998年にキャビテーションに対し予備厚を増すため、スリーブ径を4mm増加させ、取り替えた。
 右舷軸は2001年にキャビテーションに対し予備厚を増すため、スリーブ径を4mm増加させ、取り替えた。
 
日付 FRP剥離箇所 船名
2002年5月
左舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好 A丸
A 良好
船尾側FRP巻き部 F FRP巻き剥離、補修。
A 良好
右舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好
A 良好
船尾側FRP巻き部 F FRP巻き剥離、補修。
A FRP巻き剥離、補修。
2002年12月
左舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好 B丸
A FRP巻き剥離、補修。
船尾側FRP巻き部 F 良好
A 良好
2003年4月30日
左舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 最大280mmの範囲で海水浸入。FRP巻き直し補修 C丸
A 最大420mmの範囲で海水浸入。FRP巻き直し補修。
船尾側FRP巻き部 F 最大90mmの範囲で海水浸入。FRP巻き直し補修。
A 良好
右舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好
A 良好
船尾側FRP巻き部 F 良好
A 良好
2003年6月
左舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好 D丸
A FRP巻き剥離、補修。
船尾側FRP巻き部 F 最大90mmの範囲で海水浸入。FRP巻き直し補修。
A 良好
右舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好
A FRP巻き剥離、補修。
船尾側FRP巻き部 F 良好
A 良好
2004年12月
左舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好 B丸
A FRP巻き剥離、補修。
船尾側FRP巻き部 F 良好
A 良好
右舷プロペラ軸 船首側FRP巻き部 F 良好
A FRP巻き剥離、補修。
船尾側FRP巻き部 F FRP巻き剥離、補修。
A 良好
 
3. 船尾管軸封装置補修
メイティングリング削正 P 1992 1993 1994 1996 1998        2001        2003 2年ごと
S 1992 1993 1994 1996 1998 2001 2003 2年ごと
シールリング新替 P 1994 1998 2001 2003 2年ごと
S 1996 1998 2001 2003 2年ごと
インフレタブルリング新替 P 1998 2003 5年ごと
S 1996 2001 5年ごと







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